ー合宿④ー

 普段使わない頭を使ったからなのか妙に頭が冴えてしまって眠れない。


そういえば、蓮は「中学の頃は彼女がいた」と言っていたな。

それに比べて俺なんか彼女というモノが出来たことも無いと言うよりも恋愛に対してあまり興味がなかった。


友達と遊んでいた方が楽しかったし男同志でつるんでる時間が大切だった。

勿論、中には彼女が居たやつも居るだろうが少なからず学も俺も彼女なんていた事がない。

なんだか急に蓮が大人っぽく見えた気がしてならない。

俺だって思春期の男の子だ。

女の子とあんな事やこんな事してみたい気持ちだってない訳では無い。


そうやって布団の中で悶々としているとふいに


「朔也…」


小声で蓮に声をかけられた。


「早く寝ないと、明日も扱くから覚悟してよ」

「あのさー俺すごい悶々としてるんだけど…」

「はぁ?」


声のボリュームにビックリして2人でベッドに横たわる学を見るグーグー言っているので既に眠っているのだろう。

学の場合は、勉強のし過ぎでオーバーヒートして即寝落ちと言う感じなんだろう。


「あんま大きな声出すなよ」

「朔也が変な事言うからだろ、何に悶々としてるの?」

「いや〜、ほら、蓮中学の時彼女居たって言ってたじゃん」

「うん、居たけどそれがどうしたの?」

「やっぱ、どんな事したのかなぁとか、下世話な話気になっちゃうんだよ思春期なお年頃だから…」


そう答えると、声を押し殺してクスクス笑う蓮。


「本当に下世話な話だね」

「だって気になるじゃん、3年も離れてたわけだしさ、それに別れた理由とかも知りたいし」

「うーん、別れた理由は僕にはちゃんと好きな人が居たから。それでもいいって言うから付き合ってみたけど、やっぱり自分を見てくれない事に腹を立ててたみたいでね、振られたんだよ」


自傷気味に笑いながらそう答える蓮。

俺は興味津々と連の方へ少し体を寄せた。


「ほうほう、それでそれで?」

「それで?ってそれだけだよ。その1回だけ。」

「ど、どこまでしたんだよ?」

「だから、何にもしてないよ」


なんだ、それなら俺らと同じレベルじゃないかと安心した。

良かった、蓮だけ先に大人の階段を登ってたなんてなったらちょっと妬ましい気持ちになってたと思う。


「ねぇ、朔也。さっきの話ちゃんと聞いてた?」

「え?聞いてたよ?」

「他に気にする部分あったでしょ?」

「あぁ、好きな人がちゃんといるってやつね」

「そう、まぁ、気がついたのは最近なんだけどね、ずっと好きだったみたい」

「へー、蓮一途に思われるなんて凄い子なんだろうな」

「朔也、もうちょっとこっち来て」

「ん?」


言われるがまま、2人の布団の境界線にまで体を寄せた、それに合わせて蓮も俺の方へ身を寄せてきた。


目の前には、端正な顔立ちの蓮の顔がある。

少し疲れてるのか、眠たそうにしてる。

そして、何故か妙な胸騒ぎを感じる視線を俺に送っている。


「俺、なんか悪い事言っちゃった・・・?」


そう声をかけた瞬間だった。

突如俺の胸ぐらを掴み強引に自分の方に引き寄せたかと思うと唇を奪われた。

勢いありすぎて、カチンっと歯の当たる音がしたような気もするがそれどころでは無い。


戸惑いながら、蓮の胸元辺りを必死に押し返し少し距離が取れたと思ったら今度は優しい口付けが俺の唇を奪ったのだ。


大きく見開いた俺の瞳には目を瞑った綺麗な顔をした蓮が写っている。

そのまま、数秒ほど固まっていると、蓮の方から俺から離れて一言だけ呟いた。


「僕が好きなのは、君だよ朔也、おやすみ」


そう言って俺から距離を取り背を向けて横になる蓮。

俺は仰向けに向き直ると腕で目元を覆った。

突然奪われたファーストキスに、告白とまで来れば最早なにがなんだかわからない。

ただ、妙に顔が熱くなっているのを感じながら俺はどうしたらいいのか悩みながらまどろみの中に落ちていった。

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