第七十話 あの日から・・・・出会い



 アァア、今日は生徒会の集まりか!みんな勝手だよな、人に押し付けるだけで帰っちゃうんだから。




「二年一組の関矢浩史です、この度生徒会の役員に選任されましたので宜しくお願いします」



 関矢君は生徒会の広報の手伝いをお願いしますね、其れから各部活動費の申請が来ていますのでそれ等を纏めておいてください。

 一人では無理なようでしたら同じ学年の梶谷さんと一緒に行ってもらいましょうか。


「はい、同じ二年三組の梶谷美由紀です、宜しくお願いします。何をすればいいんですか、そのぉ私、部活もあありますので生徒会の方は余まり参加できませんが其れでもよろしいでしょうか」


 梶谷さんはバレーボール部でしたよね、大丈夫ですよ。空いている人がそれぞれ対処してくれるようになっているので、出られない時には連絡してくれれば誰かが変わりをやってくれる事になっているで部活頑張れますから。


「あのぉ、僕も部活やってるんですが休んでもぴいんですか?」


 休んでも良いけど関矢君は卓球部だよね、卓球部って大会などで上位に入ってないよね?君が居なくても大丈夫だよ。梶谷さんが休んだ時にはカバーしてやってよ。



 何て言う事が有ってから俺は部活と生徒会の使い走り役で忙しくなり、生徒会の初会合で梶谷さんと初めて会ったのです。

 部活の時には髪を後ろにまとめてポニーテールにして頑張っている姿だったのに、今は髪を解いて違った姿を見せてくれている。




 講演台の上から卓球をしながら何度も梶谷さんを見ていたけれど、まさか生徒会で一緒になれるなんて思いもしなかった訳で・・・・ちょっと得した気分でウキウキしていたんです。

 けれど、梶谷さんは初日に参加しただけで二年時には殆ど参加して居なくて、大会二回戦負けの卓球部の俺は皆勤賞が貰えるのではと思えるくらい参加していた。



 関矢君、この資料顧問の先生と教頭先生に、そして部活顧問やコーチ、各部活の主将にも配って来て下さい。



 等といつも使い走りで、各部を回っては文句を言われイヤな事ばかりだったけれど、多摩に梶谷さんが顔を見せてくれた時には嬉しかったなぁ。



「関矢君って卓球部なの?生徒会専属だと思っていた、いつも私が休んでいるから大変だったよね、ゴメンね」


「いやっ其のぉ、別に大した子じゃないし。それに俺達の部、勝てなかったから仕方ないんだけど・・・・気にしなくていいから、ゴメン俺行かなくちゃいけない所が有るから」



 憧れの梶谷さんに声掛けられるなんて、俺超嬉しぃんだけど口には出せなかった。

 それから毎日が楽しくて、遭う日が有ればと思っていたけれど、その後は互いに部活動がいっそ画しかったので会うことも無く三年生になり、クラス替えもあったけれど同じクラスになる事はなかった。



「あのぉ、加藤先生いますかぁ三年2組の梶谷ですがクラスの纏めを持ってきたんだけど・・・あれっこの教室、関矢君のクラスだったんだ」



「あッ梶谷さん、その、久しぶりだね!部活が終わってから見る事が無かったからどうしたと思っていたけど確か二組だよね、加藤先生職員室に行ったまままだ戻ってきていないよ、あれっ今日は一人なの?いつも柴田さんとかと一緒じゃなかったけ」



「今日は一人だよ、其れって部活で一緒だったからで柴田さんは三組だから一緒じゃないよ((笑))」



「あははは、そうだよね、ごめん!俺よく分かんないから、でも生徒会以来だよね。梶谷さんは生徒会役員未だやってるんだ」



「やってるよ!と云うか、どうして関矢君やらなかったの?私また会えると思っていたのに二年の時に関矢君に迷惑かけたら返そうと思っていたら居ないんだもんガッカリだよ((笑))」



 なんて言う事が有って、其れから少しだけど話が出来るようになったけれど俺も増田や田畑達と遊ぶようになって、梶谷さんと遊びたい気持ちが有ったけれど月に二~三回しか話す事が出来なかった。

 其れでも憧れていた俺には体育館やグランドで走っている梶谷さんを探していて、俺はストーカーかって!自分でも呆れるほどだったのを思い出す。


 秀樹兄さんが良く聞いていた村下孝蔵の「初恋」の歌詞を全部は思い出せなかったけれど、歌っては一人で感傷に浸っていた俺だった。


 それからだんだんとクラスの皆も塾に通うようになって遊ぶ機会も減り、俺は塾に行かなかったので一人家でと云うか、親父とお袋は忙しかったので純姉さんや秀樹兄さんに勉強を教わっていた。





 ねぇ美由紀ちゃん、今日も関矢君私達を見てるよ、あれきっと美由紀ちゃんを見てるんだと思うよ!


「ええっそんな事ないんじゃない、だって私関矢君とあまり話したことないんだよね。二年時に生徒会で一緒だったんだけど私バレー部の大会であまり出られなくて迷惑かけちゃったから」



 ふぅ~んそうなんだぁ、でもそれは仕方なかった訳だし良いんじゃないの、でもあまり見られるとストーカー的になっちゃうよね((笑))



「いやっ其れは可愛そうじゃないの、彼っつ語句真面目で優しいんだよ、関矢君の御陰で私ずいぶん助かったんだから、其れでお礼を言おうとしたら関矢君忙しそうで、彼って先生たちからも信頼熱いから忙しんだよね」



 へぇ、美由紀ちゃん良く知ってんだね。もしかして相思相愛だったりして!!なんなら告っちゃえば。



「なっ何を言ってんの、そんな事言える訳ないよ、それに彼って優しいから意外と下級生たちにモテるんだよ」



 やっぱりぃよく知ってるんだから((笑))美由紀ちゃんって意外と奥手なんだね。



 本当は私からラブレターとか手紙でも渡したかったけれど、そんな勇気も無いしすれ違う時に声を掛けるだけで精いっぱいで、中学時代にはそれ以上にはなれませんでした。

 あぁあ、あの時もっと私から積極的に声を掛けていればと思う日々が続いたけれど高校受験の塾通いも始まり会う事は無くなってしまったのです。



 其れから互いに高校受験をして違う学校に通う事になった訳で、まさかバス停で梶谷さんに会えるとは思っていなかった。

 中学時代とは違って長かった髪をショートカットにして、少し大人じみた梶谷さんは可愛かったんです。




 そんな梶谷さんを見てどうしても堪え切れず「神様は俺を見捨てていなかった((笑))」、中学時代には声を掛ける事が出来なかったのに何故かあのあの時に不思議だけど自然に声を掛ける事が出来たのだ。



「アッあのぉ梶谷さん、お早う!高校何処にしたの、その服装だと南田じゃないし・・・・水戸の女子高なの?俺は日立東工業なんだよ」


「関矢君、日立東工業高校なんだ、何科なの?私ね水戸第二高校なんだよ、柴田さんは水戸商業高校に行くんだけどね。そうなんだ日立東工業なんだ、なら朝は一緒の時間だね」


「へぇ関矢君日立東工業高校なんだ、中学の時ずっと美由紀ちゃんを見ていたもんねぇウフフフ私知ってんだから。やっと美由紀ちゃんに声掛けられたね。どう美由紀ちゃん関矢君に声掛けられてウフフフ」


「なっ何言ってんの、わ・・・私は別に、でも同じ時間ならこれから宜しくね」



 俺はバス停で会えることが楽しみになり、中学時代からの片思いが実った瞬間でもあり、心の中から嬉しさが溢れて・・・多分顔を真っ赤にしていたと思う。

 中学時代と同じに梶ちゃんの隣には柴田さんや友達がいたけれど、其れでも一緒に居られる時間が楽しかったし居ない時には探している自分が居て、柴田さんから「探しても美由紀ちゃん今日は来ないわよ」って言われて・・・・恥ずかしかったなぁ。



 其れなのに・・・・・・!



 初恋?でも中学の時から思い続けていた俺だったのに俺は彼女の気持ちも知らないで・・・いや、知っていたのに答えてあげる事が出来なかった。


 高校2年生の時に初めて家を訪ねてくれて、其れから俺がアルバイトで居なくても来ていたようで、純姉さんやお袋とも仲良くなっていた。

 特にお袋は気に入って台所で一緒に晩ご飯を作って「浩ちゃんが居なくても夕餉を食して帰って行ったよ」と家に帰ると喜んでいるお袋の声が聞こえるのだ。


 毎日アルバイトと受験勉強でクタクタ状態でいたけれど親父やお袋が喜んでいたし、秀樹兄さん達も新しい妹が出来たみたいだって喜んでくれていた。



 だけど、俺は高校卒業まじかに誰にも言えない事件を起こしてしまったし、もうあの時間を取り戻す事は出来ないと思い悩んでいました。

 其れでも梶谷さんはいつも笑顔を振りまいてくれるし俺に元気を与えてくれて眩しくさえ感じていた。




 純姉さんに相談しては何度も手紙を書いては破り、俺の起こした事実を伝える事も出来ずに俺は東京へ自分がどうなるのかも分からないまま向かったのだった。


 東京へ出てからは毎日が忙しく、寝る暇もなくただ働いて勉強して働く日々を過ごし友達を作る日まもなく働いていたからなぁ。


 でも、侑希ちゃんが産まれてから自分が変わっていったのが分かったし、それにもう離れる事が出来ない自分が居る事も、、、だから、だから梶ちゃんが大好きだ。


 結婚したい!俺は侑希ちゃんの父親に、パパになりたいんだぁ!

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