第四十七話 あれから一年・・・・・皆、家族!





 庭先から聞こえる可愛い靴音キュスゥキュスゥキュス、そして俺を呼んでいる声もする!

 


 御帰りいぃ~、美由紀ちゃんも侑希ちゃんも、皆あんた達が帰って来んのを待ってたんだぞアハハハ!


「はぁい、皆さんただいま。遅れまして、新年あけましておめでとうございます。今年も侑希共々宜しくお願い致しま~す。さぁ侑希もご挨拶しようね。」


「梶ちゃんお帰り、ちょっと紹介したい人がいるんだけど・・・いいかな?侑希ちゃんもお帰りぃ抱っこしてあげるからおいで」


「関矢君、誰、紹介したい人って・・・もしかしたら其のぉ、別にいいよ。私達ってそんな関係じゃないし気にしなくていいからね」


「なっ何を言ってんの、そんな人じゃないよ!実は俺の父さんと母さんだよ、と言っても親父やお袋じゃなく、東京でお世話になっているのでそう呼ばせてもらってるんだ」


「浩ちゃん、早く私達を紹介してくださいな。今日は美由紀さんや侑希ちゃんに会いたくて来たんですからね」


 アァアッ!バ~バ~、ジ~ジ~、パァパ、パァパ、ジ~!ジ~!、バ~!バ~!


「こら侑希、何言ってんの駄目だよ」


「こちらが紹介したい黒沢さん御夫妻です。そのぉ父さんは会ってるよね、親父の葬式の時に!会社の社長として来賓して頂いたから、そしてこちらが奥様の貴子さんです」


「侑希ちゃん私の事分かったのぉ、ネットだけでしか会っていなかったから分からないと思ってたのに、ウフゥンごめんなさい。今日は公私の私の方で此方に来させて頂きました。紹介して頂きました黒沢です。ごめんなさいね、急に来て。どうしてもあなたや侑希さんに私が会いたくて、それで主人に無理いって連れてきて貰ったの」


「えっ関矢君どう云う事?社長さんご夫婦がお父さんお母さんて、それにどうして侑希が黒沢さんを知っているの?えっ、なに?私分かんないんだけど??」


「そうだよね、取り敢えず俺が東京で個人的に世話になっていた会社の社長御夫妻で、東京では訳があって母さんと父さんって呼んでいるんだ。侑希ちゃんは土曜日に梶ちゃんがチビッ子達に勉強を教えている時にネットで顔を見せていたんだよ。だから、侑希ちゃんは母さんや父さんのの顔を見てバ~、ジ~って言ってくれたんだ」


「お世話になります、私達夫婦には子供が居なくて!其れでこの子を養子にって大きすぎますけど(笑)だけど駄目でした。関矢さんに断られて、それでも私達は諦め切れずにいて呼び方だけでもって許可を頂いてそう呼んで貰ってるんですよ。私も主人もこの子が来てくれてから色々変わって、運転手や家政婦さんまでもが皆、この子のファンなんです。でも、この子が茨城に帰ってしまったのでそれで寂しくて今日来てしまったんです、なにしろ東京へ来た時にしか会えませんもんね。ネットで顔は合わせていますけど味気ないんですよ」


「そうなんですか、其れで!改めまして、私は関矢君の中学時代からの同級生で、今、此方の家に同居させて頂いています梶谷美由紀です。そしての一人娘の侑希です。この子の父親はもうすぐ二年になりますが交通事故で亡くなって今は居ませんが、関矢家には大変お世話になっており感謝の言葉しか有りません。今日はゆっくりして行ってください、ウゥ~ンと言ってもこの状況じゃゆっくり出来ないかもしれませんね((笑))」


 美由紀さんよぉ、今年も宜しく頼むわぁ。母ちゃんがさぁ今日迎えに来んだけど、今年はスミレ会の行事にも多く参加して欲しいって俺頼まれてきたんだ、頼むね。


 俺も同じこと言われてきたぞぉ、何だ皆同じこと考えてたんだぁ。ゥンなら自分達で言えべなぁ、ホントに面倒くさいんだからなぁ


「あぁあ、そんなこと言っていいんですか、おばさんに怒られますよ、さっき会った時に後で迎えに行くからって話してたんですから。知りませんよ」


 ゥンなの女房が怖くて男の集まりが出来るかっての、こんな時にしか酒飲めねぇんだから。なぁ皆そうだよな、浩ちゃんもそう思うよな。


「あっいやぁ、それを俺に振るの。ダメですよ、俺なんて女性に一番弱いんですから」


 違いねぇ、美由紀ちゃんの尻に敷かれてるし、侑希ちゃんベッタリだからなぁ浩ちゃんは、アッハハハハ


 其れだけは間違いねぇな、美由紀ちゃんを早く嫁さんに貰っちゃえよ、見て居るこっちが恥ずかしくなる時があるんだからよ。


 そうだそうだ、娘達が言ってたぞ!二人して目を合わせるとイチャイチャ光線が出てんだと!何も言わないのに何で通じんのかなぁって不思議がってたなぁ。教育上それは良くはねぇんじゃねえのガハハハハ


「もう止めてくださいよ、私達はそんな関係じゃありませんよぅだ。本当に私達を酒の肴にしないでくださいね((笑))」


「本当に賑やかね。皆あなた達を心配して、それにしても可笑しい!東京じゃ絶対に見られないわね。家の主人もあんなに喜んで、あなた達二人の普段の御陰ね」


「いいえ、私なんかとてもとても。関矢君とそのご家族が凄いんです。直ぐに打ち解けちゃうし皆に好かれちゃうんですから・・・でも、もっと自分を大事にして欲しいんです。何というか、燃え尽きてしまうんじゃないかと心配な時もあるんですから」


「あらっ、やっぱり浩ちゃんの事しっかり見てくれてるのね。家の人が、美由紀さんが近くにいるから大丈夫だ問題ないよって!あの子はね皆に優しいの、でも自分を蔑ろにしてる所が有るのよね。自己犠牲欲が強いって言うか、他人に優しく自分に厳しすぎるのよね。其れは家の主人がと云うか会社がいけないのよ、もっと早くに対策を取って居れば。でもあの子のお陰でって言っちゃなんだけど、会社では事故が減り多くの人が助かって、其れで会社も利益が出て!あの子の御陰で家の人も社長になれたのよ」


「関矢君は何時も一生懸命で、周りにばかり目が行って!気を利かせて疲れないのかしらって、其れで時々哀しい顔をする時があるんですよ。一人で背負ってるのが分かるんですが私力になれなくて・・・ごめんなさい愚痴を言ってしまいましたね」


「うぅんそれで良いのよ、私今日来てよかったわ。それで今晩泊る事になってるの、出来たら一緒に寝ても良いかしら。でも侑希ちゃん大丈夫?」


 「そうなんですか、それなら東京での彼の話も聞きたいですし侑希なら大丈夫ですよ、早智子さんの話も聞きたいですから」


 「あらぁ貴女、早智ちゃん知ってるの!浩ちゃんは姪のことは知らないんだから。と言っても私達は一度も早智ちゃんのこと話したことが無いのよ。美由紀さんが早智ちゃんの友達だなんて私知らなかったわ」


 栗原早智子さんが黒沢さん御夫婦の姪である事は早智子さん自身からLINEで教えて貰っていたので、それなのに、関矢君には話していないって。

 やっとわかりました、関矢君が合コンで栗原さんに知り会ったと云う事。どうやら合コンは最初から栗原さんと関矢君を合わせる手筈になっていたと云う事だったようです。

 

 本当に関矢君ってお人好しで可愛い人って改めて思う、彼はずっとあの時のままで・・・変わってしまったのは私の方なんだって改めて知りました。

 だからこそ、私は彼とは結婚は出来ないと思っているし・・・それに今となってはもう遅すぎたんです、もうあの時の私には戻れないから!。



 父ちゃん迎えに来たよぉ!美由紀ちゃん帰って来てたんかい。良かった、世話んなったね。


 父ちゃん、帰っぺよ!美由紀ちゃん、外に野菜置いてあっから食べて、もう帰るよ~!まったくこんなに飲んでしょうがないんだから。


 浩ちゃん。美由紀ちゃんおめでとうね、今年も宜しく頼むわ。これ米と漬物なんだわなぁ食べて頂戴。


「皆さんありがとうございます。助かります、今年も宜しくお願いします」


「あらぁ、皆さん手土産付きで迎えに来てくれるの、家計が助かるわねぇ」


 あらっ?アンタ初めて見る顔だね、美由紀ちゃんどこの人なの?紹介してよ。


「こちらは黒沢貴子さん、関矢君が東京でお世話になっている方で、今日初めて茨城の方に来てくださったんです。宜しくお願いします」


 そうけ、浩ちゃんが世話になってたんけ、浩ちゃんがこっちに帰って来て本当にありがたいことだよ。皆、浩ちゃんが好きだかんね。親父さんと同じで敷居が低いんだわ、何でも相談できるし若いのに良く知ってるからこっちは大助かりだよ。


 ゥンだな、美由紀ちゃんも浩ちゃんも子供達に優しくしてくれっからみんなこの家に集まるんだわ、小父さんや小母さんの時にはこんなに集まんなかったかんな。この二人の人徳って言うやつだっぺなアッハハハ


 そうだっぺな、ぅんじゃね、帰っから、お疲れさんね


「は~い、お気をつけて~!野菜と漬物、有難うございま~す!」


キュスゥキュスゥキュス、バィバィ、バィバィ、ニィッ、お~じバィバィ!


おぅ!侑希ちゃんもバイバイしてくれんのか、嬉しいなぁ!そんじゃ、おじさん達バイならだぞ~!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る