第11話  丸い影

 先日ですが、仕事帰りに夕食の材料を買うために自転車でスーパーに寄って行こうと道を進んでいました。

 車が二台すれ違えない細い道で、左隣は壁と特別養護老人施設があり、右側は古びた民家が続いています。

 その先はT字路になっていて、そこは車も通っており、街灯もあるので、道側が明るい状態になっています。

 こちらの道からはとても見通しが悪いので、T字路に出るには自転車でも一時停車しないと危ない感じです。


 なので、スピードを落としてT字路に迫っていたところ、道を横切る形で右側から自転車のおじさんが通って左に行こうとしていました。

 そのおじさんの影が、こちらの狭い道に落ちかかって来ているのですが、奇妙なことに、そのおじさんの影、頭だけが異様に大きくてまん丸だったのです。


「なんか変な影だなぁ」

 そう思って見つめていたのですが、おじさんがT字路を横切って老人施設の壁のむこうに姿を消したのに、その丸い影だけが道に残って、しかも壁沿いにこっちに向かって転がってきたのです。


 何せ暗かったので、もしかして、ちょうどおじさんの影の頭の部分と重なって猫でも飛び出してきていたのかと思って、こっちに転がってくる影を見ていたのですが、それは本当にただ真っ黒な影のままで、私の手前3メートル辺りで、壁に吸い込まれるように消えてしまいました。


 ちょっと、ビックリした話しでした。

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