第3話 玉木の悲劇
天下泰平、江戸の町は活気に満ちていました。
マサ、徳、玉はあちこちの屋台や店をまわっていました。
徳ちゃん(公方様)が屋台の駄菓子のアメをみて
「あれ、あれ」
というものの、マサ(八図藩の殿)は徳ちゃんを無理やり引っ張っていきました。
徳ちゃんが、ゴリゴリ棒の当り棒を手に
「玉、交換してよ」
というと、玉(玉木)は
「しゃーねなー」
と、いいながら交換しました。
三人はゴリゴリ棒を食べながら歩いていました。
徳が次の駄菓子屋で
「あれあれ、くじ引きたい」
と、駄々をこねると
玉とマサ、徳ちゃんを引っ張り
「おめーはガキか、いい加減にしろ」
と、だめだめしていました。
徳ちゃんが、浮世絵のいやらしい絵が飾っている、店の前でよだれをたらして見ていると
「そこだけは、ガキじゃないな」
と、玉がいい、マサと一緒に絵の前でたたずんでいました。
絵は「みゆこ太夫」という美人の絵でした。三人ともニンマリしていました。
そのとき、店の中から、浮世絵に書かれていた美人のみゆこ太夫と、絵氏の音麻呂が出てきました。
「それじゃ」
と、みゆこ太夫がいうと
「また、いつでも書いてあげるよ」
と、音麻呂は笑いながらいいました。
「あれま!」
と、みゆこ太夫は三人に気づきました。
「あーら、いい男たちだね。私の絵、気に入った? あとで、遊びにいらっしゃい」
そして、おもむろに割引券を渡しました。
割引券にはこう書かれてありました。
すぐ楽しい、すごく楽しい 夜七時より
男の夢とロマン 吉原三‐五 みゆこ太夫
なんと、この券をみせると半額だよ!
玉、徳ちゃん、マサともに、叫びました。
「男の夢とロマンだ!」
徳ちゃんが券を手に震えていました。
でも、まだ時間が早いな。三人は、あちこち見て回りました。
うどん屋でうどんを食べ、歌舞伎を見て、いろいろとしているうちに日も暮れました。
「日も暮れた、いざ吉原へいくぞー」
同じ頃、欄たちも吉原へきていました。
与一は桜子の護衛で女装してついてきていました。
「姫様、この格好、ひどい」
と、与一は桜子にいいました。
桜子は与一をみていいました。
「切一に女装を頼んだけど、なかなかの出来ばえじゃない?」
「……」
蘭は不気味な与一の姿をみて、返す言葉がありませんでした。
三人は「吉原夜の楽園」の門の前に立っていました。左「女専用」右「男専用」二つの門がありました。門とその先の通りは、沢山のピカピカのいろいろなネオンが光っていました。
三人は当然、「女専用」の門をくぐりました。
その通りでは、イケメンがパレードしていました。桜子と蘭は目がハートになって見入っていました。
蘭と桜子はパレードを見た後は、入る店を物色していました。
「いろいろな楽しそうな店があって迷うな――」
と、蘭はいいました。それもその筈、この界隈だけで、お姫様スイーツ、美男エステ、イケメンサロン、野獣女とイケメン、美男とパフェ、おそろしや屋敷、幽霊喫茶、野獣と美女、……、……、数限りない店がありました。
桜子は、どれにしようか悩んでいると、ひときわ目立つの看板が目に入りました。
「桜子、あれいこうよ」
と、蘭が看板を指さしていいました。
それは「さどや 今宵はあんたが女王」の看板でした。横には仮面をした女がムチをもって、男を椅子にして座っている絵が掲げてありました。
桜子も看板を見て気に入ったらしく
「なにかわからないけど、楽しそう、いこう、いこう」
と、いいました。
与一は怪訝そうなな顔をしていました。
「そんなんでいいのか?」
三人が中に入ると、店員ができて、内容と料金を説明しました。
「いらっしゃいませ。当店では、日頃、嫌な思いをさせられている男をムチたたいて、スカッとするアトラクションです。また、当店は前金となっており、三人で一両となっております」
「与一払っておいで」
と、桜子ははいいました。与一はそそくさと料金をはらいました。
「ここ、何するところ?」
と、桜子は蘭にききました。
「わからないわ、でも女王になれるところよ」
というと、店員がやってきて、仮面とムチを人数分持ってきました。
「オーダーはこちらから選んでください」
バカ殿、長屋の主人、キザ男、ハゲオヤジ、家老、上司、彼氏、彼女、いじわる爺、イケメン。
「うーん、キザ男」
と、蘭はいいました。
「バカ殿」
と、桜子は叫びました。
「……」
与一は選ぶことができませんでした。
「お客様、二つほど注意事項があります。ひとつは、必ず仮面をする事。もう一つは、相手が気を失ったらムチをやめる事。あとは、気かすむまでムチってもかまいません。さあ、ムチで思い切り叩いて女王気分になってください」
と、店員がいうと、すでに蘭と桜子は、仮面をかぶってムチの感触をたしかめていました。
「なんか、わくわくするわ。こちらが誰かがわからないのがそそるわ」
桜子が、ムチで床を叩きながらいいました。
「いけね、よだれが出てきた――」
といって、袖でよだれを拭って、蘭も戦闘態勢に入りました。
蘭はなんか夢で見たような光景だと思っていましたが、しょせんは夢、これは現実と気にしていませんでした。(詳しくは、たまらん外伝をご覧ください)
「……」
(こいつら、変だ。やばすぎる)
と、与一は考えていました。
「じゃ、オーダー入ります。バカ殿、キザ男」
と、店員が叫びました。
一方、玉木の方はというと、同じように、「吉原夜の楽園」の門の前でたたずんでから、「男専用」の門をくぐりました。
こちらの通りでは、かわいこちゃんがパレードをしていました。
「おー、なんと――」
三人とも目が釘付けになり、口がポカーンとあいてよだれを垂らしていました。
「こんな、世界が城の外にあったなんて、もったいなさすぎる」
と、徳ちゃんは叫びました。
こちらも、パレードが過ぎ去ったあとは、入る店の物色をはじめました。
かわいこちゃん城、スナック美女、ぴんくの館、キャバレードンドン、竜宮屋敷、お岩の幽霊喫茶、美女と野郎、……、……。
でも、三人とも昼にあった、みゆこ太夫のお店が気になっていました。
しばらく店を物色していると、玉がみゆこ太夫の店の看板を見つけました。
「おお、ここだ!」
と、「まぞや 男の夢とロマン」の看板を指さしていいました。横には、下着の美女に囲まれて男が気持ち良さそうにしている絵が掲げてありました。
「おお、ここだ、ここだ。入るぞ」
と、徳ちゃんは弾んだ声でいいました。
三人が店に入ると、すぐに、昼にあった、ママのみゆこ太夫がでてきました。
「いらっしゃい。あら、誰かと思ったら、昼にお会いした、いい男だね」
他に、数名のかわいこちゃんもでて、いいよってきました。
「たくさん遊んで」「たっぷりサービスするわよ」「朝までいいことしよう」
玉は、これは仕事なんだと思い、ママに半額券を渡して料金を聞きました。
「三名だと半額で八両が最高のおもてなしです」
かわいこちゃんたちが、愛くるしくいらっしゃいボーズをしていました。
「いくぞー、玉、あとはたのんだ」
玉の持ち金は、昼に散財したせいで、五両に減っていました。ママに金額の交渉をしたのですが、その金額だと二名までとの事でした。
そして、そんな事、お構いなしに、徳ちゃんとマサは、かわいこちゃんとともに奥へいってしまいました。
それをみたママは叫びました。
「プレミアムおもてなしコース二名!」
「はーい」
と、奥から声が聞こえてきました。
ママが手を出して
「ここは前金だよ」
と、いいました。
玉木はお金をだしてボー然としていました。
(もう金がない)
「チッ、仕方がねえ、外で待つとするか」
そんな時、頭巾をかぶったお武家様が入ってきました。服をみると位が高そうで、少し場違いの感じでした。
「公方様はここに入ったのか?」
と、頭巾のお武家様はいいました。
「そういう、あんたは何者?」
と、玉木が聞くと、お武家様は頭巾を外しました。その、お武家様は桜沢でした。
「おー、桜沢の旦那、なんでこんなところに」
桜沢は、さも仕事をしているかのようにいいました。
「公方様をおまえらに任しいるのが心配で尾行していたのよ」
とはいったたものの、本当は桜子が心配で後をつけてきたのでした。さすがに「女専用」には、入れなくて「男専用」に入ったら、この三人を見つけて後をつけてきたのが本当のところでした。
「へえー、公方様いっちゃったよ。中までご一緒しなくていいんすか?」
と、玉木はあおるようにいいました。
「いや、わしにはそんな趣味はない」
しかし、桜沢はきっぱりと断りました。
そのとき、奥の方から、声が聞こえてきました。
「――さどやオーダーくるよー――」
すると、ママは急に優しい顔になって言いました。
「あんたたち、運がいいねー。タダで遊べるよ。この店には時間ごとにスペシャル無料コースというのがあるんだ。遊んでいかないかい」
(このパータン、夢で見たことある。でもまあタダならいいか。夢の事は関係ないよな)
と、玉木は思っていました。(詳しくは、たまらん外伝をご覧ください)
「おー、遊ぶ、遊ぶ」
と、玉木は雄たけびをあげました。
「わ、わしは……、まあ、タダならいいか」
と、桜沢はも遊ぶことにしました。
それを聞いた、ママは奥に向かって言い放ちました。
「タダコース、二名だよ」
「はーい」
と、声がして奥から、かわいこちゃんが手招きしていました。玉木と桜沢は顔を見合わせて「おお!」といい奥へいました。
奥には、かわいこちゃんと美人のねいさんが下着姿で何人もいました。そして、中に入るや否や前後と両脇から抱きついてきました。
「さあ、服を脱いで、いいことしよう」
と、美人のねいさんがいって、玉木と桜沢の服を脱がせました。
玉木と桜沢がふんどし一枚になりました。そして、かわいこちゃんや美人のねいさんが前から、後ろから、体を摺りよせてきました。
「おー豪遊だ――」
「な、なんと――」
しかし、二人がさあこれからというときに、横の戸の向こうから声が聞こえました。
「オーダー キザ男、バカ殿」
そしたら、かわいこちゃんや美人のねいさんは、さっと離れて、すばやく、玉木にはバカ殿のヅラ、桜沢にはキザ男のヅラをかぶせました。
「え、なにこれ、どうなってるんだ」
と、玉木がいうやいなや
「そーれ、スペシャル無料コースだよ」
と、かわいこちゃんが叫びました。
そして、玉木と桜沢は戸の方に蹴飛ばされました。そしたら、なんと、戸は回転して二人とも「さどや」の舞台に転がり込みました。
なんと、通りは違っていたものの、このまぞやは、さどやと、裏でつながっていたのでした。
「え、ここは?」
と、桜沢は周囲を見回していると、いきなりムチが飛んできました。
「いて!」
玉木にもすかさずムチが飛んできました。
舞台には、仮面をかぶった女二人と男一人がいました。それは、蘭と桜子と与一のですが、仮面のせいて、玉木と桜沢には誰なのわかりませんでした。
「きたきた――。さあムチるぞう」
と、蘭は叫び、ムチをバシバシとバカ殿の方へ飛ばしました。
「燃える――」
桜子はキザ男へムチを飛ばしました。
「な、な、何だ、あ、痛て、痛て」
「ひぇ」
玉木と桜沢は必死にムチから逃げました。蘭も桜子も必死にムチを飛ばしました。与一はそれを見て、思い切りひきました。
(これが、女の本性……)
「なかなか当たらないわ、ハァ、ハァ――」
蘭は息切れしていました。
「うーん、イライラする」
桜子はいい、与一の方をみました。
(やばい、何か嫌な事をさせるきだ)
と、与一は思いました。
「えーい、与一やっておしまい」
桜子は与一にムチるように命じました。
「は、はい」
与一は、嫌そうに返事をしました。
(ごめんなさい、私は悪くありません、うらむなら姫をうらんでください)
与一はそう思いながら、切れのいいムチを左右に二回飛ばしました。
「バシッ、バシッ」
そしたらなんと、二つのふんどしが宙に舞いました。それは、まぎれもなく玉木と桜沢のふんどしでした。
「やっちまった……」
と、与一はつぶやきました。
蘭と桜子の真ん前に、玉木と桜沢の股間が晒されました。蘭と桜子は「キャー」と叫びながら顔を見合わせました。そして、二人とも、うつむき、しーんとなりました。
そして、舞台は異様な雰囲気に包まれました。
「フフフフフ」
蘭と桜子変な笑い声をだしました。
「こ、これは!」
与一はただならぬ不穏な気を感じました。
「へへへへ」
二人はそう笑いながらよだれを垂らしていました。
(な、なにかやばいものに覚醒している、危険だ!)
と、与一は思いました。玉木も桜沢もやばいと感じました。
「そりゃー、芋虫退治ゃー」
欄はそう叫んでムチを飛ばしました。
「芋虫をこらしめるのよ――――」
桜子も一生懸命にムチを飛ばしました。何故か二人のムチは格段にキレが良くなっていました。
「バシッ、バシッ、バシッ、バシッ、バシッ」
「ヒット、ヒット、芋ヒット、小芋ヒット、ヒット」
「ウォー、ギャー、イテー」
「バシッ、バシッ、バシッ、バシッ、バシッ」
「ヒット、芋ヒット、小芋ヒット、芋ヒット、ヒット」
「ウォー、ヒー、ヒー」
「もうやめて、心が痛すぎる」
と、与一、まるで自分の分身がムチらいているような錯覚に落ちました。それでもムチは容赦ありませんでした。
(この痛さ、快感かも……、でも……、うっ)
と、桜沢は思いました。少しマゾっけがあるようでした。
「バシッ、バシッ、バシッ、バシッ、バシッ」
「芋ヒット、芋ヒット、小芋ヒット、芋ヒット、ヒット」
「キャイン、ホヘ、ウッ、……、……」
たまらず、玉木も桜沢も立っていられなくなりました。
「この~、くそあま~」
と、玉木はかすれ声をあげました。
「うるせー、バカ殿!」
と、蘭は言い放ち、無情にも強力なムチを飛ばしました。
「バシッ、バシッ」
「クリーン芋ヒット、クリーン芋ヒット」
「……、……」
桜沢も玉木は、無残に泡を吹いて気絶しました。そして、容赦のない連続のムチで、宙を舞っていたふんどしが、二人の股間に落ちました。
「まだ、まだ」
と、蘭と桜子は叫びました。
「もう、気絶してるから、やめてください」
泣き顔で与一はうったえました。
その時です、バカ殿とキザ男のウィックのヅラがぽろりと取れました。さらに、その下の本当のヅラまで転がりました。それを見た、蘭と桜子は「はっ」と、我に返りました。
「兄貴だー」「玉だー」「ヤベー、ヤベー、どうしよう」「殿―、本物がいたー」
「どうするんだ、こんなの」
桜子もどうしていいかわかりませんでした・
「とりあえず、医者だ」
と、与一はいいました。
「じゃ、うちの藩邸まで運べば殿のお付きの医者がいるわ」
蘭はそういって、桜子と二人で玉木をかかえ、与一は桜沢を背負ってそそくさと店をでて、藩邸へ駆け込みました。
藩邸の医師は女医でした。名前を梅沢由香といいました。
「蘭、こんな夜中に何?」
と、女医は蘭にききました。
「先生、こいつらを早く見てやってください」
といって、蘭は女医に懇願しました。玉木と桜沢はうめき声をあげていました。
女医はかけものをとって診察をはじめました。
「どれどれー、あれ、玉木じゃない、体中、ミミズ腫れじゃない。ムチにでも打たれたの?」
蘭も桜子も返す言葉がありませんでした。
「みんなアルコール消毒だね」
女医はそういって、口に強い酒を含ませて「プー」と吹きかけました。そして、吹きかける場所を変えて、何回か繰り返しました。
「プー」「ギャー」「プー」「ギャー」「プー」「ギャー」
気絶していも酒がしみるらしく奇声をあげていました。
(おや、こんなところに布が)
女医は股間の布を取ってびっくりしていいました。
「こ、こ、これはひどい」
「先生、何とかお願いします」
と、蘭も桜子も自責の念にかられ必死に頼みました。
「これは赤チンだな」
と、女医はぽつりといいました。
「先生、チンコは真っ赤になっていますけと、もう無理ですか?」
蘭もは涙を流しながら、まじな顔をしていいました。
「いや、いや、そんな事じゃなく、赤チンという薬を塗るということ」
と、女医はいいました。そして、赤チンの液体が入った壺に大筆を入れて染み渡らせ、玉木のチンコに筆を交差させるようにして塗りました。
「ギャオー」
つづいて、桜沢にも塗りました。
「ホヘー」
女医は赤チンが塗られたチンコをジーとみて
「なんだか不気味……、でも、まあ、いいか」
と、いって布をかぶせました。
さらに、女医は桜沢の痔を見逃していませんでした。なんといっても、八図の殿のお尻番の医者なので必ずそこは見てしまうのでした。
「こっちの男、痔があるよ。ちょっとひっくり返すの手伝って」
女医と他三人は桜沢をひっくり返しました。そして、女医はおしりの穴をみていいました。
「うーん、大したことはないな」
といって、軟膏をぬりました。
「よし、診察終わり」
「それで、容態はどうなんですか?」
と、蘭と桜子は女医にききました。
「とてもあぶなかったけど、何とか一物はとりとめました。あと、そこは水枕をつるして冷やしてください」
女医はマジ顔でキリリといいました。そしてつづけました。
「ミミズ腫れは時期に直るでしょう。この、痔はこのボラレール軟膏を出しておくので痛くなったら塗ってください」
蘭とダツエはそれをきいて、大事が無かったことがうれしく、涙をながして抱き合いました。
「蘭、何があったかは知らないけど、まあ、玉木のことだからロクな事していないんだろうね。あんまり無茶しちゃだめだよ」
と、女医はいいました。
蘭と桜子は「ドキッ」としていました。
しばらくして、藩邸に駕籠が到着しました。マサ(殿)が徳ちゃんを城まで送ってから、藩邸に帰ってきたのでした。
マサは、けが人の二人と与一や桜子をみて
「何事?」
と、蘭に問いただすと
「なんでもありません。こいつら、アホだからバチがあたったんです」
蘭はこう、そっけなく答えました。
「こちらのハゲの旦那は?」
「知りません。玉木の悪友ではないですか?」
「そうか、まあ、どうでもいいか。もう寝る」
といって、殿は、その場をさりました。
殿にとっては、さどやのスペシャルコースが楽しかったので、他の事はどうでもよくなっていました。
次の朝、女医が診察していました。
与一も桜子も見守っていました。
「こんなの診察したくないんだけどね。あんたたち、当分役に立たないからね」
と、女医はきつくいいました。
「いて、いて、かえらなくちゃ。かたじけない、世話になった」
桜沢はそういって、なんとか、服をきてヅラをし、与一にかかえられながら駕籠にのって帰りました。
「あいつ、何者なの? 服をみると、立派なお武家さんのようだけど?」
と、女医は不審そうに言いしまた。
「いや、なんでもない、なんでもない、いて、いて」
玉木はごまかすようにいいました。
(それにしても夢に似ている。正夢になったようだ)
「玉、夢じゃないよね」
と、蘭はいいながら、玉木の股間をパンチしました・
「キャイン、キャイン、ヒー、ヒー」
玉木は奇声をあげました。
「あー、夢じゃなかった」
桜子と女医にはなんのことかわかりませんでした。
(詳しくは、たまらん外伝をご覧ください)
桜子はムチの事で自責の念にかられていました。
となりの部屋で蘭にその事を相談しました。
「いいのかな、あんなひどいことをしてしまって」
「いいの、いいの、やつら、どうせムチられにきたんだから。そうじゃなきゃ、なんか、悪いことしてあの場所にいたんだと思うよ」
蘭の言葉にはなんの悪びれもありませんでした。
「でも、なんか心が痛いな」
「それより、桜沢の殿はハゲだったの?」
「うん、そうよ。でも、絶対内緒にして」
と、桜子はお願いしました。
「わかった。でも、昨日は楽しかったよね」
「楽しかったわ、また、遊びにいこう。ムチは燃えるわ」
桜子は何かに目覚めたようでした。
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