第50話
「あっちゃん早く撮って?」
「うん」
奈々に嬉しそうに携帯を渡される。今日は命日かよおい。若干白目だができるだけ腕を伸ばしてどうにか小さく撮れるようにしよう。私は奈々を抱き寄せてくっつきながら腕を伸ばすも画面に写る私は普通にでかかった。
小さい奈々が嬉しそうにくっついてくれるから余計でかく見えてしまう。これは意図せぬ遠近法?なにこの現実辛い…目を潰したい、と思っても今に始まった事ではないからにっこり笑った。
これは誰に見せる訳でもないからいいのよ。私達の自己満足、以上。
「撮るよ?」
「うん」
そうして何枚か写真を撮ると奈々に携帯を渡す。奈々は喜んでいた。
「ありがとあっちゃん」
「うん。ぶれてない?」
「うん。あっちゃんにも送るね?」
「うん」
よし、これで格差社会の難関を突破した。ちょっとショックだったけど奈々との写真は嬉しいは嬉しい。
私は自分の携帯に送られてきた写真を見ながら言った。
「ねぇ、奈々?私も奈々の写真撮っていい?」
奈々はまた出張がありそうだしあの時の心配を考えると写真はあった方が安心だ。それに奈々の写真を私は持っていない。奈々は困ったように言った。
「え、一人じゃやだ」
「えっ?私の寝てる時の写真撮ってたじゃん」
「でも、やだ」
急に手強い拒否反応を見せてきた奈々。難しい事は言ってないし、欲しかったのになぜだ?私は戸惑いながら奈々の顔を覗き込んでもう一度お願いした。
「なんでよ奈々?いいじゃん」
「やなの」
「んー、はーい、分かりました」
奈々が嫌がる事はできないので私はすぐに引き下がった。仕方ないから私も奈々が寝てる時にこっそり撮ろう。ばれたら怒りそうだからしっかり確認して撮ろう。次の目標ができた私は残念に思いながら奈々から離れようとした奈々からくっつかれた。
「あっちゃん、一緒のじゃダメなの?」
「一緒のでいいよ。寂しくなったらそれ見て紛らわせる」
「寂しいよりも心配するくせに」
「そうだけど見ときたいの。奈々今日どっか行く?」
「行きたくない。朝までしてたんだからゆっくりしよ?」
「そうだね」
身を寄せる奈々は離す気はないようで私も抱き寄せた。
確かに疲れて入るので奈々がそうしたいのならそれでいい。奈々はくっついたまま言った。
「あっちゃん本当に寝かせてくれなかったね?」
「だって最初に言ったじゃん。やる気だったくせに」
「言わなかったらしてくれた?」
「するよ?絶対帰さなかったし朝までする予定でした」
「本当に?」
「本当だよ」
笑いながら話していたら奈々がキスをしてきた。確かに奈々に誘われたけどもう何もしないなんてない。
奈々はにっこり笑っていた。
「じゃあ、信じてあげる」
「はいはい。そうやって軽々しくキスしたらまた襲うからね」
「強引にしないのに?」
「……うるさい。そういう事言ってたらキスするよ?」
「それも優しくするんじゃないの?」
奈々は愉快そうに笑って読んできた。超能力者め…。もう負けている私に奈々はまたキスをして笑った。
「あっちゃんキスしないの?」
「もうしない」
「するって言ったのに。おまけだから?」
「昨日おまけも沢山したからです。もうコイツ!」
「わぁ!あっちゃん」
昨日の二の舞になりそうで私は奈々をぎゅっと抱き締めて押し倒した。奈々は押し倒されてるのに嬉しそうに笑っていて癪だ。私こんなにガキだったっけと思うも奈々相手じゃこうなるだろう。
「襲う気になった?」
「ならないし。奈々ムカつく」
「また怒ってる。もう怒らないでよ?」
「怒ってないし」
「ふふふ。そうだね」
私は奈々を笑わせてばかりで嬉しいけど気に入らなくて奈々から顔を逸らす。だけど奈々は私の頬に手をやって顔をあわせてきた。また笑顔で逃げ道を潰した奈々はいつもと変わらない。
「あっちゃんごめんね?やになった?」
そうしてまたしてもずるい事を言う。
図体はでかいのに私は負けっぱなしだった。
「分かってるでしょ?」
「なにが?」
「……なんでも。もうやになる訳ないじゃん。好きで困ってるよ」
「一緒だね。なんかあっちゃんのそういう顔可愛くて楽しくなっちゃう」
「昨日からずっと楽しんでるもんね」
「バレた?」
「バレバレ」
お互いに笑いながら引き寄せられるようにキスをする。
乗せられてるのに嬉しい自分がいるのに呆れるがこんなに好きじゃどうにもならない。何度かキスを楽しんでいたら奈々はまた私を巧みに操ろうとしてきた。
「ねぇ、どうやって襲うつもりだったの?教えて?」
「……強引に押さえつけて無理やり」
私は悪魔に乗らないために嘘をついたのに奈々はただ笑っていた。
「本当に?嘘つき」
「嘘じゃないし。私もやる時はやるし」
「する時緊張してるじゃん」
「でも、奈々が嫌がってもやめない予定だし」
「嫌な事しないくせに。いつも嘘つかないからバレバレだよ?」
「……もう黙る」
嘘なんか通用する相手ではないので黙秘しようとしたが私はすぐに口を割らされてしまった。
「じゃあ、もう口聞かない。無視する」
「だめ。嘘。ごめんね?」
「ふふふ。いいよ。でも、あっちゃんに嘘つかれてショック受けちゃった。酷い」
「……奈々?」
「私へこんだよ?悲しくて傷ついた」
全くへこんでなんかなさそうな奈々は私に選ばせるつもりなんかないようでキスできる距離まで顔を寄せて囁いた。
「ねぇ、慰めないの?彼女が悲しんでるのに」
笑う奈々はそれはそれは魅力的でやっぱり悪魔だった。
分かっているのに最終的に悪魔に乗ってしまうなんて私は魂を売ってしまっているようだ。
「…強引に慰めるけどいいの?」
それでも素直に乗りたくなくて奈々が動けないように馬乗りになりながらキスをする。もう流されてる時点で負けだけど優しくしたら思うつぼだもん。優しくするけど。
「強引にできるの?できるんだったらしてもいいけど」
「できるよ。もう今日は優しくしないし」
「ふふふ、期待しとく」
表情を崩さない奈々に私にしては強引にキスをしながら気持ち強引に触れた。
あんな強気な発言をしときながら私は強引に優しくしないやり方が分からなくて触れ方に戸惑いながら自分なりに奈々を心配してやった。
それに関しては本当にバカだと思う。心配するならやるなよと思うのに意地になっているのがガキだし、奈々は気付いているのに何も言わなくて本当に彼女によくしてもらっている。
こんな事で意地になるのは奈々を楽しくさせるだけなので今後は気を付けたいがあんな巧みに流されては無理かもしれない。
悪魔は私よりも頭がよくて賢いのに言葉遊びを楽しんで好んでやっている。今後も楽しんで賢くやるだろうに避けれる自信がなかった。だって好きなんだもん。
好きと言う感情はなんて偉大なのだろうと改めて思った。
「なんかさぁ、私バカなんだけど」
そうして言葉に出てしまうくらい自分の幼稚さを自覚する。朝の会社でひいちゃんと朝ご飯を食べながら私はぼやいていた。
「そのバカさが好かれてんじゃん」
「でもやだよ。こんなガキだったと思わなくてさぁ。言いくるめられるの知ってるくせに対抗しようとしてるし。マジでバカとしか思えない…」
「好きだから向きになってんでしょ?まぁ、仲直りできたからいいじゃん。危なかったし」
「うん、まぁね」
奈々との事をざっくり話しているからひいちゃんは真顔だけど正確な発言をする。ひいちゃんはもう間違わないんだろうなと思っていたらひいちゃんは真顔で話し出した。
「それより私を家に泊めてくれない?もうそろそろ辛いわ。私やっぱり同棲無理。もう話そうと思ってる」
「え、全然いいよ。てか、やっぱそうきたかぁ…。まぁ、ひいちゃん頑張ったしいいんじゃないの?悪いとこもいいとこもいっぱい見えたでしょ?」
「うん。やっぱり私は一人の時間ないと無理だし朝海とか友達に比べたら私の事全然分かってないんだよねぇ…違う種族だからかなぁ。分かりあうのはつくづく大変なんだなって感じる。しかも気が利かないし、私はかあちゃんなのかな?ってなる」
「すんごいよく分かる。ひいちゃん次は外人と付き合えば?日本人より気が利くし優しいじゃん。夜は激しいけど」
ひいちゃんは遂に来るとこまで来てしまったようだがよく頑張ったとしか言いようがない。
人と付き合うのは良い事ばかりじゃないのに同棲なんて波乱だろう。
ひいちゃんはサラダを食いながらため息をついた。
「夜とかもう勘弁してほしいわ。疲れるのに必死に頑張ってまた時間無駄にしたんだよ?人生頑張っても上手くいかねぇなぁ…」
「相手によるよそれは。世の中には時間をかける価値のある人と承認欲求お化けしかいないの。お化けが現れたら塩まいて逃げたらいいのよ。それよりいつ来るひいちゃん?オイスターバーは私がおごるぜ景気祝いに」
「…………朝海大好き。すぐ行こう?山ほど食おう?」
「がってん!楽しもうぜ兄貴。これからの面倒ごとに乾杯だ!」
「うん。あんたのバカさに救われるわ」
ひいちゃんは疲れたように笑ってくれてほっとした。
たぶんこれからも大変だと思うからしっかり支えないと。もう頑張るだけ頑張ってたもん。これ以上は見てて不憫で可哀想だよ。
私はそれからひいちゃんと予定を立てて本当に浮かれていた。
オイスターバーも楽しみだしひいちゃんとお泊まりも楽しみだしわくわくが止まらない。
うっきうきの私はひいちゃんと楽しみだねと話していたらひいちゃんはまたしても重要発言をした。
泊まるのを奈々に言っときなよと注意をしたのだ。
浮かれていた私は考えてもなかったそれにはっとした。彼氏がいた時はめんどくさいから友達と予定あるしか言わなかったけどしっかり言わないとなんか誤解を招いちゃうよね?あのナンパの時みたいにキレられたら怖すぎて殴られてないのに頭から原因不明の出血しそうだよ。
私はとりあえず仕事終わりにまた泳ぎに行って考えた。
言うには言うけどなんか怖いから覚悟を決めよう。
許可してくれるだろうけどあのキレ具合を思い出すと心配だ。私はその日帰ってから考えすぎちゃうから早く電話しようとしたら奈々からタイミングよく電話がかかってきた。
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