第47話
何度かキスをすると奈々からもしてくれて嬉しくなった。奈々は元々私に甘いようだが私は誰かと何かあるなんてあり得ないだろう。
「誤魔化してないの分かった?」
「……そんなの接してたら分かるよ」
「誤魔化してるって言ったじゃんさっき。それよりもうちょっとキスしていい?」
「…もうダメ」
「え~?じゃあ、抱き締めちゃう」
「もう……」
膝にいる奈々をぎゅっと痛くないように抱き締める。
奈々は照れている方の困り顔をしているので大丈夫だろう。私は受け入れてくれた奈々に顔を寄せた。
「奈々今みたいに言ってね?私も気使いすぎたりしないし、もっと言い合える関係になろう?まぁ、今回は私の…」
「あっちゃんもう謝ったりするのはなし。もうやめよ?」
奈々はしっかり私の目を見てきた。
「私もあっちゃんもずっと謝り続けちゃうから終わり。もうお互いに遠慮し過ぎないようにすればいいよ。大本私だし……、私ももうやめるから」
「……うん。分かった。じゃあ、奈々なんでも言ってね私に。全部受け止めてあげる」
奈々も私と同じだ。それが分かって一歩進んだ感じに安心する。もうだいぶ本音で話せてる。これならもっと奈々と距離が近づく。本音は言っていかないと関係は長続きしない。
「うん……。私がいろいろ言って嫌になったら言ってね?あっちゃんが嫌だったらやだから」
「えー、やな事あるかなぁ?……私奈々良すぎて不満ないよ今。奈々は自分の悪いとこもちゃんと認めて謝るし、優しいし話し合えるし、自分が可愛いから誰かに求めるだけって感じじゃないから好意がすごく伝わるよ?人として好きでいてくれてるんだなって分かるから私も好きだなって思うし、受け入れたくて理解したくなる」
私は率直に思っている事を伝えた。人と接していくのは普段やっているけど接し続けていくのは難しい事だ。それが恋人なら尚更。
お互いに尊重し合えないとまず無理だし、自分の事もしっかり分かってないとダメ。自分の事が分かってない人はただの痛い人で社会経験とか人間関係を学んでいない人だから寛容性がないし会話がまずできない。
しかも自分を理解して認められないのに他人を理解して認めるなんて不可能だ。だって自分の事が分かってない人が他人の事なんか分かるわけないもの。
そうやって考えると奈々は自然と私の大切なものになってくる。
「……あっちゃん私の事どうしたいの?」
「え?」
気持ちを伝えたのに奈々は予測不能な回答をしてきた。……は?なぁにこれ?試されてるの?どうしたいも何も私を脅かさないでって感じだけど私は困惑しながら答えた。
「えっと、どうするとかはないけど………付き合ってたいよ?できたら長く……」
「…………」
「……え、やだ奈々キモかった?引かせたらごめんね」
黙る奈々に焦りが生まれる。え、もう地雷踏んだ?奈々は困り顔と言うか顔をしかめている感じだけどヤバイのかこの感じ……?!バカだから分からねぇ……!どこを間違ったんだ私!私は笑いながら地雷箇所がどこか考えていたら奈々は首に抱きついてきた。
しかしそれがどういう意味か分からなくて私はパニックになった。
「……奈々?あの…」
「長くってどのくらい?」
「それは、奈々が好きでいてくれるまで……かな?私は一緒にいて楽しいし、いい意味で楽だから奈々とはいい関係でいられてるなって思うから一緒にいたいし…」
「本当?」
「うん。本当だよ?」
「…………」
また黙ってしまった奈々に焦りを煽られる。
え、この感じは信用がないって事………でしょうか?それかもしや呆れさせて疑われているのでは?私非常に遺憾にさせてる?私は内心唸りながらどうすべきか必死に考えていたら奈々はおもむろに私にきつく抱きついてきた。
「初めてそういう事言われた。私あっちゃんいないと死ぬかも」
「え?やだ。やめてよそれ」
「うん。でも、いつも嬉しくしてくれるからあっちゃんいなくなったら毎日泣きそう。あっちゃん私が思ってる以上にいつも気持ちを返してくれるから本当に嬉しい。私もあっちゃんと長く一緒にいたいよ。あっちゃんといるのすごく嬉しいから」
「うん。一緒で良かった。ありがと」
私はお返しとばかりに笑って奈々をきつく抱き締めると奈々も笑ってくれた。
「あっちゃん苦しい」
「だって好きだから抱き締めたいんだもん。ごめんね?」
そうして腕を緩めて顔を見合わせると奈々は嬉しそうにキスをしてくれた。
「ううん。でも、もっとキスしたい」
「んー?そんなにキスしたら嬉しくなって奈々の事襲っちゃうよ私。いいのか子羊?」
嬉しくてちょっとした冗談を挟んだつもりだったのに奈々は笑ってまたキスをすると唇が触れそうな距離で言った。
「そうさせるつもりだったんだけどダメ?その気にさせてきたくせに」
「え……?でも、ここじゃ、あの、声が…」
反論なんかできなくて奈々に積極的にキスをされて私は流されるままだった。奈々がここまで攻めてくるのは初めてで緊張した。こいつぁ子羊の皮を被った狼だぜ……。
「聞こえたらやだ?」
「……そりゃ、やだよ」
「じゃあ、静かにしたらいい?」
「いや、そうじゃなくて…」
「じゃあ、なに?いつも先に言ってやってくれるのに。私がしたかったらしたいんじゃないの?」
奈々はようやくキスをするのをやめて私を見つめた。その目はもうやる気で男なら実にそそられるだろうが私はもうたじたじだった。子羊ってこんな追い詰められた気持ちになるの?妙にドキドキするのは初めてこういう奈々を目の当たりにしたからだろうか。
奈々はいつもの笑顔でまるで私の反応を楽しむように言ってきた。
「ねぇ、あっちゃんどうなの?私に一人でしろってこと?」
「いや、するよ…。奈々がしたいなら私もしたいもん。でも、一旦出よ?出てから…」
「わざわざ出なくても今すればいいじゃん?こういう事に場所なんか関係ないでしょ?早くしてくれないともう口聞かないよ?」
「…うん。分かったよ。じゃあしよ?」
「ふふ。うん、やった」
笑う奈々にまんまとしてやられた私は本当に弱過ぎだと思う。上手な彼女に乗せられて求められるまま全てに応えてしまった私は本当に奈々が好きだと思う。
だって奈々の事になると頭が大暴走暴風雨になるかと思いきや単純色ボケ野郎になって何でも受け入れてしまう。でも、よく考えてみると恋で頭がイカれたって事でもおかしくなくない……?恋辛い……。
するのは相変わらず緊張するし手汗は酷いしまだまだ慣れないけど奈々には敵わない自分がいて昔は絶対流されなかったのに流されちゃうなぁと笑ってしまった。
そうして奈々はこの一件で変わった。
変わったと言うか空気を読んで気を使うのをやめたみたいでよく電話してくるようになって会った時の距離感がかなり近くなった。
それは週末のデートの時に気付いた。まず会った時に抱き付かれて手を引かれてえ、近い…と思った。それからご飯を食べに行って前は横にいて手を握るくらいだったのに今は腕に抱きついたり横から抱きついてきたりとにかく距離がえ、近い…とまた思った。
私はその変化に最初から気づいていたけど何も言わずにいた。ていうか言えなかった。
嬉しいけどもう私に言わせてもらうとポルターガイストみたいで怖い、分からない、どうしようの三拍子。
これは肩を抱き寄せたりするべきなのか、性的な意味じゃないけど体を触ったりするべきなのか……?距離感が変わって改めてどう手を出すべきか。奈々はいつもみたいに笑っていてただ距離が近いだけで普段と変わらない。それにいつもみたいに話せていてますますどうしたらいいのか分からなくてどうしようか悩んだ。もう心不全になりそうだぜ…。奈々といると私は幸せだけど自分が病気か疑うくらい自分がおかしいのはなぜよ?
それから次のダーツに行ったら奈々は距離が近いとかのレベルじゃなくて内心困りに困って冷や汗だった。
「あっちゃん視線が下がった。ちゃんとボード見てないと当たらないよ?」
「え、うん。ごめん。気を付けるよ」
「うん。頑張ってね?」
「うん…………」
私の番になって奈々が軽く教えてくれていざ投げようとしたら奈々は肩に横から凭れるようにくっついてきた。それで腰に腕を回してきてもはや密着していた。え?と思って視線を動かしたらすぐ注意されたしこれが基本でやっていくのだろう。
今日は突然の展開が会ってからありすぎて感想がえ、しか出てこない私はどう反応したらいいのかも分からなくて奈々にまともに一回も触れられていない。というか触れ方が分からなくて戸惑っているだけだった。
なあにこのラブラブみたいな展開は………?こういうの本当に肌に合わなくてはぁ?ってなってたんだけど奈々はいい人なんだよねぇ…。だから普通に嬉しいんだけどこういう時真顔で振り払ったりしてたから分かんねぇ……。とびっきりの笑顔で笑うとかする?でもいきなりキモくない?
「あっちゃん投げないの?」
そうして固まっていたら奈々に不思議がられて私はすぐに返事をして投げた。今はとりあえずダーツだよ!目的を見失うな私!
「え、投げるよ。ちょっと待ってて?よっと……」
「あ、二十のトリプルすごい。あっちゃん前より上手くなった」
「まぐれだよ、まぐれ。私はずっと下手だもん」
「そんな事ないよ?あ、私取ってきてあげるね」
「あ、ありがと……」
奈々はわざわざ私のダーツを回収しに行ってくれてそれにもどうしようと思っていたら帰ってきた奈々は私に手を伸ばしてきた。私はそれが何なのかすぐに察知して条件反射で手を差し出すと奈々は嬉しそうに握って狙いを定めだした。え、…………私はこれからどうしたらいいのかしら?
私はまたしても新たな展開にどよめいていた。
「あっちゃん今日はあっちゃんがまたブルに当てるまでやろうよ?」
「え?じゃあ、店閉まるかもよ?あれ奇跡だったし、私下手だし」
いきなり無理難題を言われた私は驚いた。当てたいけどあれは奇跡で私が唯一いいとこを見せられたやろうとしてもまぐれでしかできない事なんだけど奈々は三本目をブルに当てて笑った。
「大丈夫だよ。私が当たるから当たるよ?当たったらあっちゃんにプレゼントあげるから」
「え………?」
笑顔で言った言葉に困惑した。奈々突然どうした?プレゼントとか嬉しいけど奇跡起こるの神様………?
奈々はダーツを回収してからまた私にくっついてきた。
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