第8話  〇〇坂

 以前働いていた職場の側に、急な坂があります。

 その坂のすぐ下に、職場が有り、私は、職場まで初バイクのホンダのクラブマンで通っていました。

 


 その坂は短いのですが、自転車だったら、体力のある男子が、何とか自転車を降りずに登り切れる感じの嫌な坂です。

 ちょっと、ここからはざっくりと説明しますが、坂を登り切ると、線路に行き当たり、線路沿いに左折して、狭い道を150メートルほど進んで、名前の付いた、それなりに車通りのある道に、「一時停止」の後に合流する作りになっています。


 線路には、坂の途中で合流するので、坂を登り切ると、線路が下方に見下ろせるので、電車好きな小さい子がのぞき込んだりしています。



 ある日、私はいつも通り、バイクで坂を登って帰路につきました。

 バイクで坂を登り切ったのですが、どうも坂を登る途中で後ろに引っ張られる感覚があった。


 自転車はもちろんですが、車でも、人が多く乗ったり、荷物が重かったりすると、アクセルを踏んでも、速度の上がりが遅くなったりしますよね。バイクも同じで、2人乗りになると、グンと遅くなります。

 特に私のクラブマンは初期型で、当時でも古いバイクだったので、2人乗りだと、重くなります。


 正にその感覚でした。

 坂でバテたのかとも思いましたが、坂を登り切って平坦な線路沿いの道に出ても、全く速度が上がりません。


 

 おかしいなと思い、アクセルを回し込みますが、エンジンはがんばっているのですが、遅い。

「あれ?」

 と、思っている間に、一時停止が迫ってきたので、速度を落とそうとした、次の瞬間。

 後ろの重しが急に無くなった感覚と共に、バイクが通常の加速をしたので、思いっきり街道に飛び出しそうになりました。

 クラブマンにして、後輪が持ち上がるほどの急制動で、何とか止まることが出来ましたが、ちょうど目の前を数台のトラックが通り過ぎたので、かなり危なかったです。



 そんな事があった後に、その坂にまつわる様々な曰くについて沢山の人から話を聞きました。


〇その坂の下に防空壕があり、かつて空襲があったときに、その防空壕に爆弾が直撃して、沢山の避難した人たちが亡くなったと言う事。

 よく見れば、坂の下に慰霊碑があります。


〇坂の途中で線路と合流する所。

 線路を隔てた先に、実は坂の続きが有り、かつてはフェンスが無く、踏切も無い坂道を、線路をまたいで向こう側に行き来出来たとのこと。ただ、坂の途中の線路なので、簡単に想像が付く通り、勢い余って線路に突進しての事故が多発したとのこと。


〇関係ないとは思いますが、線路向こうの坂を登り切った先は墓になっていて、近所では有名な寺があります。


〇坂の下に住む人たちの家には、かなりの頻度で心霊現象が起こってます。兵隊さんが歩いていたり、武者の生首が飛んでいるのは当たり前らしいです。

まあ、私も不思議な体験をしましたが。


〇その坂途中から、線路まで、何故かラブホテル的なモーテル的な建物が6棟建っていましたが、線路沿いの6棟目には、出るらしいとの事。・・・・・・と言うか、利用した先輩が体験したのを聞きました。その人の体験した話しでは、勝手にシャワーが出て、「愛人」びっくり・・・・・・あ。これはオフレコでした。

 ちなみに、そのラブホテル的施設は今はなく、民家が建っているので、地元の人たちは、かなり心配しているそうです。



 他にも色々あるそうですが、私が体験したことではないので、省きます。



 で、オチです。


 私が、見えない何かを、バイクの後ろに乗せた一週間か、その辺りで、出勤中に、坂に差し掛かったところで、突然停止、しかもバックしてきた大型の引っ越しトラックに、私の愛車が完全に潰されてしまいました。

 私は足に打撲程度でしたが、目の前でバイクが踏みつぶされて行くのを止めることが出来ませんでした。

 バイクと地面に足が挟まっていたら、バイク同様に私も潰されていたでしょう。

 ってか、2人も乗員いるんだから気付けよ!!


 しかも、それでパニクったのか、警察と現場検証中に、そのトラック、今度は何故か、突然前進して、目の前で交通整理の為に止まっていたタクシーに突っ込んで、これもほぼ全損に追い込んでいました。

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