第二話 君との再会・・・・・思い出
俺はこの田舎で生まれた事は誇りに思っているし、今まで一度も忘れたことはない。
忘れようとしても嫌な事が有れば田圃や畑、それに家から見えた山並みを思い出せば吹っ切れた。
それに小さい時からお稲荷さんや川で遊んだ幼かったころの日々を思い出しては二度と帰らないと決心して頑張ってきたのだ。
小学校は、裏山を抜けた新しい道を4キロメートル程歩いて通っていたが、東日本大震災で被害を受けて石で造られた滑り台も壊れ、いわゆる既存不適格建造物である小学校は耐震的に持たないとの判断で校舎自体も壊されてしまった。
少子化の波も有り人口も少なくなった為、子供たちは統合小学校と云って機織小学校迄バスで通っているらしい。
中学校も同じように統合で、随分前から七つの小学校の生徒が集まってきていた。
中学校時代に俺は卓球部で汗を流していたが、同じ体育館の隣で汗を流しているバレーボールに所属していた梶谷美由紀さんに憧れてはいたが同じ部員の柴田華子さんと一緒にいてあまり話せずにいた事を思い出す。
高校の時に中学の仲間であった増田と田畑などと一緒にいることが多くなり、その時に梶谷さんたちと話すようになってそしてグループで遊ぶようになったのだった。
俺自身は、その時から呼び方も変わり梶谷さんから梶ちゃんと呼ぶようになり恋心も有ったけれど、其れも片思いだったし付き合ってほしいなどと云ったことはなかったし出来なかった。
いつも梶ちゃんや柴田さんの周りには俺の友達がいたし、特に田畑や増田とは仲が良かったので、田畑は梶ちゃんと付き会いたいと言い出すし、増田も柴田さんと付き合いたいんだと俺に相談してくるし、そんな気持ちを知っている俺は口には出せなかったのだ。
でも俺は・・本当の俺は梶ちゃんと付き会いたかったし、好きだった事を時々思い出す。
梶ちゃんはいつも優しくて周りに気を遣う事が出来て、明るくて、学校行くときの梶ちゃんと柴田さんに道場のバス停で顔を合わせるのがとても楽しみで、三人とも違う学校だったけれど楽しかったなぁ。
梶ちゃんは学校が終わると俺の家に来ては純姉ちゃんとも仲良くなって、お袋とも仲良くなり台所仕事を手伝ってくれてはいたが、そんな彼女の気持ちに俺は答える事が出来なかった。
そんな俺はチキンな訳で一度も口に出さずに東京へ出てきてしまった訳でTVドラマ的なセンチメタルにはならず、皆と別れた最後の日も梶ちゃんから「頑張って」の一言を貰ったことだけを鮮明に思い出しては頑張ってきた、今では一人片思いの甘い思い出だけどね。
そんな俺にも、昨年の夏前から何となく付き合い始めた会社の同僚の栗原早智子さんと云う彼女が出来た。
彼女は営業の事務担当者で、俺のいた課とはあまり縁がないのだけれどたまたま課対抗合コンみたいのが有って、面子が足りないから関矢出てくれないかと云われ参加した時に初めて顔を合わせたのが出会いだった。
その後は何もなかったが、営業の人間と打ち合わせをする時があり、その時にたまたま居合わせたのが栗原さんで、その後、また再開したのがきっかけで付き合い始めた。
俺は根がチキンだから肝心なことになると逃げてしまう癖があるみたいで、彼女と結婚したい気持ちはあったが口に出せないまま、田舎に帰る事になったとだけ伝え、その後は合わないで八月に一人でIターンして田舎の支社に赴任してきたのだ。
本社での役職からは降格し、いや降格ではなく支社では今までしてきたような仕事はないし、また新しく仕事を覚えなくてはならない為、自分から降格願いを出し支社から営業所に再移動してまだ二週間たったばかりなのだ。
田舎に戻る事になった原因は、お袋が亡くなってから五年祭を過ぎ、やっと落ち着いたかと思っていたら最近、親父が背中が痛いだとか咳が止まらないとか有ると言う事で、純姉ちゃんと秀樹兄ちゃんが交互に面倒を見てくれていたが、兄弟三人いるんだからと云う事でお前も面倒見ろと言われ、其れなら支社もあるしIターンするからと話がトントンと進み、二週間前に田舎に帰ってきてしまったのだ。
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