第五十三話 二人の距離の違い・・・・・歯痒さ
梶ちゃんがお見合いをしていたなんてことも知らない俺、あの日、純姉さんも梶ちゃんも俺の顔を見てただ笑っていただけだった。
美咲ちゃんは只呆れた顔をしていたけれど、何で???俺、何か悪いことした!
「ねぇお姉ちゃん本当にそれで良いの、兄にぃの気持ちは聞かないの?だってそれじゃ何時になるか分かんないじゃん。私は知ってるよ、兄にぃの気持ち・・・・エヘヘヘ教えてあげようかぁ!」
「美咲、余計事言わなくて良いから!私は関矢君の口から聞きたいし、言ってくれるまで待つ事にしたの。だって、私は待てなかったんだから、其れに侑一さんだってきっと許してくれると思うから、・・・多分だけど」
「そうだね、美咲ちゃんも私と一緒に美由紀ちゃんの事見守ってあげよう。其れが一番だよ。焦る事は無いし、この二人の鈍感は今始まった事じゃないでしょ」
「あははは、そうですね。兄にぃとお姉ちゃんの鈍さは今始まった訳じゃないですもんね、本当に手が掛かる姉なんですから」
「何よ、美咲迄!本当にもう純さんもですよ、あまり私を揶揄わないで下さいね」
何で彼何だろう?今迄思っても居なかったけれどそう言えば高校の時にも、田畑君や増田君達と一緒に居ても、彼らも最終的には「関矢、お前はどう思う?」なんでなんだろう。
何時も殆ど喋らないのに、偶に喋るのは皆が判断に困っている時に相談にすると何時も的確に判断してくれる????
でも彼は私の気持ちも知っていたはずなのに、きちんとあの時には答えてくれなかったし?うぅ~ん違う、私が彼に応えようとしていなかったのかも知れない、でも今は、関矢君に応えたい、応えて貰いたいと思っているのです。
アァア、私の思いは彼に届くのかしら?って思っても私の片思いだし、何時もの様に関矢君に感謝して、侑希と一緒に楽しく毎日が過ごせればいいの!って思っている私なのでした。
「侑希ちゃん見てごらん、カエルさんいるよ。ピョンピョンって」
あぁっ、パァパ、あっ、あっあっピョンピョン、マァマ、ピョンピョン
「はいはい居たねぇ、カエルが、これは何ガエルなのかなぁ?侑希より小っちゃいね」
キュッキュッパァパ、ニィツ!タッタッマァマ、アッチアッチ!タッキュッキュッ
久しぶりに三人で散歩をしている俺達だけど、侑希ちゃんは相変わらずに音の出る靴を履いて喜んでいる。
大豆畑、と云うか今は枝豆畑と言うらしいけれど、その間の農道をゆっくりと歩いている?と云うより蟻を見つけては止まり、虫を見つけては止まりの繰り返しで一向に前には進んでいかない。
枝豆の葉の下にアオガエルの小さいのを見つけたので侑希ちゃんに教えたけれど、泣き出すかも??と思いきや興味津々でカエルの真似をして可愛く跳ねている。
オムツを付けた重そうなお尻がピョンピョンと跳ねては石に転びそうになる。
慌てて二人して手を差し出した為に手が触れ、俺も梶ちゃんも慌てて手を引っ込めてしまった。
「あっゴメン、侑希ちゃんが転びそうだったから!ワザとじゃないからね」
「うぅん、こっちこそゴメンなさい。侑希を助けようとしてくれたんだよね、有難う」
オゥ!ありゃ浩ちゃん達だろ、今日は三人で散歩かぁ?おい見ろよあの二人、何やってんだぁ今でも手ぇ繋げぇのか?アァアア、ちょっと手が触れただけで離れちまって・・なぁんか見てるこっちが恥ずかしくなるわなぁ。
なぁ母ちゃん、俺達なんかいつでも手ぇ握れんのになぁ!バシッ痛ぇっ、何で叩くんだよ!
何、馬鹿なこと言ってんの父ちゃん。もう、そう言って私の手を握んの止めなよ、いい歳して。其れより早く追加の枝豆取んだから。
美由紀ちゃ~ん、散歩か~い。枝豆持って行きなぁ。あんた達、本当にいつも仲が良いよねぇ。何で結婚しないのぉ?もう良いんじゃねぇのぉ、嫁に貰っちまいなよ。
「なに言ってんのぉ!おじさん達、私達の事は良いですから、其れより枝豆頂いて良いんですか?侑希が大好きなんですよ、小父さん所の枝豆」
おぅ、そう言ってくれと嬉しくなるねぇ!侑希ちゃん小父さんとこの枝豆大好きかい。いっぱい持って行きなぁ、だが喉に詰まらせねぇように小さく砕いてもらいなよ。
「そうなんですよねぇ、小さくして上げないといけないんですが侑希は大きいの食べたがって、口の中に入れては食べられないと分かるとみんな関矢君の口の中に入れちゃうんですよ」
アハハはそれじゃ仕方ねぇな、半分くらいにしてやれば大丈夫だぞ、浩ちゃんもきちんとやってあげなよ。
「俺はちゃんとやってあげてますよ、枝豆が美味しいから侑希ちゃんの手が早すぎるんです、ねぇ侑希ちゃん」
マンマお~ち!マンマお~ち!パチパチパチパチ!キャッキャッキャッ
アァア、この地区の七不思議だわなぁ、なんであの二人は結婚しねぇんだ。
何とかなんねぇのかな!おい、美由紀ちゃんの気持ちはどうなんだぁ、スミレ会で何とかしてやれねぇか
そうだねぇ、浩ちゃんの気持ちは秋江さんから聞いてっからよく分かるんだけど、本当は美由紀ちゃんを好きでしょうがないみたいでさぁ、理由は分かんないけど何か吹っ切れない所がある見たいだよ。
そうか、やっぱりなぁ!でも何とかしてやんねぇと、侑希ちゃんが可哀想だぞぉ
なんて話が周りの家で出ているなんて、俺達は其れ等を知らなかった。
梅雨がもうすぐ開けるのではと期待しつつも毎日が忙しく、侑希ちゃんも汗疹と戦っている。
保育園には毎日元気に通っているし今のところ大きな病気も出ていないので、梶ちゃんも少し楽が出来ているようだった。
昔はこの地区は大雨毎に橋が流されて、陸の孤島になっていたと親父が話していたが、道路が整備され新しく鉄筋の大きな永久橋が作られた御陰で生活が楽になった。
其れでも都会のように歩いて数分でコンビニがあるのかというとそれは無理な願いであり、車で数分はこの地区では当たり前の移動時間なのだ。
高畑さんが話していたけれど、子供が病気になれば街中の病院まで自分の車で移動しなければいけないし、もし家族が病気になって救急車を呼んでも直ぐには来ない、来ても隣の町までの移動時間を要してしまうのだ。
だから、子供の病気には誰もが敏感に反応してしまう、まして侑希ちゃんが昨年罹患した自家中毒には危険な症状が出る時も有るんですよ!って聞かされた時には心臓が止まる思いがした。
親になると云うのは自分だけの生活とは違い子供の身体をも考えて生活をして行かなければならないし、もしかしたら親って云うのは我が子に自由が奪われてしまった存在???いやちょっと違うか、我が子と一緒に新しい生活を協創していく関係なのかもしれない。
共に泣いて笑って、悔しがって怒って哀しんで、そして楽しんで一緒に時間を過ごし、新しい生活を創造していく関係なのではないだろうか。
だから血脈が無くても一緒に生活している時間が長ければ協創時間が長いと云う事で、其れを我々は家族と呼んでいるのだと俺は思っている。
俺と東京の父さん達、そして今の侑希ちゃんとの関係などはたとえ血は繋がって居なくても家族だと俺は思っているし、多分これからも家族を創っていくのだろう。
美由紀さん、おじさんと一緒にこの家に住んでもうどのくらいになるの?、二人は学生の時に付き会っていたんでしょ、何で分かれたの?私たち其のこと知りたいなぁって。
「なぁに、突然!それ英語で話す勉強なの?それともあなた達のお母さんに何か言われたのかなぁ?」
エヘヘヘ、敵わないなぁ美由紀さんには。実はさぁ美由紀さん、この間お見合いしたんでしょ、おじさんに内緒で。参加者の一人が私ん家の親戚の人だったんだよ。お母ちゃん其れ聞いてビックリしてたよ、おじさんがいるのに何で?って。
「えぇっ、あの時のメンバーに親戚の人居たの?実はさぁ、今度の部署の課長に言われて仕方なく参加してみたのよ。ほら侑希がいるでしょ、誰がこんな子持ちになんて思っていたから。でも、やっぱり私には合わない人ばかりでした。だから誰とも付き合って居ませんよ、お母さんにそう言っておいて。ウフフフ、私には決めた人がいるから大丈夫です、心配しないでください!ってね」
アァアやっぱり、それおじさんでしょう。最近またイチャイチャ光線が二人とも出てるから、家のお父ちゃんが美由紀さん達が散歩してるのを見て、なんであの二人手を繋がないんだって。それでお母ちゃんの手を握ったらお父ちゃん、お母ちゃんに「馬鹿じゃないの」って叩かれたんだってさ、ちょっと笑っちゃうでしょ。
そうなんだぁ!美由紀さん、おじさんの事決めたんだぁ。其れ、もうおじさんに話したのぉ?
「うぅうん、言わないわよ。私が決めただけだから・・・それに関矢君じゃなくて違う人かも、ウフフフ!でも、待つことにしたのよ、何時、結婚できるか分からないけど!そう決めたら少し気持ちが楽になったかなぁ、貴方達、絶対に誰にもこの事は言わないでネ、お母さんにもだよ。私にはあなた達ともこうして居られることが嬉しいのよ、だからこの時間を大切にしたいしこれからも続けばいいなぁって、だからお願いだからね」
分かってるよ、美由紀さんの話は誰にも言わないから、ねぇみんな内緒にしておこうね。でも、美由紀さんには幸せになって欲しいんだよ、私達はみんなそう思ってんだから。本当だよ、幸せになってよね。
でも、おじさんって女性に関しては奥手そうだよね?
うん、そうだよね!私達、年頃の女子高生がを目の前にしても全く関心示さないんだもの、少しは気にして欲しいよねぇ。何時も侑希ちゃんか美由紀さんの事ばっかしなんだから、私達って男性に魅力無いのかなぁ?
「アハハハハ、其れは関矢君が可哀想だよ、彼はねぇ、誰にでも優しいし、ちゃんと全員に優しさを分けているはずだよ。其れは私達母娘にも同じようにね、だけど少し物足りなさが有るんだよねぇ!」
あぁああ其れって、おじさんを独り占めしたいって心の表れなんじゃないんですかぁ
「えぇっ違うよ、違う!違うからぁ、もう敵わないなぁ、あなた達にはウフフフフ」
なんて会話がされてたようだけど、部屋の奥にいる俺には聞こえなかったし、、まさか俺が彼女たちの話のタネになっているなんて思いもしなかった。
女性は怖い、女性に鈍感な俺でも最近そのことが分かる様になって来たみたいで「お願い侑希ちゃん、俺だけは嫌いにならないでね」最近、特に思うようになった。
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