第2話 天災の姫君

 私は才に恵まれた者だった。

 生まれはとある国のとある王城。

 第4代国王の第一姫としてこの世に産み落とされた。



 4歳の時には大人と遜色ない会話が出来ていた。

 5歳になる頃には古代語を読めるようになっていた。

 10歳で剣と魔導を修め、12歳で当時最強と名高い将軍を倒した。



 14歳になる頃には特にやりたいこともなく、日がな部屋で読書をしていた。

 ずるずると伸びた髪はどこまでも真っ直ぐで、肌には傷もシミもなく透き通った白。

 すらっと伸びた背は男性と遜色なく、ただ一点女性らしい丸みを持たなかったのは、その他の才の対価として神様が奪っていったのだろうと噂されていた。



 16歳になっても私は独りだった。

 話の合う者がいるわけではない。

 修練の相手がいるわけでもない。

 何事も一人で学び、一人で成し、誰とも喜びを分かつことなどせずに生きてきたのだ。

 誰かがついてくるわけでもなく、誰かに依存したいという欲求すらなかった。



 人は私を“天才”と呼ぶ。

 それでも私は私を“天災”と思う。



 天が遣わした災厄。

 思いも覚悟も悪意すらなく、人の培ってきた努力とそれに伴う結果を嘲笑う無味乾燥な化物。





 どんなにいろんな経験を為しても、なおも色が変わらず成長していく私の魂は果たして……。





 生物と呼んでいいのだろうか?




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