第10話 ○○坂下の電灯

 以前に「○○坂」の下に住んでいる住人が、怪異に出逢っていると話した事を覚えているだろうか?


 実はその住人の1人が私の妻である。

 妻の家は、正に坂下にあった。


 そんな妻と結婚する前の話。

 

 妻の家は、玄関が道から少し入って所にある作りになっている。

 以前からそこが家なのは知っていたが、奥まった玄関に等行く事も、気にする事も一度も無かった。

 

 しかし、付き合い出す前に、後の妻に伴われて、初めて、その玄関のある小道に入った。 

 その瞬間、私は犬に吠えられる気がして、思わず身構えた。

「どうしたんですか?(今でもだが、私によく敬語を使う)」

 私の様子に、彼女が訝しげな表情を浮かべるので、私が答えた。

「犬がここに居て、吠えられるきがしたんだけど・・・・・・」

 

 すると、彼女は驚く。

「ここで昔犬を飼っていました。玄関に家族以外が近づくとよく吠える犬でした」

 そう言うので、「柴犬みたいなかんじで黒っぽい茶色い犬?」と、尋ねると、「そうだ」という。

 今も、家を守っているのかなと思った。



 これは余談で、本題はその後。


 彼女の家の前は公園で、入り口に一本の電灯があった。

 ある夜、「会いたい」と言うので、公園に行く。よく公園で10分程話していた。


 その夜は、彼女が家から出て来て、電灯の前にさしかかると、電灯が突然消えた。

「わ!消えた!?」

 驚く彼女に私は笑った。偶々だろうし、電灯が消えても不思議ではないと思ったからだ。

 電灯はすぐについた。


 ところが、公園で少し話して、彼女が一度家に戻ろうとすると、また電灯が消える。

 彼女は悲鳴を上げる。

 私は、やはり、全く気にしていなかった。だが、彼女は酷く怯えて、公園に戻ってきた。

 すると電灯がつく。

「怖いから一緒に来て!!」


 そう言うので、彼女を伴って玄関に送り届けようと、電灯の前にさしかかる。

 すると、やはり電灯が消えた。

 彼女は悲鳴を上げて家に走る。


 すると電灯がつく。


 私は、何よりも、悲鳴を上げて彼女が逃げたので、近所の人に痴漢と間違えられて通報されないかの方が恐ろしかった。



 最近この話を久しぶりにしたのだが、これまで、そんな事は一度も無かったそうだ。

 

 

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