第六十五話 スミレ会の企み(二)・・・・採 寸
台風が去ったあとに残された爪痕は、周りの木々が薙ぎ倒れたり千切れたりしていましたが、農家にとって一番大事な稲作、実が詰まった稲穂が雨風に打たれ倒れてしまっている事です。
稲穂は水に浸かると其処から芽が出てきてしまう為、稲穂を水に浸からないようにするか、または早めに刈り取るかなどの判断が求められるのです。
秋江叔母さんや佐川田さんの田圃や高畑さんの家の田圃も早生米の為、その判断が求められていました。
あと2週間我慢すれば刈り取る事が出来るけど、この後に、また大雨や台風が来るのかによって芽が出てしまう事も・・・・なぜか家に集まってはみんなで話し合っているけれど、どうして俺ん家なの?集会場があるんじゃないのって。
「浩ちゃん、天気予報パソコンで見られるよね、どうなってっか見て欲しいんだわ、其れによって今週か再来週に稲刈り脱穀すっか考えなくちっゃなぁ」
「あぁあ成る程ね、今の所ネット上では1~2週間は大丈夫そうだよ、この天気予報図を見ても高気圧が張り出しているから、ただフィリピン海域の方の水温が高いのが気になるけど暫くは大丈夫じゃないかなぁ、晴天がしばらくは続きそうだから、来週か再来週には稲刈りをするんだと云う準備だけ進めておいて、天気が変わりそうになればすぐに刈っちゃえば良いんじゃないの」
「そうだよね、そんじゃ準備だけはして置くべ、そんでもし雨が降りそうだったら皆で協力し合って、稲刈り機を回して一気に刈っちまぁべ、そん時は宜しくな」
なんか俺ん家は集会所ならぬお茶会所になっているような気もするけど、侑希ちゃんが喜んでいるからまぁ良いか。
高畑さんの所はかなりやられたので少し早いけれど稲刈りを済ませてしまたようだ。
中には青い米も混じっていると云う事だったけれど、最近はこの青い米を水晶米だとか、ヒスイ米いう名前でインターネットで販売するとあっという間に売り切れてしまうんだとか、和子さんも北海道に居ながら高畑さんのために頑張ってくれているようだった。
快晴が続いた二週間後に秋江叔母さん達も稲刈り脱穀を済ませ、秋の第一回スミレ会の集まりがあり、梶ちゃんと侑希ちゃんが参加していた。
前回の時と同じように、俺の生徒たちも参加するとか、何でも今回は絶対参加したいからおじさん休みにしてって何度も念を押されてしまったのだ。
「今日はあんた達のお父ちゃん達が見たら絶対に大泣きするからね。前回白無垢を美由紀ちゃんに来てもらったけれど、あんた達も着たかったという意見があって、白無垢は着せるのが大変だから、今回はウエディングドレスをそれぞれ持ってきてもらったから着てみてね。其れで写真を撮るから、其れとサイズもちゃんと覚えておくんだよ。いつかは着るんだしね」
ウワァすごい生地がサラサラして綺麗、こんなに軽いんだぁウエディングドレスは憧れるよねぇ
真っ白なんだねぇ、こっちは薄いピンクがかってるし、ねぇ純さん、ドレスの色ってどんな意味があるの?私達知らないんだけど、其れと長いのと短いのどっちが良いのぉ?
「はいはいはい、白はね、私へ清廉潔白ですよって意味で未婚の方が多く着るやつで、色付きは再婚する人等が多く着るそうよ。でも、今はあんまり関係ないようだけどね、そうですよね衣装屋さん」
はい、今は色についてはあまり気にする人はいませんね。真っ赤なドレスを着る人も居ますし、淡い此方の淡いピンクのドレスなんて人気が有るんですよ。
ねぇ美由紀さん一緒に着ようよ、おじさんに見せるんでしょ・・アッいけない言っちゃったぁ!
アハハハハ大丈夫よ敏江ちゃん、そんなの皆知ってるから、ダメな二人だって事も充~分に周りで見ていて知ってんのよ。
いまだに手も繋げないんだから、見て居るこっちが恥ずかしいくらいだわ
なぁんだ私いけないこと言ってしまったかと思っちゃった
「何皆して勝手なこと話しているんですか、私達は大家さんと間借り人の関係ですから。もう本当に言いたい放題なんですから本当に困っちゃう」
はいはい、そう言う事にしておきましょう、美由紀ちゃん決まったの?こっちの白いのちょっと来てみては、大丈夫よ美由紀ちゃんはまだ一度も着ていないでしょ。こういう時にさっさと着ちゃうのが一番よ、侑希ちゃんのもあるからママと一緒に着て写真撮ろうね。
私は純さんや佐川田さんに促されるままに白のウェデイングを侑希と一緒に着て写真を撮って頂き、それから淡いピンクのドレスに着替えて一人の写真と白いドレスを着た侑希と一緒の写真も撮って頂きました。
敏江ちゃん達もそれぞれ着ては写真撮影して、あっという間の試着会が終わったのです。
私は白無垢の時と同じように涙が零れてきてしまい、「浩史にちゃん言ってあげなくちゃ」って純さんが笑いながら私の涙を拭いてくれました。
あっと言う間の試着会が終わり、サイズは着る機会のない私にとってはあまり関係のない事だったので控えはしませんでしたが、其れでも「もし着られるのなら」との思いは有りました。
家に戻ると関矢君が畑から戻って来ていて、「お帰りぃ、今日のスミレ会は楽しかったの?」って聞かれたけど、まさか「純白のウエディングドレスを着たの!」なんて言えないし、
「楽しかったわよ、ねぇ侑~希!」
純ちゃん、美由紀ちゃんと侑希ちゃんのサイズは取れたの。其れでどれにするの?衣装屋さん、どっちが良いと思います?
そうですねぇ先程、ご本人さんと話しましたけど「着るなら私は純白は無理よね、淡いこっちのピンクかしら、侑希は純白じゃなくて赤ちゃんだから赤よね」って、私もそうですねって答えておきましたよ。
其れじゃ、この淡いピンクに合わせたベールと、それと美由紀ちゃんに似合うティアラね、其れは衣装屋さんに二つ三つ当時に持ってきてもらって合わせる事にしましょう、お願いできますか。
其れはもう、あの方の涙を何度も見せられては何とかしてあげたくなりますよ。まして女一人での苦労を聞かされてからは幸せになって欲しいので、私共も応援させて頂きます。
スミレ会と貸衣装屋さん迄巻き込んでいたなんて思いもしなかったけれど、不甲斐ない俺達に皆がこんなに思いれてくれていたなんて知る由も有りませんでした。
アァアそんなに俺達ってダメ?なのかなぁ?梶ちゃんは兎も角として俺は何を言われても仕方ないけれど、少しは勘弁して下さい!
いつも私達母娘に気を掛けてくれて嬉しいけれど、どうしてみんな私達が気になるんだろう、関矢君は兎も角として、TVドラマみたいに言い出せればよいのかも??私には絶対無理よ!
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