第六十九話 あの日から・・・・・プロポーズ


 其れでも日にちは過ぎて行き、もう少ししたら親父の三回忌を迎えるのだけれど、何だかスミレ会のメンバーと秀樹兄さん達の会合が多いような?とは言え俺も参加しようかなぁなんて思っていたら「お前は良いから、純と俺で何とかするからお前たちは今まで通りにしてればいい!」なんて言われてしまいました。

 何を今まで通りにするのか分からないまま日にちは過ぎて、三年祭の三日前に宮司さんと武蔵鮮魚の大将も来て、純姉さんと秀樹兄さん、そして秋江叔母さんに佐川田の奥さんも参加して話し会いをしている。



「おい、浩史!お前貯金幾ら有る、二百くらいはあるか?無いのかどっちだ」


「何、いきなり?貯金の話?其れくらいはあるよ、いつかは結婚できたらって少しづつだけどしてるから。勘違いしないでね、今すぐって訳じゃないけど何時かはする心算だからね」


「ふぅん、そうなんだ!其れなら大丈夫かな。まぁいいや、後は俺達で何とかすればいいか!まぁギリチョンと云う事で考えておこう、其れから明日床屋に行ってこい。美由紀さんにも話してあるけど二人とも頭をもっときちんとしねぇとな」


 はぁっ何それ、何でおれの貯金なんか聞いてくるの??其れに髪の毛の事だって、三年祭ってそんな行事なの、そんなに金がかかるの?


 何も聞かされないまま仕方なく俺達は二人して床屋と美容院にそれぞれ出かけて、純姉さんから「ちょっとマシになったんじゃない」って、あなたの弟ですよ俺は!でも言い返せなかった。


 三年祭の朝を迎え、庭先には大型のテントが張られてテーブルと椅子が置かれ、お茶の準備がされていく。

 親父の位牌も仮神棚にセットされて、準備が整いつつある。

 

 俺達兄妹は黒の礼服に着替え、今回は梶ちゃんも侑希ちゃんと一緒に参列する事になっているのだけれど、侑希ちゃんは俺の膝の上でチャッカリとおもちゃを持って遊んでいる。


 連の方々も台所に入ったりして朝からお手伝いに来てくれていて、それに合わせて寺子屋塾チビッ子達も着ているけれど何で?親父の偉業は凄いって俺だけが思っているのかも知れない。


 朝の十時になって宮司さんと社長?えぇつ何で社長が一緒に居るの、秀樹兄さんは父さんや母さんも今回は呼んだの???其れに近藤支社長に渡辺部長、栗原担当社長まで一体これからに何が起こるの?


 梶ちゃんが「ねぇねぇ関矢君、なんか三年祭って凄いんだね、私はこんな凄いの初めてだよ」って言われても・・・俺も初めてだよ!


 宮司さんによって親父への三年祭の祝詞が奏上され、それぞれ参加者が玉串を上げていく中で、俺と侑希ちゃんは一緒になって宮司さんから玉串を頂き、親父の位牌の前に置いて行った。



 パァアパオ~ジ、パチパチ、ねっ、ゆちもパチパチエヘヘヘ、マァマ、パチパチちたよ、ねぇっ!



 それから全員で山のお墓まで歩いて行きお参りをして家に戻れば三年祭が終わる事になるはずなのに・・・・誰も帰る人がいない???何方かというと増えているような!気がしているのは俺だけだろうか。



 ねぇっ!浩史おじさん、台所で純さんが来てって呼んでるから・・・何か話があるみたいだよ。


 侑希ちゃんは私達が見ているから、早く行ってあげないと!純さん怒ると怖いからね。


 美由紀さ~ん、宮司さんがチョッとお手伝いをして欲しいって言ってたよ、。



「純姉さん何~?俺に何か用なの」


 

 連の皆さんが台所で包丁の音や片付けをしている中に呼ばれた俺、いったい何の用事何だか想像がつかなかった。

 俺が着た瞬間に包丁の音や雑談がいきなり無くなり静かになって・・・・・一体俺は何か悪いことした?其れともこれから何かあるの??



「ねぇ浩史、ちょっと聞きたいことが有るんだけど、此処にいる皆さんの前で正直に話しなさいね。あなた、いつまで美由紀ちゃんをほっとく心算なの、今日はおじいさんの三回忌、いい機会だからあんたも腹を括りなさい」


「えぇつ話って其れの事、いやっ別にそれを今言わなくて・・・其のぉ皆も居る事だし、いやぁなんて言うか、後で話すから」


「何言ってんの浩ちゃん、美由紀ちゃんだっていつまでも待ってくれないよ、私達は皆、美由紀ちゃんの味方だからね、もし浩ちゃんが変なこと言ったら許してあげないよ、分かってんの!ちゃんとしてあげなさいよ」


「分かってるよ、でも俺だけの気持ちじゃ無理だしねぇ純姉さんそう思うだろ」


「あぁあぁ我が弟ながら本当に情けないんだから、はっきりしなさい。好きなんでしょ、離したくないんでしょ!だったらおじいさんの前でハッキリ言ってあげなさいよ、みんなここで聞いてあげるし証人になってあげるから大丈夫、応援してあげるわよ」



 敏江ちゃん達、美由紀ちゃん呼んでくれるかな。うん、そう・・大事な話があるから、其れと準備して置いてね、大丈夫だから、お願いだよ。


 はぁい、美由紀さん、浩史おじさんが呼んでるよ、早く行ってあげてね、ウフフフ期待しておいた方が良いかもね~、頑張って!



 「関矢君、なぁに話って、あれ皆さんも揃って何かあるんですか?」



 梶ちゃんが来た事でいきなり全ての音が一瞬止んでしまって、純姉さんや裕子義姉さんが俺を後ろから前に押し出している。



 「なぁに関矢君、顔を赤くしてお酒飲んだの?あれっ侑希は居ないの?」



 また音が少しずつ出始めて・・・俺は梶ちゃんの手を初めて握って、ついに今まで思っていた事を口に出してしまった。



 「あの、その実は・・・梶ちゃん、俺大事な話があって、今まで言えなかった事をそのぉ、十七年間待たせてゴメン!・・・・俺は梶ちゃんが大好きだ、どうしても忘れられなかった。だから、だから俺と結婚して欲しい・・・・俺のお嫁さんになって欲しいんだ。俺を侑希ちゃんの本当のパパにさせて欲しい、だから、だから・・・・俺と結婚してください。お願いします」



「ええぇっ何言ってんの、関矢君急に何言ってんの。だって、だって私はあなたの事が待てなかったのよ・・・其れなのに、其れなのにだって・・・・・侑希だって居るのよ、其れでもいいの?

本当にお嫁さんにうっうぅつうっ本当に私で良いの。私ずっとずっと関矢君の事思っていたの・・でも私はあなたを待てなかったのに、其れでも其れでも忘れられなくて・・・だから、だから、ごめんんさい!私からお願いします、お嫁さんにして下さい。侑希と一緒にあなたの家族にさせてください」



 シーンと静まり返っていた土間にいきなり大きな拍手が起こって!



浩ちゃん、美由紀ちゃん!おめでとう


幸せになんなよ、皆応援してっからね

 

本当におめでとう!


 


はぁ~い、皆さん!お待たせいたしましたぁ。


ダメな二人がダメじゃなくなりましたので、さぁ皆さん準備して下さいね~!


ネクタイを白に変えて、此れから二人の結婚式を行いま~す。


 


おぅ!やっと決まったかぁ!


長かったなぁ、おめでとう


 

あの水害で皆が暗くなっちまったけど、本当に良かったよ、こんな明るい事はねぇ。


 

二人とも本当に長かった、よく頑張って来たよ、どうか二人の事、これからもみんなで応援してやってください。


 と言う事で二人の事クッククク((笑))ダメだ次の言葉が出ない、宜しくお願い致します。


 アッハハハは長すぎたんだよ、もうこの二人の結婚は笑うしかないやなガハハハハ


 皆で祝ってやっぺ!


 ゥンだな、子供達の七不思議がなくなっけど嬉しい事だわ!




 学生時代から思い描いていた梶ちゃんとの結婚、少し形は変わってしまったけれど、それでも俺は一番大好きな人と結婚する事が出来、そして一番可愛い娘の侑希ちゃんが俺の家族になってくれたのだ。


 天国にいる最高の友達だった黒沢、ごめんな!俺結婚する事にしたよ。

やっぱり俺は梶ちゃんが好きだ、忘れる事も離れる事も出来ないよ、俺、幸せになっても良いよな。 




 あの日から17年経ったけど、今でもこれからもあの日の思いを・・・・・


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