第15話  スーパードクターSSK (中編)

 火曜日は熱が出ていて、暑くなったり寒くなったりだった。

 2日間シャワーを浴びていないので、今日はシャワーを予約する。

 日中の担当は初日の看護師だ。15:00からのシャワーを予約できた。

 13:00。薬が切れて痛くなってきたので、痛み止めを要求すると、まだ間隔開けましょうと言われる。

「14:30に持って行きます」

 1時間半苦しめと・・・・・・。まあいい。我慢するさ。

 ただ、15:00からのシャワーがあるので、それまでに薬が効いて、痛くない状態で入りたいので伝えた。

「あ、シャワー・・・・・・15:00。わかりました」

 とのこと。

 何が分かったのか、私は誤解していた。



 14:30になっても薬が来ない。忙しいのかと思っていたが、結局シャワーの時間になり、準備をして、必死に歩いてシャワー室に案内される。ゆっくりしか歩けず、苦痛にしゃがみ込みたくなる。

 そして、シャワー室では、苦痛にあえぎながらシャワーを浴びた。

 とてつもない寒気で、体も青白く、爪は紫、唇は完全に色を失っていた。シャワーを浴び続け、何とか体温を取り戻し、洗って出る。多少生き返った気がした。

 

 そして、部屋に戻って、15:40過ぎになって、ようやく件の看護師が痛み止めを持ってきた。

 恐らくだが、「シャワーを終えてから痛み止めにしたい」と勝手に解釈したのではないかと思う。いや、私どれだけMと思われているのだろうか?




 何も教えて貰えないし、ひたすら我慢するしかない。

 夜になり、多少事情を伝えたら、病院の対応に妻がまたメチャクチャ怒って、ガンガンナースコールして、ちゃんと色々自分で言わなきゃダメだと言われた。

 そして、「明日は午後休み取るから、主治医とのICをセッティングして欲しいってナースに伝えて」と言われた。

 私は何のことか分からなかったが、ICとは、「インフォームドコンセント」。そう言われれば聞いたことがある。納得診療、説明と同意の意味らしく、患者が説明を求める事だそうだ。

 そもそも一切の説明をされていないのだから、納得も何もない訳で、それは当然の権利としか言いようが無い。


 夕方の検温時に、件のナースにそれを伝えたところ、露骨に嫌な顔をされて大きなため息を付かれた。

「ああ~~~~。明日ですかぁ!?え~とですねぇ・・・・・・」

 こちとら腹が減っていて鳴る度に激痛が走るのは痛み止めが効いている時間でも同じ。

「まあ、分かりました。明日はSSKは外来なので難しいと思いますが、一応聞いてみます」

 すごく嫌そうに言われた。


 確認が取れたようで、明日の水曜日に、面会時間中に電話で説明するとのこと。面会時間は14:00から16:00である。

 そして、明日から痛み止めの内服も出すようにするとのこと。

 いや、それもっと早くしてくれるなり、痛み止めの種類や併用が可能なのかなど教えておいてくれ。


 また、看護師からは水分もとって良いと告げられた。

 水とお茶は妻が買って置いてくれたので、渇いたら飲むことにする。



 ここらで、私は看護師に痛み止めを管理させるのではなく、自分で飲む時間を計って、痛くなる前に要求することにした。

 点滴は2時間、座薬は5時間効果がある。紙に書き出して、予定を立てることにする。

 これは成功して、そこから痛いのを我慢しないで済むようになった。


 妻は実家への連絡や保険屋さんと話したり、非常に頼りになった。感謝に堪えない。





 水曜日。

 朝の妻との連絡で、「水分ってどこまで良いのか聞いたか?」と尋ねられる。

 私は常識的に「水」か「お茶」と判断したが、お茶だとカフェインは大丈夫なのかとかあるし、なるほど確かに確認は必要だと思った。

 正直言って、妻に絶食と言われてから、なぜか私は無性にメロンパンとシュークリームが食べたくて仕方が無くなっていたので、甘いのとかも解禁なら、午後ティーとかココアとか飲みたい。



 9:00になり、雑誌を買おうと、エヴァンゲリオンのように点滴コードに連結されたまま、点滴棒をガチャガチャ引きずってエレベータに乗ってコンビニに行った。

 その帰りに、たまたま途中の階でSSKが乗り込んで来た。

「あ、三木さん。今日の昼からまずい流動食です」

 と言って、「はて?」と思っている内に私が降りる階に着いてしまったので、エレベーターから降りる。

 

 前日の夜の時間帯に来た看護師と、「何も聞いてないんですが」などと話をした。この看護師は話を聞いてくれる人だった。

 で、絶食の確認をしてから、「木曜日に血液検査と診察が入ってます」と教えてくれた。

「その後、結果を見てからですかねぇ」

 と言う。

 火曜の夜の話だったので、腹が減っているので、それは結構絶望的な時間に思えたが、「ここまで来たら、まあ待つか」という心境になっていた。

「メチャクチャ腹減ってるんですよねぇ」

「つらいですよねぇ~」

 と看護師と話したことが思い出された。



 患者がIC求めて(プレッシャーを与えて)、空腹を訴えたから食事出るようにしたのではと邪推したくなる。何の根拠があって食事が始められるのかの説明を求めたい。入院以降何の検査もされず、痛み止めで痛みを抑えて寝ていただけである。

 

 妻にLINEで相談してみる。妻も首を傾げる。なので、看護師に聞いてみなければならない。


 今日の担当看護師は、少し幸薄そうだが、態度の良い看護師で話も出来そうだった。なので、昼から流動食が出る事へ、「検査をしていないのにどんな根拠で以て食事が出る判断になったのか知りたいのですが?」と疑問を伝えると、「主治医に確認してみますね」とのこと。


 どうなるかと思っていたが、案の定サイレントスルーで、何の報告もないまま昼食は出なかった。 

 




 妻が仕事を切り上げてこちらに到着したのは15時。


 少し話してから、ナースステーションに妻が話しに行った。 後で聞いた話だが、ここで妻は、「外来と主治医の用事が終わるまで何時間でも待つので、顔を合わせて話をしたい。外来は何時までの予約が入っていて、今何時の人を診察していて、あと何人ですか?」と申し入れていたとのこと。

 

 ナースステーションから戻ってきた妻と、また少しおしゃべりをして過ごす。

 

 しばらくすると消化器内科の外来に呼ばれた。

 妻が私の事もつれていこうとすると、看護師が「何で本人も?」と言ったので、「本人も病状を何も知らされていないからです!!」と冷たく言い放って、私を連れてエレベーターに乗った。

 

 時間は15:50くらいだったかと思う。



 なぜ、妻がこれほど頼りになるかというと、妻は別の病院で看護師をしているからである。そちらも大きな病院だが、消化器内科はなく、消化器外科ならあるとのこと。

 内科があるなら、迷わずそっちに入院したのだが・・・・・・。



 そして、外来診察の受付に移動する。大きい病院なので、歩くのは辛い。

 受付に着くと、SSKの部屋に通された。

 こちらはそれぞれ頭を下げて、「お忙しい中時間を作って下さり、ありがとうございました」と礼を述べてからそれぞれに着席する。

 これでやっと、病気の説明を受けられるのだ。どのような治療過程を辿るのか、見通しは、原因は何が考えられるのかなどなど説明されるわけだ。



 甘い!!

 SSKは只のSSKではないのだ!

 スーパードクターSSKなのだ!

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