ー試験ー
その後、土、日と【普段と変わりなく】勉強を教えて貰いながら過ごし、勉強会は終了し、月曜日からテスト週間が始まった。
始まってみると、蓮が繰り返し何度も作ってくれた小問題の方が遥かに難易度が高く、実際のテストが簡単に思える程で「本当に同い年なのか?」と疑問すら浮かんできた。
結果として、俺も学も追試は免れテスト結果として廊下に張り出された上位100名の中に俺の名前なんかあるはずもなく、勿論学に関しても載っている訳が無い。
蓮に至っては当たり前のように1番のところに堂々と「一条 蓮」と記載されている。
点数に関してもほぼ満点に近い。
俺たちに教えながら自分の勉強もしていたとなると蓮の凄さを改めて実感した。
そして、そんな当たり前に「友達」として尊敬を持っていた蓮から、キスされた晩からテスト勉強に追い込まれそのままテスト期間と怒涛の数日をすごし終わった今、蓮とどう接していいのか分からないというのが現状だ。
俺は1人「うーん・・・」と思い返していた。
あの晩の翌朝、目覚めると隣に既に蓮の姿はなく、階下のリビングへ向かうと普通にテーブルに並べられた朝食を食べながら
「おはよう朔也、思ったより早起きだね、もう少し寝てるかと思ったよ」
とすました顔をしながらトーストとコーヒーを頬張っている。
学に関してはまだベッドで寝ていたのでそのまま置いてきた。
「お、おはよう・・・」
あれは夢だったんじゃないか?と思ったが少し切れている唇があれが現実に起こったことである事を証明している。
「母さん、カフェオレいつもより少し甘めにして」
そんな注文を付けながらテーブルに座った。
「頭使うから糖分は必要だよ、確かに甘めの方がいいかもね。」
「蓮はブラックじゃないか」
「僕は甘いのあんまり得意じゃないだけ」
「そういえば、昔からチョコとか甘い物食べてる所見たことないな」
「うん、1つ、2つ位なら食べるけど積極的にはたべないなぁ」
普通だ、すごい普通なんだ。
勉強してても、普通にしごかれた。
学と2人でいい年になって半べそかきながら小テストをやるくらいに追い込まれた。
まぁ、その結果テスト問題がかなり簡単に思えたのも事実な訳だが。
やっぱりあれは、夢だったんじゃないのか?と何度も問いかけてみた。
日にちが経つにつれ、やっぱり夢だったんだ、勉強で疲れたせいで変な夢でも見たんだと思うようになっていた。
「さーく!どうした?」
突然声をかけられ思わずビクッとする。
「ま、学かよ。びっくりさせんなよ」
「ごめんごめん、ビックリさせたつもりはなかったけど、なにか思い悩んでる様に見えたから名前載ってないのショック?」
「まさか、いつもよりは出来たけど名前が載る程じゃないよ」
「俺もだ、しっかし蓮の奴は凄いよな。1位だぜ?俺らに勉強教えながら首席だぞ?まぁ、テスト問題の方が簡単だと思う位のテスト作れるんだからそうだよな」
「まぁな、昔から頭は良い奴だったけど」
学の感想は、やはり、俺が感じていたのと同じものだった。
「朔、テストも終わった事だし、遊びにでも行こーぜ!」
「あぁ、そうだな。」
「それじゃあ、僕もご一緒しよう。」
また突然声をかけられドキッとした。
「お!蓮先生様のおかげですからねー、ハンバーガーでもラーメンでも何でも奢るよ!な、朔?」
「う、うん。」
「うーん、それならラーメンがいいな」
ニコッと微笑む蓮が妙にかっこよく見えてしまい思わず目を逸らした
「お、俺ちょっとトイレ!」
そう言って思わずその場から逃げ出してしまった。
なんだか、自分だけ蓮を意識してしまってるみたいで恥ずかしい。
というかそもそも自分の恋愛対象が男なのか?!という所にまずは頭が追いついてこない。
正直な話、我が家の姉は自慢する訳では無いがかなり美人な部類に入る。
高校時代などは、繁華街に行けばスカウトされるなんて何度もあるほど、美人なわけで・・・。
故に、クラスの女子などに「可愛い」や「美人」なんて気持ちを持ったことが無いのだ。
だからと言って、みんなが可愛いと言う子は確かに可愛いと思えるし、たまたま現れなかっただけで恋愛対象は女性だと思っている。
それが、まさか自販の恋愛対象が男なのかもしれないなんて思い始めたら、恥ずかしい気持ちや言い知れぬ不安、僅かな嫌悪感が押し寄せてくるのだ。
トイレの個室に逃げ込み便座に座り込んでため息をつく。
「はぁー、もうなんだってんだよ、俺・・・」
蓮は普通に接してきている、俺も同じようすればいいだけな事なのにそんな簡単な事ができない。
「蓮の馬鹿野郎・・・」
俺は個室の中で小さく呟いた。
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