第13話 302号室 其の2

 実家に相談しに行く事を決意したのは、決定的な心霊現象にあったからだった。


 端的に言えば、ラップ音によるやり取りで霊と会話をしたのである。

 

 足の痛みや体調不良、それと毎日のように狂ったように鳴り続けるラップ音、度重なる金縛り、周りを誰かが歩き回るベッドの沈み込み。

 何かが天井裏(3階建てなので屋根の上かもとも思った)を何かが走り回る音。ネズミか、カラスか走らないが、昼夜問わず、割と頻繁にカタカタカタと音を立てている。

 出現する目や、耳元で誰かが何かを言っている声。声に関しては、精神的にまいってしまって幻聴でも聞こえだしたのではないかと、半信半疑。(それはそれでヤバいのですが)

 昼間でも開けるのが怖い襖越しの和室の存在。

 

 それで、ある時思い切って訪ねてみた。

「あなたは男ですか、女ですか?男だったら1回、女だったら2回音を鳴らして下さい」

 バカバカしいと思いながら、部屋中をグルグル回るラップ音に向かってしゃべる私。答えなど返って来るはずがないと思っていました。

 案の定20秒くらい待ってもラップ音での返事など来ませんでした。

 それはそうだと思いながら、次の質問をしました。

「あなたは生きていますか、死んでいますか?生きていたら1回、死んでいたら2回音を鳴らして下さい」

 おかしな質問のように思うだろうが、相手がある事なので話せないが、私は度々生き霊に遭遇している。

 しばらく待ったら、ラップ音が二回続けて鳴った。すぐ横の電気スタンドからと、天井の蛍光灯からである。

 これまで連続でラップ音が鳴る事は希だったので驚いた。

 だが、これでも私は半信半疑。偶然だと思った。

 それで、別の質問をしてみた。

「私を恨んでいますか?恨んでいるなら一回、恨んでいないなら二回音を鳴らして下さい」

 今思えば、かなり怖い質問だ。ラップ音が立て続けになる事は希だったのに、「恨んでいない」なら二回とは確率的に分が悪すぎる。


 ほとんど待つ事なくラップ音が二回鳴った。意外なほど大きな音だったので、ビックリして音がどこから鳴ったのかは分からなかった。

 ともかく恨んでいないようなので一安心した。


 分かっていた事を尋ねてみた。

「1人ですか、2人ですか?1人なら一回、2人なら二回音を鳴らして下さい」

 この質問には一分ぐらい待っても返事が来なかった。

「沢山いるようなら一回音を鳴らして下さい」

 そう訪ねると、さほど待たずにテレビから音が鳴った。


 この部屋には沢山の霊がいる。それが分かった。

 それで、いよいよ実家に行って位牌を確認しようと思うに至ったのである。


 この時のやり取りは、全て手近にあった手帳に書き記して、大切にでは無いが、今も密かに保管している。何となく捨てたらヤバそうなのでそうしているだけである。



 ※前回、其の壱を投稿した翌日くらいに、小説と向き合っている時に、書斎のドアをノックされて「ちょっと聞きたいんだけど」と声を掛けられた。

「何?」と言って振り返っても誰もおらず、1階のリビングにいる嫁の所まで聞きに降りていくと、「え?知らないよ?」と言われた。


 

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