第五十九話 スミレ会の企み(二)・・・・二回目の夏祭り




「ねぇ浩史君、お盆の時には海外出張なんて無いよね。また今年も侑希ちゃん達連れて市内の盆踊り見て来れば、私たち兄姉が留守番してやるから行ってくれば、ねぇ兄さん」


「おぅ、そうだな。お盆の時にしか叔母さん達と話が出来ねぇからお前たちは行ってきて良いぞ、留守番してやっから大丈夫だ。今年は暑そうだから、三人で浴衣でも着て行けば良いだろ」


 なんて話がまだお祭り前だと云うのに出ていて、一体何の?純姉さんや秀樹兄さんは、また何か企みでもあるんじゃないの!まさかだけど東京の母さん達が来たりするんじゃないよね?なんて聞いてみたけど別に他意はなかったようだった。


 昨年は美咲ちゃん達と一緒に市内の天神囃子や神輿などを見て楽しんだけれど、まさかこの日から純姉さんや秀樹兄さん達の企みと云うか俺たち二人・・いや三人を一緒させる準備が始まったと云う事を後で知ったのだった。

 何も知らないで夜祭を楽しんできた俺達、戻ってきた時には純姉さん達は既にいなくて秀樹兄さんとお義姉さん達だけで・・・策略は既に始まっていた。



「実は裕子お義姉さんにお願いがあんのよ、浩史君と美由紀ちゃんの事なんだけどさぁ。その前に美由紀ちゃんの事なんだけど、実は春にお見合いしたのよぉ!と云うより私がしなさいって薦めたんだけどね」


「えっ何?美由紀ちゃんがお見合いしたの、あらぁそれは穏やかじゃないわね。其れで純ちゃんが薦めたってどういう事なの」


「美由紀ちゃんが今度移動した部署がさぁ、少子化対策課でぇ。ほら、私がお見合いして隆さんと知り合ったでしょう、あのお見合いを主催している部署なのよ。其れで上司から強制的に参加させられたって言うので、いい機会だから他の男で良い人が居たら話を進めて見ればって、其れでお見合いしたのよ」


「へぇ、其れでお見合いしたんだ。其れでどうなったの、良い男見つかったの?」


「興味を持ってくれた人が居たみたいだけど、二回デートして侑希ちゃんに合わせて見たら上手く行かなかったみたいで、其れでお断りしたんだって」


「ふ~ん、美由紀ちゃんもやるわねぇ。其れで断ったんだぁ、まぁ侑希ちゃんを可愛がってそして美由紀さんを愛してくれる人じゃないとね。子供みたいな男もいるけどそれじゃ任せられないわよね。そういった意味では浩史君は大丈夫だけど、でも関矢家の特徴である自分の想いを隠して人に尽くすのはあまり頂けないわ。純ちゃんは女だからそう言った所は見られないけど、お義父さんも家の人も浩史君もそういう所があるよね」


「そうなのよ、家の男たちはそう言った所が全部ダメ。何というかカッコつけちゃって、見栄を張っているような所があんのよ嫌んなっちゃう。私達の事なんか考えていない所があるしね、でもそれは隆さんも同じよ」


「其れでお見合いした後に美由紀ちゃんなんて言ってたの?まさかもう結婚しないなんて言ってた?」


「それがさぁ違うの、待つことにしたんだって。誰を待ってるのかは言わなかったんだけど、でも侑希ちゃんと二人で迎えに来てくれる迄待つことにしたんだってさ。それで二人を良く知っている私としては何とかしてあげなくっちゃって思ってんのよ!お義姉さんにも協力してもらいたいなぁって話なんだけど」


「そうなの、美由紀ちゃん待つことにしたの!へぇ、それでこそ美由紀ちゃんよね。其れは皆で何とかしてあげなくちゃいけないわよね。それで私達は何をやればいいの?」


「スミレ会でも話が出て、其れでこの間のスミレ会の会合で着物の着付けをやったのよぉ。その時に貸衣装屋さんに話は前から付けてたんだけど、花嫁衣裳の白無垢を持ってきてもらったんだわぁ。私が化粧と髪を結ってあげて美由紀ちゃんに着せたら、涙流されちゃって・・・グスッグスッダメだ思い出したら涙が出てきちゃった。集まってる皆は美由紀ちゃんのこと知ってるからさ皆もつられて涙流しちゃってさぁ、それでやっぱりみんなで協力して何とかしてあげようと云う事になって、次回はウェディングドレスを子供達と一緒に着ようと云う事で解散したんだけどね」


「そうかぁ、其れで着物の採寸はしてあんのね、それじゃ今度は侑希ちゃんもドレスも着させて採寸しないと。其れで何時を狙おうかしらって話ね。そうねぇ、それなら一番人が集まりやすい日はお義父さんの三回忌だから、其の日を神主さんに話してそのまま結婚式みたいにしちゃえば良いんじゃない。

 大丈夫、お義父さんだって怒んないわよ。浩ちゃん達の事きっと待って居ると思うから、秀樹さん良いわよね。東京のお父さん達にも参列してもらうんでしょうから、衣装も黒ネクタイから白ネクタイに変えるだけだし、地区の連の人達にも協力してもらって、庭にテント二つでも張って集会場にあるテーブルと椅子を借りて並べれば簡単に会場も出来るでしょう」


「おうっ、良いんじゃねぇか!親父だって二人の事何とかしてやりてぇって思ってるうちにあの世に行っちまったんだから、ついでに結婚式見せてやれるんだし一石二鳥で良いだろう。遠くの伯父さん達には俺から話付けておくぞ、其れと浩史の会社の方にもな」


「ウワァっさすが兄さんとお義姉さん、纏めるのが早いわねぇ。そうだよね、其れで行きましょうか!ちょっと待ってね、秋江おばさんと佐川田さんにちょこっと来てもらうから」


俺達の居ない時間にスミレ会の主だったメンバーが集まって、俺達の事を勝手にと云うか気が気で成らないみたいで進行させていたんです。


純姉さんに呼ばれた秋江叔母さんや佐川田さん、そして堂ノ前の金子さんや後藤さん等も集まっていたようでした。


「それで、小父さんの三回忌に執り行うと云う事で先ほど神主さんにもお願いしましたが、良い返事・・・・・頂けました((笑))是非やらして欲しいって、小父さんも喜ぶだろうからって言ってましたよ」


「良かったぁ、それじゃそう言う事であの二人を何とか小父さんの三回忌までに心を固めさせて結婚できる様にして行きましょう。其れと此の事はあの二人には内緒と云う事で子供達にも秘密にしておきましょうね」


「これで美由紀さんの泣いた顔を見なくて済むわね、今度は嬉し涙を流して欲しいから私達でしっかり応援してやりましょう」


 本当はお節介だけどね((笑))


 本当にそうだけど、見ていて歯痒いんだわあの二人はさぁ。


 本当だよ、お互いに好きなのに言えないんだから、まったく困ったもんだわ!((笑))




 なんて話が出来上がっているとは知らずに俺達は、ゆっくりと街中を散歩していました。

 昨年は抱っこして散策をしていたけれど、今年は自分の足で歩きたい様で、チョコチョコと歩いては止まり俺達を呼んでいるのです。


キュッキュッ パァパ!イコ、あっちイコ、パァパ、マァマあっち!キュスゥキュスゥキュス


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