第六十二話 スミレ会の企み(二)・・・・寂しさ






 美咲が泊まりに来てくれた事で喜んでいる侑希、一緒になって遊んでいるけどそろそろ関矢君が帰ってくる時間だわ。


 アッアァア、パァパオ~ジブゥブ、マァマ、パァパオ~ジブゥブバタンマァマ!


「はいはいはい、関矢君が帰って来たのね。ママ分かりましたよ、ゥンもう侑希はいつも関矢君が帰ってくるとママを呼ぶんだから、どうして帰ってくるのが分かるのよ?」


「ただいまぁ。梶ちゃん、侑希ちゃん帰ってきましたよぉ。あれっ今晩は美咲ちゃん来てたんだ、久しぶりだね。今晩泊って行くの?」


「お帰りなさい兄にぃ、今晩泊っていくんで宜しくお願いしますね。お姉ちゃんがさぁ泊まりに来いっていうから来ちゃったぁ。ねぇねぇ兄にぃ、お姉ちゃんと喧嘩した?」


「うぅん全然、何もないよ。至って普通だし・・・・仕事で何かあったのかな?」


(えぇっ、こっちが聞きたいよ、お姉ちゃんから電話があって泊りに来てって、其れでビールも買って来てなんて云うんだよ。だから喧嘩でもしたのかなぁって思ったの)


(喧嘩も何も無いよ、何時も怒られてるのは俺だし、昨夜も侑希ちゃんを早く寝かせないといけないからって怒られたしね)


「そこの二人、何をこそこそ話してるの、もうすぐご飯だからね。侑希もこっちに来なさい。関矢君はお風呂先に入るんでしょ、それと侑希も一緒に入れてくれると嬉しいなって・・だめぇ?」 


「良いよぉ、侑希ちゃんパパオ~ジと一緒にボチャ入ろうか、ボチャだぞぅネッ入ろう」


 マァマ、パァパオ~ジボチャいっと、バシャバシャバシャ、ボチャいっとボチャァ


 「はいはい分かりました、侑希は関矢君とお風呂に入りたいのね。ちょっと待っててね、今準備してあげるから、美咲ぃ、侑希の着替えお風呂場に持ってきてくれる~」 



 侑希ちゃんとお風呂に入る俺、いつもの様にお風呂場で遊んでは綺麗にして、そして脱衣場で髪を乾かして着替えさせてから梶ちゃん所に行かせる、もうこれが日課になっている。

 梶ちゃんはどうして美咲ちゃんを呼んだんだろう?まさかお見合いをまた内緒でするとか、それとも俺が梶ちゃんに何か悪い事をしたとか???いやいやそれは無い、絶対にない。


 

 今日は美咲ちゃんが居るせいか侑希ちゃんは上機嫌で、遊びながら食事をしている・・けれど、何故かウトウトし始めて、あちゃぁ此れは何時ものパタ~ンで梶ちゃんの顔を見るとやっぱり!


 「侑希ぃ、ほら食べるの、其れとも寝るのどっちなの?ママちゃんと食べて貰わないと困るんだけど」


 マンマ食べゅ、ゆちマンマ食べゅ、パァパオ~ジ、マンマ食べゅぅ!


 「はいはい、食べるのね、其れなら早く食べて頂戴、食べ終わったら美咲が買って来てくれたケーキがあるからね」


 マンマ食べゅ、パァパケーち食べゅよぅ、あ~んモグモグモグあ~ん、とぉ~だいケーキおいちぃとぅだい!



 今まで眠そうにしていた侑希ちゃんはケーキと聞いて目が覚めたようで、あっさりと晩ご飯を食べてしまった。

 大好きなケーキの力は偉大だ、あっさりと侑希ちゃんを手なずけてしまうのだから、女性が甘い物に目が無いのは頷ける気もする。



 「侑希ちゃん偉いね、もうご飯食べ終わったのぉ、もう少し待っててね、私達が食べ終わったらケーキ食べようねぇ」


「侑希ちゃんはケーキ大好きだもんね、皆が食べ終わったら、ママにケーキ出して貰おうね」


  マァマケーキ、たべゆぅょぅゆちケーキたべゅぅ!パァパ早チュー!



 あっと言う間に夕ご飯も終わり、ケーキも食べてすこぶる上機嫌の侑希ちゃん、さぁ此れから梶ちゃんとの戦いがまた始まるのだ。

 まずは第一ランドの歯磨きだけれど、これは保育園で行っているため然程難しい事ではないと云うけれど、いつもの様に遊びたい侑希ちゃんにとっては闘いになるのだ。

 


 「さぁ侑希、歯磨きクチュクチュペッ!だよ、ママと一緒に歯磨きしようね」


 やぁやクチュクチュやぁや、パァパクチュクチュいっちょ、パァパいっちょネッ、マァマない、プイッ


 

 アァアまた俺か、今日は知らん顔して美咲ちゃんと二人で聞こえないふりをしていると、甘えた声で俺を呼んでいる。



 パァアパオ~ジクチュクチュいっちょ、ドンドン

 


 えぇっドンドンって、梶ちゃんもこっちを見て怒っているような気もするけど、どうしたらいいの!



 「はぁいパァパオ~ジさ~ん、あなたの可愛い大好きな侑希さんが呼んでいますよぉ、聞こえますかぁ、聞こえましたら有希さんの所まで来てくださいね~!」


 「兄にぃ、お姉ちゃんの呼び方なに、あれって怒ってるの?、もしかして、これで私呼ばれたのぉ」

 

 「はいはいはい、今行きますよ、侑希ちゃんクチュクチュ・ペッ一緒にやろうね、ママと三人で一緒にね」


 「本当にもう侑希は毎日此れなんだから!ママとするのがそんなに嫌なの。関矢君に甘えてばかりで、関矢君も断って良いからね、侑希がちょっと甘えすぎなんだよね」


「まあまあ、俺で役に立つんならそれで良いよ、別に只一緒に歯を磨いてるだけなんだし、怒らないで上げて」


 「あらっ関矢君其れって変よ、侑希のママは私なんだからね、パパオ~ジさんに言われたくありませんよ」

 

「はぁいゴメンなさい、侑希ちゃんママの云う事はちゃんと聞こうね、そうじゃないと一緒にクチュクチュしてあげないよぉ」



 何て事がありながらも三人一緒に歯を磨いて、もうすぐ寝る時間で第二ラウンド開始になるのです。

 梶ちゃんが部屋に行って布団の準備が終わるとオムツも確認して、さぁて始まるかなぁ!



「侑希ぃ寝る時間だよぉ、さぁ美咲と関矢君に御休みなさい言っておいで、ママと寝んねしようね」


 やぁあ、やぁぅあ!ネンネ、パァパいっとぉ、ねぇえパァパ、パァパいこぅ、あっち



 そう言いながら俺の部屋に行くとベッドによじり上ろうとしている侑希ちゃん、梶ちゃんも美咲ちゃんもあきれ顔で見ているけれど、あぁあ今夜も寝るかぁ。



「パァパオ~ジさんあなたの可愛い彼女がお布団に入って寝たいって待ってますけどどうしますか?」


「なぁにお姉ちゃん、なんか厭らしく聞こえるんだけど、どうしたの?ねぇねぇ兄にぃ、侑希ちゃんと一緒に寝てるの?」


「いやぁ何というか、侑希ちゃんが一緒に寝たいっていうから、そのぉ寝たいのならまぁ良いかって思って、其れで最近一緒に寝てるんだよ」


「そうなのよ、侑希は関矢君と寝たいって言いだして、自分のお布団じゃなくて関矢君の部屋に行っちゃうのよ、本当に困ってんだから」


「まぁっそういう訳で、其れじゃ美咲ちゃんと梶ちゃん俺、もう寝るから!多分起きてこれないと思うのでお休み」



 そう言って、侑希ちゃんの待って居る俺の布団に行くけれど、後ろから冷たい視線なのかあきれている視線なのか分からないけれど感じています。


 本当は侑希ちゃんが寝たら起きて仕事とか、梶ちゃんと話をしたいのだけれど疲れているせいなのか、侑希ちゃんと一緒に朝まで起きないで寝てしまう俺なのでした。



「あぁあ今夜も関矢君は侑希と一緒に寝ちゃったぁ、本当に困りもんなんだから、少しは私の事も考えてよ」


「お姉ちゃん、私を呼んだのは何か用なの?それとも兄にぃが侑希ちゃんと一緒に寝ちゃうから??」


「なっ、何を言ってるの美咲は、関矢君が侑希と一緒に寝たからって呼ぶわけないじゃん。ちょっと時間が出来たから話をしたいなぁって・・・思っただけよ、別に呼んじゃいけないの」


「ははぁ~ん、もしかしてだけどお姉ちゃん、侑希ちゃんを兄にぃに取られて寂しいんじゃないの。侑希ちゃんは兄にぃが大好きだし本当は三人で一緒に寝たいんじゃないのかなぁ」


「だぁから、何でそうなるの!美咲、いい加減にしなさい。私は別に寂しくありませんよ、侑希が関矢君と一緒に寝てくれるので一人で寝て楽出来てるんだから、本当だよ」


「はいはいはい、分かりました。ムキにならなくて良いから!其れでは時間が出来たお姉さまと今夜は一緒にお酒でも飲みましょうね」


 そうなんです、私は侑希が自分の所から離れるなるなんて考えたことも無かったし、まして夫婦でも親子でもない関矢君と一緒に寝てるなんて、あの朝の満足したような顔を見た時に何か悲しくてと云うか侑希を取られたような寂しさがあったんです。


 其れを妹の美咲に見透かされるなんて、お母さんも同じだったのかなぁ?いつもお父さんと一緒に寝ていた私や美咲だったけど、お母さんの気持ちなんて考えた事なかった。



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