そらを見上げるもの

綿貫むじな

第1話:とぶもの、みあげるもの

 雲一つない青い空を、優雅に飛ぶ存在があった。

 それは竜と呼ばれるものであり、太古の昔から悠久の時を生きていた。

 竜は背中に人間の子供たちを乗せてゆっくりと羽ばたいている。

 無邪気に大空から大地を望んで喜んでいたり、あるいは高さに怯えて泣いている子もいたりする。

 竜は子供たちの声を背中に聞きながら、目を細めていた。

 

 ああ、こんなにも今日も空は気持ちがいい。


 飛ぶことは自分の生きる意味であり、生き甲斐であり、日常でもある。

 空を飛ぶ事を自然に想い、自然に行い、故に自分には思い至らなかったものがある。

 空に憧れるものたち。

 空を飛ぶ事に憧れるものたち。

 彼らは渇望している。

 自分たちは何故地面を歩き、或いは水の中に生きているのか。

 空を飛ぶものを見てから気づいてしまったのだ。


 もっと自由になりたい。


 空を駆ける竜のように。

 

 そしてまた一つ、空を願う存在があった。

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