第六十八話 スミレ会の企み(二)・・・・・過去にない嵐
十月に入り、もう既に最後の稲刈りも終わり、親父の三年祭どうしようかと言う事で秀樹兄さんや純姉さん達が家に集まってきた。本当は今月下旬に行いたいとの事だったけれど、ちょっと色々準備が遅れているので、十一月に入ってからにしたいと俺に言ってきた。
何でそんなに準備に時間が掛かるんだ?なんて俺は思っていたけれど、決めるのは秀樹兄さんだし、秋江おばさん達もそのほうが良いだろうって事になり、十一月二十三日(土)勤労感謝の日に行う事が決まった。
翌週七日火曜日あたりから再び大型台風の情報が、今回は本州に沿って北上するとの発表あったのです。
気象庁の情報ではかなりの規模である事が分かり、十五号の時の対応と同じに今回は全国規模で支社全てにおいて機材の移動や、当日は休みにする等の対応を図ると共に社内安否システムを使用する事になった。
強い風と厚い雨雲を持ちながら勢力を維持したまま日本列島を縦断して行く台風十九号、その威力はすさまじく茨城県内においても大雨によって今まで経験した事の無い雨量を計測し、久慈川の越水氾濫によって純姉さんの住んでいる地区や川畑さんの地区など、其れに落石事故を起こしたあの現場なども床上浸水に見舞われたり、流されてしまった家なども出てしまいました。
機材の損壊や水損被害は少なかったものの、各営業の社員の家が水害に見舞われてしまった事などから、社長命令によって直ちに応援部隊を派遣し社員の家ばかりではなくその周りの家屋の消毒や泥や流木の除去にも協力をさせて貰ったのです。
純姉さんの家も床上浸水となってしまい、姉さん達は南田の会社の事務所に寝泊まりをすると云う事になってしまいました。
高畑さんの所は田圃だけが水没しただけで、畑や家は高台にあるため問題は無かったようですが親戚の家などは水に浸かった様でした。
おい純、ちょっと今夜はヤバいかも知んねぇぞ。俺は消防団で出かけけっど親父とお袋に話しとけな。
分かったよ、隆さんも気を付けなよ、何かあったら連絡を早めにしてよね。健、恵、お父ちゃん消防団で出かけっから挨拶しな。
父ちゃん行ってらっしゃ~い!気を付けて早く帰って来てねぇ。
お父さん、お母さん純なんだけど部屋に入っていい?隆さん今消防団に出たんだけど。この雨心配なんだわ、大丈夫なんでしょうか。
あぁあ!心配あんめぇよ、隆が産まれてから今まで久慈川が水が出した事ねぇからそんなに心配すっ事あんめ、大丈夫だって!
そんなら良いんだけど、でも今回はかなり大きな台風だって言うから消防団でも早めに動くべって今出かけたんだわ。
そうかぁ、そんなら少し準備でもしておくべ、集会場は此処と同じか少し高えだけだら水が出たら浸かっぺよ、あそこじゃねえ場所に行く準備だけしとっか。
おい隆、お前どう思う、この間の雨で少し地盤緩んでっからなぁ、堤防持つかしんぺぇだなぁ。
水の量が半端ねぇからなぁ、何時までも降るかによっても変わけっど水嵩上がんのが随分早くなってっぺぇ、此れは持たねえかももなぁ。
さっき警察と消防が崩れるかもなぁって、団長に行って早めの広報の指示を消防本部から貰えるように確認しておくか。
そうだなぁ!土木の河川管理はなんて言ってんだ?俺は今まで見たことねぇぞこんに堤防近くまで水が上がる所、早めに指示出して欲し~なぁ。
音を立てて流れる泥水が一気に増え警戒水域を超え堤防の縁したあと50センチほどになって避難指示が出てたようですが、実際にはもっと早めに出ていたのかも知れません。
しかし、時は既に遅し、低い堤防の所から越水が起こり始め、ついに広報している中で一気に決壊が起きてしまったのです。
ウ~ カンカンカン ウ~ カンカンカン
久慈川が越水の可能性が有るため避難してください。早めに高い場所に避難してください。あと1~2時間で氾濫する恐れがあります、身を守る避難をしてください。
ウ~ 此方は~消防団で~す カ~ンカ~ンカ~ン 堤防が~決壊する~ ウ~ 恐れが~有りま~す カ~ンカ~ンカ~ン 大至急~避難してくださ~い ウ~
純、消防からの避難指示が出たぞ、俺達も車で避難すっぞ、必要なもの車に積んだからもう行くべ。今までこんな事なんて無かったのになぁ。
ウ~~ 堤防が~決壊する~恐れが~有りま~す~ ウ~~ 大至急~避難してくださ~い ウ~~ 高台へ~避難して~下さい~ ウ~~
けたたましく鳴り響く消防車のサイレンと避難を知らせる鐘の音、そして広報スピーカーから聞こえる避難指示やサイレンが鳴り響く中、着の身着のままで逃げ出す人も居たそうです。
越水した水が勢いよく街の中に溢れ、あっと言う間に純姉さんの家も床上浸水し、川沿いばかりではなく殆どの家が浸水してしまったのです。
近くにあった集会場も予想以上の水の高さで浸水した為、もう少し高台にある避難所へと云ったけれど、既に避難した人で溢れていたそうです。
強風と共に雨が降り注ぐ中を車で移動を余儀なくされ、常陸南田の旅館へと家族皆で一時避難しました。
俺達は強風と雨の音に怖がる侑希ちゃんと共に、純姉さん達がそんな状況にある事も知らずにぐっすりと眠っていたのです。
翌朝に秀樹兄さんの電話で状況を知りましたが、俺は慌てて純姉さんに電話を入れましたが、その時何も出来ませんでした。
旅館で一晩過ごした純姉さん達は、後日に事務所を整理して生活が出来るようにしたのですが何故実家である我が家に来なかったのか?どうやら俺達に気を使ったようです。
家にある布団類を隆義兄さんの事務所に運び状況を知る事になった俺ですが、健や恵たちは強風と雨の中を避難した事で少し恐怖感が有ったようです。
取り敢えず子供達は学校行く事が出来ない為めしばらく休むことになり、家で預かる事になりましたが侑希ちゃんと遊べるため喜んでいました。
キャキャキャッ ニィ~、ニィ~!マァンマダァダァ!ネェ~、ネェ~イット!ボチャ エヘヘヘ、イット キャキャキャッ
ハイハイハイ、お姉ちゃん達と一緒にお風呂入りたいのね、健ちゃん、恵ちゃん、侑希も一緒に入浴して良いぃ?
純姉さんと手を繋いで脱衣所に行く侑希ちゃん、まさかこんな形で家族が増えるなんて思いもしませんでした。
義隆義兄さん家族と共に夕食を大家族で賑やかに居られる、そしてお風呂に一緒に入れることで侑希ちゃんは大喜びで、夜もグッスリと寝てくれました。
越水した泥水は3日後に完全に引いたのですが、泥に浸かってしまった家財と畳や冷蔵庫等電気製品、農耕器具も全て水に浸かり使用不能状態になってしまったのでした。
多くの方の協力によって家屋や道路に溢れた砂利や泥などの除去は意外と早く復旧しましたが、越水の為に崩れた堤防の復旧にはもう少し時間が掛かるだろうとの事です。
何とか道路洗浄は進み、泥水に浸った家屋の消毒も済んだけれど、完全に乾燥するまでは一~二カ月は時間を要するとの事で、まして塗り壁の修理には職人が不足している為、長期間の時間は掛かるとの事だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます