第六十話 スミレ会の企み(二)・・・・懐かしい再会
パァパオ~ジ、あぁっあっあっ、キャッキャッキャッ、マァママァマあっちあっちイコ!イコ、パァパあっち
「はいはい、侑希ちゃんあっちへ行きたいんだよね、ちょっと待ってね!梶ちゃんあっちだってさ」
「もう侑希はチョコマカと動くんだから、ちょっと待ちなさい。私だってお買い物したいんだからね」
しばらく歩いていると、遠くにどこかで見たような女性の顔が・・・・でも思い出せなくて、う~ん誰だろ?
「こんばんは、やっぱり関矢君と梶谷さんだった。二人はいつ結婚したの?確か、美由紀ちゃんは彼が交通事故に遭ったと云う話は聞いていたんだけど。其れに関矢君は東京へ出てから誰にも会っていなかったからちょっと私も久しぶりで自信なかった」
「えぇっ俺を知っている??あのぉもしかして間違えたら御免だけど、柴田・・さん?」
「華ちゃん久しぶりだね、いつ帰って来たの?あなたこそ結婚して千葉の方へ嫁いだって聞いてたけど。其れからだけどウッフン私達は結婚していないわよ。大家さんと間借り人の関係ですから、家の娘が関矢君に懐いてるから皆に間違えられてるけどねウフフフ」
「へぇそうなんだ、あまりに仲が良いから結婚したと思ってた。其れじゃ関矢君は未だ独身と言う事なんだフゥ~ン。実は私もバツイチになっちゃったのよ、でも、子供はあっちに取られちゃったけどね。結婚して子供も出来たのに色々あってさぁ、別れちゃったウフフフ。其れで実家にも帰れないし、今は一人でアパート暮らしなの、な~んか最低よね」
「そんな事ないわよ、誰にだって事情はあるし、そうなんだ。私だって同じようなものヨ、私はバツイチじゃないけどと云うか結婚はしていないの。その前に彼が亡くなっちゃったから!未婚の母だし周りからいろいろ言われたけど、この子がいたから頑張れただけで、昨年の夏に偶然関矢君に会っていなければこの子も産む事が出来なかったかもね」
「ふ~んそうなんだ、結婚している訳じゃないんだぁ。其れじゃ関矢君は空いている訳だから、私も狙っちゃおうかなぁ?どう私と付き合わないウフフフ」
「いやっ其れは、そのぉ・・・俺は良いから!あぁっ侑希ちゃん駄目だよ、ちょっと待ってね」
「アハハハ冗談だよ、美由紀ちゃんに怒られちゃうわよね。だって学生の時からずっとお互いに好きだったんでしょ、いつも二人してどちらかが居ない時には探してたもんね。大人になってもこうして居られるんだから幸せになってよ。応援するからさぁ!でも、私みたいにならないでよね」
俺もそうだけど、梶ちゃんも、柴田さんも其々いろんな意味で苦労していると云うか、きっと誰もが人に言えない苦労や体験をしているのだろうな。
だからこうして一人でも賑やかな場所に来て何かを探して、心の中の何かを置きに、いや捨てに来ているのかも知れない!気分転換とはその場所に何かを捨て去り新しい何かを取り込む行為なのかもしれない。
俺の場合は仕事に逃げていたと云うか、ただ我武者羅に仕事だけを見つめて毎日を過ごしていた。
慰謝料として払うお金の為、そして頭の中に浮かんでは消える黒沢のあの笑顔を見る事が辛かった、疲れ果てると頭の中には何も浮かぶ事が無かったから、其れでも寝汗を掻かない日は無かった。
「柴田さん、変わったね。何と言うのかなぁ?無理やり笑っていたような、笑顔が作り笑いなような感じがした。でも自分のお腹を痛めたお子さんを手放してしまったなんて、よっぽど辛かったんじゃないのかなぁ」
「そうだね、お腹を痛めて産んだ子を自分の手から離すなんて私には出来ない、華ちゃん大変だったと思う。多分だけど、子供に会いたくて逢いたくてしょうがないと思うよ、一番辛い事だもの!」
俺と梶ちゃんは結婚はしていないけれど、家族なのだと云う思いはある、でもいつかは別れが来るのかも知れない。
まさか、柴田さんに此処で会えるなんて思いもしなかった、私は噂で聞いていたけれどご主人の家族と一緒に生活をしていたのにご主人を捨てて他の男の人に走った話を、理由はご主人の暴力にあると聞いていたけれど子供の親権を取れなかった話は初めて聞いたのです。
私にはとても信じられない話だったし、でも、あの少し暗い柴田さんの顔を見て私は関矢君に再会した時の事を思い出しました。
多少自暴自棄気味だったあの頃の私はお腹の侑希を少し責めたことも有ったし、一人で育てられるのかな?って不安も有りました。
学生時代にいつも困っていた時に助けてくれたのが関矢君だったけど、まさか社会人になって身重の私が困っている時にまた現れてくれるなんて思っていなかった事だったの。
それが今、学生時代のように今こうして居られるなんて!あの時、彼を待つ事が出来ていたならば・・・なんて思ったことも有ったけれど、あの時はあの時よね、今は現実の世界で生きていかなければならないのですから。
私には関矢君との出会いがあって母娘共々助けられてもらってばかりだけれど、もし侑希が居なくなったら・・・柴田さんの気持ちも分かるような気がしています。
「あらっ早かったわね、もう少し遊んできても良かったのに。あっそうね侑希ちゃんが居たら遊べないわね、今度私達に侑希ちゃん預けてお二人で遊んできたら、出来るだけ協力はするわよウフフフ」
「急に何を言い出すんですか、別に気を使わなく良いですよ。いたって普通で俺達は今まで通りなんですから、それに俺が良くても梶ちゃんは・・・ねぇ梶ちゃん!」
「ウッゥン、そっそうですよ、関矢君の言う通りですから大丈夫ですよ、皆さん考えすぎですから、私達は普通に大家さんと借主だけの関係なんです」
「そうよね、知ってるわよそれくらいは((笑))。だから心配してるのよあなた達を、(またお見合いされたら今度こそ浩史君駄目になっちゃいそうだからね)早く安心させてね」
「裕子さん、その話は(関矢君に話していないんですから)終わった事ですからもう何も有りませんのでお願いします」
「あらぁ、話してないの、何なら私から話してあげましょうか、ウフフ余計な事よね。でも感心したわ、美由紀ちゃんは男を見る目があるって事よ、浩史君の事お願いね」
俺の知らない事は沢山あるようだけれど、でも今こうして居られるだけでも俺にとっては嬉しい事だと思っている。
柴田さんのあの作り笑いの下に悲しい顔が有るのだろうな、でもそれは彼女一人でしか今は背負う事が出来ないはず、いつか俺の時の用に側にいて心を暖めてくれる人が出来る事を願うしかない。
とは言え、梶ちゃん母娘だっていつまでも側に居てくれるとは限らない訳で・・・アァアア口に出して言いたいけど、チキンの俺には!!!
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