第12話 302号室 其の1

 以前にも語りましたが、私はアパートに独り暮らしをしていました。

 もう現在は名前も外観も変わったので行っちゃいますが、緑色の外装のアパートで、駅まで自転車で7分程度。

 3DKで駐車場付き。家賃は他と比べて安かったのでそこにした次第です。


 荷物を運び入れた時に、実家の犬が誰もいない和室に向かってひたすら吠えていたそうで、母親は「気持ち悪い」と感じたそうですが、それを教えてくれたのは、私が怪異に悩んで両親に相談した時でした。(もっと早く教えて欲しかった)


 

 住み始めてしばらくは何も異常は無かったのですが、後になって一番ヤバい感じの303号室の住人は、異常に顔色が悪くて、漫画や映画でお薬大好きな人に見られるような凄まじいクマでした。ちょっと目も怖かったので、あまり関わらないようにしていました。

 隣人は女の人と住んでいたと思いますが(確認出来ていない)夜中になると薄い壁越しにずっとしゃべっている声がして、小さな声ですが若干煩わしかったです。ただ、どういう訳か聞こえてくるのは男の人の声だけ。

 声の質とかでそうなのだろうと思って、あまり気にしていませんでした。



 そんな隣人は、ある日突然いなくなっていました。全く気付かなかったので、「夜逃げかな」とか思いました。

 



 いつの頃から当たり前の様にラップ音はしていました。

 壁が音を発する時もあるのですが、電子器機が「ピシッ!」と結構大きな音を立てるのです。

 時々ビックリするけど、これもプラスチックや何か部品が軋んだり、こすれたりしたのかなと言う程度しか思っていませんでした。


 ただ、和室が気持ち悪いという思いはずっとあって、昼間の用がある時以外は和室に入る事はありませんでした。


 

 その後、この部屋で日常的な心霊体験をすることになりますが、そのきっかけは「置き土産」で記した怪異に出会ってからだったように思います。

 と、言うよりも、それまでは「気のせい」で済ませていたのだと思います。



 「置き土産」後は、いろんな事が起こりました。

 

 夜になるとラップ音が部屋の窓側から始まり、室内をグルリと回って接近してくるのです。

 エアコンが電源も入れていないのに「ピシッ」となると、次はテレビ。オーディオ、パソコン、ベッドサイドのライト。

 これが始まる前に、顔の産毛が逆立つ感じがして、何かが来た事を私に教えます。

 

 姿が見えない何かが、部屋の中をグルグル回っているのを感じます。

 実際に、ベッドに座っていると(これがこの部屋での基本姿勢)、ベッドのどこかが「ムニ」「ムニ」と沈むのを感じます。


 寝ようと目を閉じると、目を閉じているのに沢山の目玉がこっちを見ているのが見えます。

 目を開けても、暗い天井に一杯の目玉が見えます。

 笑っているような口が無数に見える時もありました。

 

 金縛りも良く遭いました。

 金縛りに遭っていると、おじさんの声で囁かれる事も度々ありましたが、覚えていないのと、聞き取れなかったので、その時は恐ろしかったのですが、「気のせいだ」と思っていた部分のあります。(私、そういう所があるのです)



 嫌だったのは、体の中に入り込まれる事です。

 寝ていて金縛りに遭うと、右手から入ってくるのです。

 人肌よりも少し冷たい感じの生ぬるいスライムが、「ヌメッ」と言う表現がしっくりくる感触で体の中に入り込みます。

 寝食部分が徐々に腕を昇って胴体を通り、左手から抜けていくのです。


 何がしたいか分からないのですが、度々経験しました。

 これが始まるのが分かると、「気持ち悪いからやだな~」とがんばって耐えました。

 

 これは寝ぼけていたのかも知れませんが、人影を見た事もあります。

 寝ている私の上を、スーツを着た男の人が、普通に歩いて窓から出て行ったり、凄く綺麗なお姉さんが添い寝していた事もあります。これは普通に嬉しかったです。

 そういった嬉しい体験も霊現象でしましたが、ちょっと18禁なのと、妻にも話していないので、ここでは語らないようにします。


 ともかく、基本的にはこの頃はこうした心霊現象に悩まされていました。

 と、言うのも、現象だけで無く、体に影響がもろに出ていて、日常生活が困難にまでなっていたからです。


 度重なる発熱。頭痛、吐き気、目眩。それと足を痛めて歩行困難になってしまいました。


 それで、困り果てて実家に行って相談し始めたのです。


 私の死んだ妹は、度々私を助けてくれたのですが、その位牌がちゃんとあるか確かめなければと思ったのです。



続く・・・・・かも

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