第五十二話 二人の距離の違い・・・・・集団お見合い
関矢君は中旬に一旦帰って来たのですがまた下旬から昨年同様に二週間ほど海外視察があると云う事で、肝心な事を話せずに、私はゴールデンウイーク前の日曜日に東山研修所での集団お見合いに参加したのです。
「皆さん初めまして、今回初めて参加しました梶谷美由紀・三十三歳です。バツイチでは有りませんが1歳になる娘がいます。只今、市役所に勤務していますので宜しくお願い致します・・・・・・毎日が子育てと仕事に追われていますが楽しい日々を過ごしています」
一人二分間という短い時間内で自己紹介をさせて頂き、子持ちである事など隠さずに言えたのではないでしょうか?半信半疑であると同時に「どうせ子持ちだから誰も来ないわ」という安心感がありました。
あっと言う間に参加者八人の男性の会話が終わり、皆して東山公園へ移動してフリートークの時間が設けられ、其々の男性から子供の事や仕事のこと等話し掛けられてしまいました。
あのぉ、宜しかったら少しお話させて頂けないでしょうか。生畑目と申しますが36歳で電気工事をしています・・・実はバツイチでそのぉ子供はいません、と云うか妻に子供を取られてしまいましたので、何故バツイチでないのにお子さんがいるんですか?
すみません、私もお話させて頂けないでしょうか!綿引です42歳です。いまだに結婚したことは有りません、農業しています。ご両親は一緒に住んでいますか?お二人だけの生活をしてるのでしょうか?
私にとっては此れと云った気になった男性は見つからなかったのですが、男性から交際してみたい方への申し込み時間が来た時に二人の男性から申し込みをされてしまい、戸惑いましたが「取り敢えず時間を頂きまして、違う場所でお茶でも飲みませんか」と言われてしまい、お受けしたのでした。
関矢君にこの人達見たいな強引さが有ればいいのになぁ、とも思ってみたのですが彼は今頃海外視察中のはずで、私の心の声など聞こえるはずは有りません。
取り敢えず、後日連休明けに其々もう一度だけお茶を飲みながらお互いの事について知りましょうと云う事になり、その日はそのまま家に帰ってきました。
家で美咲と純さんが侑希の御守をしていくれて(どうだったイイ男居たの?)って、一応また会う予定にはなってしまったけれど、何と言うかあまり気乗りしていない私が居るのです。
連休が明けて関矢君が東京から戻ってきた時に何故か安心したのと、少し後ろめたさがある私が居ました。
侑希は関矢君にベッタリ金魚の糞状態で、どこに行くにもくっ付いてい離れようとはしない為、困ってしまいました。
朝の保育園への送りが大変になってしまいましたが、夜に車の音がすると椅子の上に立ち上がって玄関を指さす侑希が居るのです。
キャッキャキャ、ブゥブゥ、マァマ、パァパ、ブゥブ、パァパパァアパ。
「侑希ちゃん!ただいまぁ。食事中だったの、さぁ座って食事しちゃおうね。俺、先にお風呂入って来ちゃうからねぇ」
パァパ、ボッチャ、パァパ、ボチャ、侑希ボチャ!ボチャ!パァパ、侑希ボチャ!
「ダメだって、侑希は今ご飯でしょ!終わってからネッ、ママと一緒に入ろ」
「はははは、分かったよ侑希ちゃん。手と顔だけ洗って来るから、食事終わったらお風呂に一緒に入ろうね」
一人で玩具で遊んでいても、関矢君が立ち上がると急いで駆け寄ってはズボンを握りしめて泣きそうな顔をして離れようとしないのです。
パァパパァパ、ダァダァッ!ダァダァッ!ナイナイ、ナイナイ!
「侑希ちゃん俺はどこにも行かないよ、トイレに行きたいだけだからね大丈夫だよ」
パァパちっこ?、パァパちっこ?いっと、ち~こ、いっと!
侑希は関谷君がトイレに行こうとしているのに離れたくないようで、一緒に中に入ろうとして関矢君を困らせているのでした。
こんな日々を過ごしているのに、私は見合いをして良かったのだろうか?でも、いずれは関矢君との別れは来るかも知れない?という不安が有るのもまた事実なのです。
結局、お見合いをした事は話せずにいる私でしたが、一人目の男性との二回目のデートの日も近づいて、純さんに相談したところ「あまり考えない事ね」って。
「侑希ちゃんを連れて行って様子を見て見れば、何でもそうだけれど最初が肝心よ。もし侑希ちゃんを見てくれるような人であればまた会う約束をすれば良いだけだし、不安があるようならちゃんと断れば良いだけだから大丈夫よ、私は隆さんともう一人の人が居て、二股で隆さんを選んだのよウフフフ、隆さんもそれを知ってるんだから」
ウワァ!さすが純さん、考えている事が違う。あのお兄さんあってこのお姉さんなのになんで関矢君は????もう考えるのはヤ~メタ。
当日、関矢君には何も言わないで侑希を連れて待ち合わせのファミリーレストランへ、最初は他の場所を指定されたんですがどうせなら普段の侑希を見て欲しくて、来慣れているレストランを選ばせて頂きました。
「今日はお時間を頂きまして有難うございます。この子が侑希ちゃんですね、確か1歳だと云う事ですがまだミルクは飲んでいるんですか?オムツは今年取れそうなんですか?、夜泣きはどうなんですか?」
等たくさん聞かれましたが、どういう訳は侑希を抱っこをしてくれなかったんです。
「あのぉ、子供は嫌いなんですか?まだこの子は夜泣きもしますし、オムツは多分ですが、来年あたりになるのではと思っています。まだまだ子育ては終わりそうもなく先日の検診で此れから三種混合だとかそれぞれのワクチン接種などもあると云われてしまいました。それから免疫が弱くなりましたので、此れから子供が通る病気のオンパレードになるため仕事の調整をしなければなりません。もし私との結婚を考えてくれるようでしたら子育ての協力と、私の仕事の理解をお願いしたいのですが、其の辺はいかがな物でしょうか?今まで一人で子育てをしてきましたのでどの様に考えてくださるのかを聞きたいのですが・・・・?」
「そのぉ、私子供が苦手と云うか、別れた女房の時にも畑や田圃の仕事が忙しくて子育てあまり参加していませんで、そのぉどう接してい良いのかあまり分かんないんです。家では子供に関しては男は口に出さないで女性に任せっきりと云うか、親父もお袋に任せていましたんで。其れが別れた原因なんですけど、親と一緒に住むことは難しいですか?」
二人目の男性にもお会いして、同じような質問をされました、男の人ってそんなに子供の事が気になるのでしょうか。
私もまた同じように侑希を大事にしてくれるのか?等を探るような質問をしたのですが、納得のいくような答えを得る事が出来なかったのです。
「いやそれは、私はこの年まで結婚していませんので、子供の扱いに成れていなくてそのぉ、結婚しましたら私との新しい生活になる訳で、其れに子供を作って頂きたいし、私の仕事も・・・ですけど手伝って頂ければありがたいのですが?」
侑希は私の隣で最初は私にしっかりと摑まっては普段見せないような顔をして、何故か顔を強張らせているような感じでしたが、慣れてきた成果笑顔を振りまいてはパフェに夢中になっていました。
でも、何かいつもと違う事を子供なりに感じたようで、私から離れようとはしなかったのです。
「美由紀さんどうだったの、二人の男性との二回目のデート!侑希ちゃん抱っこしてくれたぁ?多分私の考えだったら夜泣きだとかミルクだとか、お風呂はどうしてるのだとか、一人で寝れるの?仕事手伝ってくれる!等と聞かれたんじゃないの」
「純さん、なんで其れ分かるの?その通りですけど!二人共、何故か侑希を抱っこしてくれませんでした。と云うか、侑希は行こうともしませんでしたね((笑))」
「美由紀ちゃん、さっき言ったことは家の隆さんが嫌がる事だからなのよ。其れに家の仕事ばかりではなく自分の仕事にも参加させて人件費を抑えたいからね。私だって隆さんの仕事を手伝ってはいるけど、私の趣味優先が条件なんだよ。其れから子供に関しては浩史君が特別なのよ、あの子は子供が大好きだし特に侑希ちゃんに関しては甘々だからね。其れでも浩史君には子供たちが集まるでしょ、自然と子供たちは大事にしてくれる人が分かるみたいなの。だから侑希ちゃんを連れて行ってみれば子供好きならすぐに抱っこするなり子供に好かれようとするはずだから、分かり易いわよ」
「アハハハハ、考えてみれば本当にそうですね・・・私、毎日何を見ていたんだろう、ウフフフ、ヤダァッもう!あぁあ、嫌んなちゃう。私考えるのや~めた。純さん、決めました。お見合い、断ります・・・な~んか純さんに乗せられてしまったみたいですね」
「あらぁ、それは言いがかりよ、私は美由紀ちゃんに「良い男が居たら結婚しなさい」って言っただけだし、別に浩史君がそうだとは限らないでしょウフフフ」
「はいはい、純さんの言う通りです。もう良いですから、私、いつになるのかは分かりませんが誰かさんを待つことにします。と云うか・・・しました。多分、侑希も許してくれると思います。ねぇ純さん」
「美由紀ちゃん其れで良いの!先は長いわよよぉ。我が弟乍ら、何しろ鈍感に熨し付けている様な男だからね。でも、私達も応援してるからきっと大丈夫よ」
本当に必要としている?男性がいつもそばにいる事を改めて知って、ちょと優純不断な私が居る事を今回知りました、関矢君ゴメンね。ウフフフ!
やっと我が儘な取り締まり役員達との海外視察が無事に終了し、父さんと母さん達と久しぶりに会食をしたり、孫への買い物(孫??って誰の?)をして、それを手渡されてしまった俺は早速メールで侑希ちゃんへ「お土産持って帰るからねぇ!」って、俺の子供じゃないんだけど、まぁ良いか((笑))
猿渡さんから、社長と貴子様が侑希ちゃんの写真を携帯の待ち受けにしたり、会合や教室で「孫が居るのよ」等と言って自慢している話を聞いていたけれど、毎週ネットで会わせているのに・・・・その内東京へ連れてきてあげた方が良いのかなぁ。
猿渡さんから「浩史さんは社長のお子さんでもありますけれど、私達にとっても息子みたいで、そのぉ家の家内も侑希ちゃんや美由紀さんに会いたいって、ダメですか?一度東京へ来てもらう事が出れば嬉しいんですけど、家内は東京から出る事が出来ない物ですから、何とかお願い出来ないでしょうか」なんて言われてしまい、どうする、俺!
支社に顔を出してから、梶ちゃん達が待って居てくれる?はずの家に戻った俺だったけれど、其処には何故か少し暗い梶ちゃんが居た。
「ただいまぁ!梶ちゃんの顔少し暗くて怖いんだけど???それで、俺がいない間に一体何が有ったの?どうしたの」
「関矢君、そのぉ・・・ごめん無理、我慢できない・・・・おっかえりぃなさい~!ずっとワザと暗くしていたんだけれど・・・あぁあもう無理アッハハハハ純さんが悪いんだからね」
「あぁあ、美由紀ちゃん言っちゃったぁ。もう少しだったんだけどねぇ侑希ちゃん、パパの所に行って抱っこしてもらいなぁ」
パァアパ、ダァコ、ダァコ、パァアパオ~ジ、チュキ、パァパチュキ、ニィ~!
「あぁっみんな聞いた、聞いた!侑希ちゃんが俺のこと好きって言ったんだよ」
「何言ってんの?侑希ちゃんはまだそんな言葉話せませんよ、其れは浩史君の想いからそう聞こえてんのよ、ねぇ美由紀ちゃん」
「えっ、イヤッ私にも「好き」て聞こえてしまったですけど、ねぇ侑希、関矢君のこと好きだよね」
パァアパオ~ジ、ニィッ!チュキ、ダァコチュキ、エへへへ!
「あらぁ本当だぁ、いつの間に!浩史君は侑希ちゃんの彼氏になっちゃったんだぁ」
「なっ何言ってんの、俺は、、、俺は違うよ彼氏じゃなくてパッ・・じゃなくて・・・オ~ジだからね」
「はいはい、分かっていますよ!どうぞ三人で仲良くやって頂戴。でも、今回は長かったわね、美由紀ちゃんも侑希ちゃんもいつ帰ってくるの?って顔して心配してたわよ。向こうのお父さんやお母さんも元気にしてたの?心配掛けさせないようにしないとね。浩史君には家族がいつの間にか増えてんだから、でもみんなに良い顔をしてたら駄目だからね、疲れちゃうでしょ。ちゃんと断る勇気も必要だと云う事を忘れないでよ」
純姉さんや梶ちゃんと侑希ちゃんの顔を見て、「安らぐな~!」ってホッとしている自分がいました。
やっぱり、偽りの家族だけれど我が家が一番だと思う。
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