第六十三話 スミレ会の企み(二)・・・・もっと私を見て
産まれてから早18ヵ月を迎え、最近、侑希も言葉を覚え始めたせいか色々な言葉を話してくれるのですが、お風呂に入る時間からは全て関矢君と侑希が保育園の事などを沢山話しているようで・・・ママにも沢山話してよ!っていう私がいるんです。
「ねぇ、お姉ちゃん聞いてる。侑希ちゃんと兄にぃが一緒に寝て寂しいなら、いっその事兄にぃのベッドで一緒に寝てしまえば良いんじゃないの。そうすれば寂しくないし、侑希ちゃんも隣にママがいれば安心できるでしょう」
「何を言うのかと思えば、そんなの駄目に決まってるじゃないの、大家さんと間借り人の関係なのよ私達は、そんな事は出来ません」
「だ・か・ら、お姉ちゃんがいっその事兄にぃを襲っちゃえば!ダメ関係同士の二人なんだからもう良いんじゃないの、誰も文句は言わないわよ」
私は関矢君から言われるまでは待ってるって一人で勝手に決めたけど、本当に私を受け入れてくるのだろうか?という不安はあります。
美咲の言う通りに私が積極的になれれば良いのかも知れませんが、でも・・・無理ムリ!今の私には絶対無理よ、そんなこと出来ない。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん何さっきから一人でぶつぶつ言ってるの?ねぇ二人はどんな寝顔してるのかなぁ・・・・ちょっと見て云い、いいよね。ウフフフ気になるぅ、お姉ちゃん見た事あるの?」
「ないわよ、ダメよ寝てるんだから。起こしたら侑希に怒られるわよ、せっかく寝ているのに悪いわよ」
と云いながらも美咲につられて見に行く私がいて、そっと関矢君の部屋の襖側を少し開けて見ると同じような寝姿で二人して寝ていました。
二人でしばらく見ていましたが、侑希たちの寝姿を見て何故か安心している私がいました。
「あぁあ・・・兄にぃと侑希ちゃんは本当に親子だよね、寝姿が一緒なんだもん。お姉ちゃん達はやっぱり家族なんだよ」
「そんなことは分かってるわよ。だけど、どうしても無理なのよ、それくらい美咲だって知ってるでしょ」
「知ってるけど、其れはもう良いんじゃないの。侑希ちゃんがあれだけ兄にぃに懐いて、例え血が繋がって居なくても親子は親子なんだから兄にぃなら大丈夫だよ、それにお姉ちゃんだって兄にぃが大好きなんでしょ」
「好きだよ、でもね好きだけではどうにもならない事だってあるんだからね。さぁ、もう私達も寝よう」
パァアパオ~ジ、ペチペチペチおっき、あちゃあちゃ、おっきパァパペチペチペチあ~ちゃ、おっきぃ
「うぅ~ん朝かハイハイハイ、侑希ちゃんおはよう、起きたよ、早いねぇ侑希ちゃんうぅ~んよく寝た。夜起きなかったね、其れじゃ侑希ちゃんオムツ見せてね」
其れからオムツを交換して洗面所で歯を磨いてから顔を洗って、一通りの事を済ませると侑希ちゃんは梶ちゃんの部屋へと走って行った。
マァマ、おっきマァ~マおっき!マァマあちゃ、おっきい~!
「侑希ぃおはよう、よく眠れたぁ。お顔洗ったの?歯も磨いたぁ」
ゆち、クチュクチュ、ペチペチペチ、おぁた。パァパオ~ジ、タンポいく
「顔を洗ったのね、歯も磨いたと、それで関矢君と散歩へ行きたいの。はいはい、それじゃ着替えましょうね。」
「ウワァお姉ちゃん侑希ちゃんの云ってる事よく分かるねぇ、さすがママだわ、私全然分かんない」
「何言ってるの、関矢君の方が私より分かってるわよ、彼は泣き声で侑希が何して欲しいのかも分かっちゃうし、赤ちゃん言葉で話せるのは彼くらいよ。さぁて侑希、着替えが終わったからパパに挨拶しなさい」
パパ、おちゃょござまちゅ!
「えっ、お姉ちゃん侑一さんにちゃんと挨拶させてるの?知らなかった!毎日、朝と寝る前にもさせてるんだぁ。挨拶の事、兄にぃは知ってるの?」
「うぅん多分、知らないと思うよ話していないし!それに関矢君は一度もその敷居からこっちに入った事はないんだよ。写真がある事だって多分薄々は感じているんだろうけど、私も話さないし彼も聞いてこないしね。だから、私達母娘だけの事なの」
「それじゃ、パパとパパオ~ジの違いを侑希ちゃん知ってるんだ」
「あぁあ、その事ね。美咲はどう思ってるのかは分からないけれど、パパオ~ジの意味はパパじゃないおじさんだよという意味で、関矢君が侑希に教えた言葉なんだよ。パパ無いおじがパァパオ~ジになったと云う訳なんだけどさ。節句や誕生日等の祭事は関矢君の方から侑一さんと三人で行ってからにして、といつも言ってくれるんだよね。だから・・・・私、彼に甘えているのかも知れないね」
「兄にぃがね!ふぅ~ん・・・・そうなんだ、お姉ちゃん達って本当に兄にぃに愛されているんだね」
「さぁ侑希、散歩行ってらっしゃい、帰って来たら朝御飯にしようね」
タンポ、タンポ!いっちょ、いっまちゅぅ~!バイバイ~
俺は鎌を持ち、一輪車を押して侑希ちゃんと畑に行く事にしたのだ。
畑には、ナスやキュウリ、カボチャが実をつけて早く収穫して!と朝早くに実の中に糖分を蓄えて待って居てくれるのだ。
畑に着くと侑希ちゃんは、敷き藁の中に隠れているコオロギを見つけると捕まえようとしては追いかけ始めた。
アァアッ!むち見っけ見っけ、あっち、アッあぁつアァァアアむち、見っけ、キャッキャッキャッ、パァパオ~ジ、むち、見っけ!
一輪車に収穫した太く大きくなったキュウリとナス、硬い表皮の黄色のカボチャ数個を載せて侑希ちゃんと家に戻っていく。
梶ちゃんも美咲ちゃんも着替え終わって、俺達の帰りを待って居てくれた。
マァマ、やちゃい、いっぱい!むち、むち見っけ、いた、見っけ、いたぉ~、む~ちネッ、パァパ!
「アハハハいたね、コオロギさんがいっぱい、藁の下にいたね、侑希ちゃん捕まえようとしたんだよね、逃げられちゃったけど!」
コオョギたんピョ~ン、ピョ~ンい~ぱいピョ~ン、コオョギたん、いたぁ!
一生懸命にコオロギの跳ねている様子を梶ちゃんと美咲ちゃんに見せては同じように跳ねている侑希ちゃんの様子を俺は野菜を洗いながら面白く見ていた。
その後一緒に朝食を食べ、収穫した野菜を持って美咲ちゃんは修君の待って居る家に帰って行った。
一体美咲ちゃんは何しに来たんだろう、俺は梶ちゃんに何も聞かないでいた。
関矢君は何時も侑一さんに一目置いていると云うか、決してその一線を超えようとしないし入ってこないようにしている、だからこそ私も好きなんだけど・・・・でも、それを超える事が出来ないもどかしさがあるんです。
私や侑希と一緒に侑一さんも大事にしてくれているのは分かるけど、でも本当は「侑希よりもっと私を見て欲しいの」と思っている自分がいるのも確かなのです。
いつか迎えに来てくれるその日が来るのを待つと決めた私だけど、本当にその日が来るのだろうか?でも、もう決めた事だから侑希と二人で待ちましょうね、侑~希!
あぁあ、私何してんだろう!もっと自分に素直になれれば良いのに!
自分の気持ちを吐露できないもどかしさに悩む私が居ました。
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