第26話
はぁぁぁぁ…………。
もう一回と言わず二、三回死んだ方がいいんじゃない?死んで落とし前つけるしかなくない?
顔背けるってマジで嫌の合図なんだよ?言わなくてもあれやるってマジで女は嫌なの。なんで早く気付かないの私…………。粉微塵になって消えたい。
もうフラれるかな私…………。あんなやらかしだからフラれても受け入れるけど奈々みたいな子に嫌な思いさせるなんて申し訳無くて情けなくて涙でそう。
後悔と反省は止まらなかった。でも、奈々がいるから起き上がる訳にもいかず私は暗闇の中ただじっとして真顔で考えていた。
これは明日もう一回謝ろう。
ああいう事するならもっと空気読んでやろう。
奈々は私より気使いだし一回と言わず十回くらい確認しよう。しつこいって言われるかもだけど気を使わせて嫌な思いさせるよりまし。
はぁぁぁぁ…………。
私は二度目のため息を心でついた。
なんか男っていいなぁ……。私は漠然とそう思った。
過去にやられて嫌だったから今こんなに反省してるけど男ってこっちの気持ちは無視で強引だったり引くようなかっこつけをしたりある意味素敵な男性多いよね。
悪く言えば自分大好き自己中だけどそんな生き方できねぇよ…。女に慣れてなかったり空気読めてないからできるだけで女慣れしてたり本当にいい人はしてこなかったしなぁ。絶妙に空気読んでくるもん。
たぶん私みたいな失敗して学んだんだろうね。
いい人はいい人なりに気を使うけど今回のクズ案件は酷いよ。やった事がクズ男だよクズ男。相手がひいちゃんだったらぶちギレられて蹴っ飛ばされてヤクザみたいな啖呵きられるよ。
あぁぁぁぁぁ…………。
私は寝るに寝れなかった。
生きていて一番のやらかしかもしれない。
私なんでこんなにクズなんだろう…………。
これひいちゃんに言ったらくさや騒ぎじゃないよね?腐った卵とか投げられるよ。嫌がらずに受け入れるけど超正論言われて再起不能になりそう…………。
私は真顔で泣きそうだった。
嫌な思いさせた張本人だから絶対泣かないけど無音な暗闇でもう無になっていたら奈々が動いてる音が聞こえた。寝返りかなと思いながら無に帰ろうと思ったらベッドから降りてゆっくり歩く音がする。
トイレかな?それともさっきの怒りで蹴り飛ばされるかな?え、超怖い…………。
私は真顔で目を開けていたがすぐに目を閉じた。
トイレならトイレで気を使わせないようにだし蹴り飛ばすなら蹴り飛ばすで気の済むまで受け入れる。
そうしてなるべく静かに呼吸をしながら足音を聞いていたら私の後ろで止まった。
なるほど、これはつまり蹴り飛ばすって事だね?
蹴り飛ばすのはいいけど私なんて謝ろう…………。
私は目をつぶりながら悩んだ。下手に謝っても怒らせるだけだしちゃんと謝らないとだけど何て言おう…………。もう打ちひしがれて何がいいのか分からないよ……誰か……。
思わず助けを求めていた私の後ろで奈々は急に座ったようだった。気配が近くなって私は蹴るんじゃなくて殴るのかと悟って恐怖が増した。
私ぼこぼこに殴られた事ないんだけどどうなっちゃうんだろう………?いや、死なないだけでクズな私にはぼこぼこがお似合いだよ。どうなるかなんて気にしてどうするクズ。私は黙ってその時を待った。
しかし、待っても待っても来なかった。
え、殴らないの?と思って気を集中して待っても来ない。と言うか奈々は動いていない。奈々は座って私を見ているのだろうか……?
なんだろう…………。よく分からないんだけどなんで後ろにいるの?なにされるの私?どうなるの?
目をつぶって待機していると奈々は私の腕に触れてきた。
「…………あっちゃん」
そして名前を呼ばれた。私は返事をしようかどうか悩んだが奈々の事は無視できないので動かずにいつも通りを心掛けて返事をした。
「ん?どうかした?」
「起きてたの?」
「うん。……さっき」
ずっと起きていたなんて言ったら引くだろうから言わない。奈々は私の腕をぎゅっと掴んできた。
「そっか……。起こしてごめんね?」
「ううん。それよりどうしたの?」
もう奈々と話してると心が辛いが私は聞いた。
「…言いたい事、あって………」
「なに?」
言いたい事ってもうフラれるか暴言じゃん…………。冷静に察した私は顔にも態度にも出さずに聞いていた。自分が悪いんだから覚悟はできてるけど辛い……。私は一応上半身を起こして奈々の方を向く。暗いけどずっと起きてたから目が慣れていて顔は少し分かる。奈々はさっきのように気まずそうだった。
「………」
「奈々?」
だが、なにも言わない奈々に戸惑った。
フるの気まずいのかな?それとも暴言言いにくい?
奈々は困ったような顔をしていて私は悩んだ。
ここは私が言いやすいように言ってあげるべきかな?でも、私みたいなクズに言われるとかは?ってなるよね。おめぇに言われたくねぇよクズって火に油じゃない?ぼこぼこじゃ済まないよ………。奈々は困ってるみたいだからなんとかしてあげたいけど解決策が分からない。私はとりあえずもう一度聞こうとした。
「奈々どうした?なんか…」
言いにくい?と言おうとしたその時、事件は起きた。
奈々が急にキスをしてきたのだ。
私は一瞬の出来事に何が起きたか理解できなかった。
「…………」
「…………」
は…?え?なに?今何が…………?いや、今キスされたよね?奈々が近付いてきてキスしてきたよね?でも、私がしようとした時嫌がってたんだけど……。あ、幻覚?私は今苦しすぎて幻覚を見ていた?
私の頭が限界を迎えていたら黙って下を向いていた奈々が恥ずかしそうに言った。
「いきなりごめんね………。やだった?」
奈々に言われて幻覚じゃないのを咄嗟に理解する。さっきのは困ってたんじゃなくてもしかして恥ずかしがってたのか…………?
「あ、……いや、やじゃないけど…」
「よかった……。あっちゃんさっきは本当にごめんね?」
「え……あぁ、…あぁ…うん……」
私はなんだか上手く返事ができなかった。いきなりなに?予想外な事が起きすぎて訳分からない………。何事?放心状態の私に奈々は変わらずに恥ずかしそうだった。
「私、こないだからずっとあっちゃんの事意識し過ぎてて今日も最初からずっとヤバかったんだけどキスが嫌だったんじゃないんだよ?ただあの時近かったし裸だったから私がいっぱいいっぱいで……緊張し過ぎて逃げちゃったの……。あの、さっきちゃんと言えばよかったんだけどちゃんと言えなくて本当にごめんね?勘違いさせてごめん」
「…………あ、そう、そう……だったんだ…。……いいよ全然……うん。大丈夫……」
笑って返事をしながら奈々の言葉を反芻する。
えっと、つまりあれは嫌じゃなかった……でいいのかな?
奈々はあの私のやらかしから意識してくれていて会った時からてんやわんやだったと……。
え…………、意味分かったけど分からない。
私はときめく生き物じゃないよ奈々…?お風呂で見たでしょ?図体がすごいでかかったでしょ?
でも、それを言うのは許されないから言えないでいたら奈々は真面目に謝ってきた。
「でも、私のせいであっちゃんにすごい謝らせちゃって、気も使わせてはっきり言えばよかったんだけど言えなくて………。ごめんね?こんな事もちゃんと言えないとか本当にごめん。あっちゃんに嫌な思いさせたよね」
「私は全然平気だよ。奈々に嫌な思いさせたなって思ってただけだし。許すからもういいよ」
私はそれでなくても空白の一ヶ月、いや、二ヶ月近くを作ってしまったクズなので気にしてなかった。私より奈々が嫌な思いをしてなければそれで良かったのだ。
もうフラれる間近まで来てしまったと思ったのに首の皮一枚繋がったし、少しだけ挽回できたし。
「……よくないよ。私がまた言えなかったせいだし……」
「奈々……?」
目を擦りだした奈々に驚く。
本当に気にしてなかったのに奈々は泣いているようだった。
「いつもごめんねあっちゃん。私、いつもダメだよね。こないだも今日もあっちゃんに気使わせて……。私に呆れたよね?ちゃんと言えばいいだけなのに自分が情けない……」
「そんな事ないよ?私奈々のそんなところも好きだもん!全然気にしてないよ?」
私は下を向いてしまった奈々にはっきり真面目に言った。世の中には言いにくい事が山程あるんだし女の子はデリケートな生き物なんだからいいんだよ。そもそも奈々ははっきり言うタイプじゃないし好きとか大事な事はちゃんと言うし今もこうやって自分の悪いとことか分かって言ってるだけ偉いし素敵じゃん。
これが男だったら常に自分のいいように考えて悪いと思わない、自分の非は認めない直そうとしない気づかないみたいの溢れてるし。
あれマジでは?コイツやばって感じだよ?
まず空気読めないんだよね大体。そんでこっちだけ悪いんだよねぇ。で、あなたはとっても勘違いな素敵な生き物なんだねぇって、疲れていらいらして引くというこちらだけ損する案件プラスかっこはつけるけど好きとかやりたいとかだけははっきり言えない一歩間違えたら犯罪になるよ?みたいなやつ多いし。ああいう人ってなんなの?自分が女の立場でやられたらやじゃないの?いいやつはそれがなかったから尚更悪く感じで情けなくて引くわ。要は自分が恥ずかしい思いしたり傷ついたりしたくないだけだもんね。
それに比べたら奈々は全然いいよね。
この子まず勘違いしないし、自分の事分かって謝るし、私より遥かに空気読んでるよね。きっと奈々はエスパータイプだよ。
それなのにさ、疲れさせていらいらさせてんの私だよね?こんなに空気も顔色も読めなかったのなかったから死ぬ思いしてるけど頑張るから絶対私からは手放したくなかった。ちゃんと言って謝ったりする姿勢は将来性が見えるもん。話あえる人じゃないと一緒に長くなんていれないよ。
「……あっちゃん大好き……。ありがとう……うっう…」
「え、…………奈々?」
しかし奈々はさっきよりも号泣していた。
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