第五十六話 スミレ会の企み(一)・・・・お 盆




 やっと梅雨が明け、暑い夏の日差しがこれでもかと降り注ぐ毎日、俺も会社でのエコ・スマートプロジェクトの一環で太陽光発電と暮らす街、ミニ水力発電と暮らす街、バイオマスエネルギーと共に暮らす街づくりなど、様々な地域環境に合わせた自然エネルギーや再生エネルギーの活用を利用しての街創り、そして町の選定などをチームメンバーと共に探しては市町村との会合へ顔を出しては説明を続けている。


 テストプラントとして三〇戸、もしくは五〇戸~一〇〇戸等の小さな街創りを行い検証を重ねていく、これは日本国内だけではなくエコ・スマート先進国のヨーロッパなどでも技術開発と共に住民からの意見を吸収しながら新たなインフラ構築をしていくと云うもので、黒沢社長の念願の構想実現なのだ。

 ただ、黒沢社長も任期を設けての社長就任だったとの噂もあり、俺としても何とか成功に納めたいと必死に頑張っているつもりなのだが市町村の壁は厚い。



 連日の暑さの中で梶ちゃんも新しい部署でと云うか・・・・何をしているのか俺には分からないけれど、其れでも何とか企画内での仕事に追われていると聞いている、何か大変そう。

 侑希ちゃんもまた最近水遊びに面白さを見出したようで、保育園でも水遊びをして喜んでいるとか、家に帰って来ても遊びたいと思っているようだ。


 土曜日朝早くから畑の草を取り、実った野菜を持って家に戻ると侑希ちゃんが待って居てくれて、暑い日差しの下で遊ぶのに丁度いいだろうと健達・兄妹が使っていたプールを出して作り始めると喜んで駆けてきた。


アァア?パァパ、パァパ!アッアッ、バンバンダァコ、パァパ?バンバン、ダァコ


 庭に茣蓙を敷いてその上にプールを膨らませている俺の周りを、邪魔をしているのか其れとも早く入りたいのかウロチョロしては抱っこを欲しがる。


「侑希ちゃんもう少しだからねぇ、お昼ご飯食べ終わったらいっぱい遊べるからそれまでは良い子で居ようね」


 バシャ、バシャ、プー・バシャ、パァパオ~ジ、バシャ・プ~!バ~シャ


「侑希ぃ何処ぉ~、あぁ関矢君プール作ったんだぁ。侑希、入って良いの?侑希良いなぁプール、でも、水入れたばかりだと冷たいからお昼食べてからだね」


 侑希ちゃんも梶ちゃんも喜んでくれてたようで俺としては嬉しかったけど、梶ちゃんの水着姿をちょっと見たいような・・・下心も出ている俺だった


「関矢君どうしたの、私の顔に何か付いてる?変なの。侑希、お昼食べたらプールで遊んで、其れからお昼寝だね」


 キャッキャキャ、ブゥバシャ・バシャ・バシャ、キャッキャッパァパ、パァパ・バシャアァアァ!マァマ、バシャ、バ~シャキャッキャキャ


 俺も梶ちゃんも短パンに履き替えて、椅子をプールの側に置いて足湯ならぬ足水で、侑希ちゃんと一緒に水遊びをしていた。


 伯父さんが家の前を通って、俺達を見ると笑いながら一言掛けて行った。


 おぅ、良いなぁ三人で水遊びかぁ。いつも仲が良いなぁ二人は!侑希ちゃんも裸ん坊で、日焼けに注意しないと後が大変だぞ。


「やばいかも!私と同じで日焼け、後で大変かも知れない?どうしよう」


「あははは、そんなに気にしなくても良いんじゃないの、三〇分程度で上げればそんなに日焼けしないと思うよ、心配なら馬油があるから上がったらすぐに塗ってあげると良いよ、あれ火傷に効果があるし、汗疹にも良いんだから」


 侑希ちゃんはわずか三〇分でプールから出て全身に馬油を塗って土間で三人で川の字になって昼寝をすることにした。

 あれ、此れって昨年も同じように寝た記憶が、そうだあの時も・・・侑希ちゃんが川畑さんに認めて貰って初めてお泊りした後に一緒にこうして昼寝したんだ。


 あぁあヤバいぞ!また誰か来たら違った意味でまた誤解されて仕舞うかも!!!



この時には誰も来なくてホッとした俺が、ゥンッ?何でホッとしてんだ。何も悪い事なんてしてないぞ、って誰に言ってんだろう!



 八月に入り、お盆前の準備として例年のごとくお墓掃除に、秋江叔母さんや伯父さんがリヤカーを引いて迎えに来て、遊びたがっていた侑希ちゃんにお留守番をお願いして俺は山の中のお墓掃除に行く事になった。

 この地区のお墓は山の中にあるので、当然ながら水はないため、リヤカーに水を積んで運んでいく。


 耕運機で行っても良いのだが、何故かどの地区でもリヤカーを使用して一生懸命暑いのに辛い思いをして運んでいるのだ。

 頭に手ぬぐいの鉢巻きをしてお墓までの道程の草を刈り、墓石の周りの草を抜いて花器と墓石を洗って、お線香をあげてやっと掃除が終わった。


「ねぇ浩ちゃん、、浩ちゃんは美由紀ちゃんの事どうするつもりなの?美由紀ちゃんの事大好きなんでしょ、もう侑希ちゃんのパパのお墓参りも許されたんだから、気兼ねする事ないんじゃないの」


「叔母さん、何急に言い出すの?べっ別に美由紀ちゃんて、そのぉかっ梶ちゃんの事が好きかって言われても、嫌いじゃないけどぉ人前で言えないよぉ」


「人前で言えないって、やっぱり好きなんじゃない。其れ、本人に言ってあげないの、伯父さんや叔母さんの前で言えるんだったら今度は本人の前で言ってあげなよ」


「そうだぞ浩史、浩介の前で言えんなら美由紀ちゃんに言ってやれば良いんだ、何時までも待たせると、この間みたいにお見合いに行かされちまうぞ」


「えっ何?お見合いって、何時の話?其れ、俺は聞いていないんだけど、誰がお見合いしたって」


「なぁんだ浩史、知らなかったのかぁ!俺、余計なこと言っちまったなぁ。今のは聞かなかった事にしてくれ、俺が悪かった」


「いやっ聞かなかったことにって言われても、其れって誰の話なの、本当に梶ちゃんお見合いしたの?」


「なぁんだ、浩ちゃんその話聞きたいの!其れヤキモチじゃないの?大丈夫だよ。美由紀ちゃんは仕事で参加しただけで、交際を申し込んだ人が何人かいたらしいけどちゃんと断ったと云ってたから。今は誰も付き合って居る人はいないってさぁ、それに私には待ってる人がいるから迎えに来てくれるまで待つことにしたんだってさぁ。其れって誰のことを言ってるのかなぁ?って話だよ」


「浩史、そこ迄言われてんだからお前は腹を括んねぇとな。まっ、急ぐ必要もねぇけども、お前も関矢家の一人なんだから男を見せなきゃ成んねだろうな」


 皆にそこ迄言われても、俺の心の中ではハッキリしない所もあって、俺の優柔不断さが今になって忌々しく思えた。

 親父、俺はどうしたらいいの?お袋とどうやって結婚したの教えてくれよう、頼む!ってお墓に向かって話しても返事は無い・・・どうする俺。



 もうすぐお盆、梶ちゃん達も実家へそして侑一さんのお墓へと手を合わせに行く事になっている。

 侑一さんには、最近たくさんの言葉を覚えた事や嘘泣きしたりしている事など沢山報告することが有るだろう。


 高畑家では和子さんがもうすぐ出産するとの話は聞いていたから、梶ちゃんも子育て先輩として役に立つ????話をするのかなぁ。

 どちらかと言うと、俺の方が子育てしているような・・違うか((笑))俺は只甘やかしているだけだから子育ては梶ちゃん一人だ。


 そう言えば、伯父さんが話していたお見合いって?梶ちゃんの事なのか?俺はそれ以上聞けなかったし、梶ちゃんからも何も聞いていない。

 本当なんだろうか?確かに俺達は同居人だし恋人でもないし、だけど、だけどアァアいったい如何したらたら良いんだろう。


 







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