ー合宿①ー
金曜日の放課後。
1度帰宅した僕は軽くシャワーを済ませ土日分の着替えを用意し教科書と普段使ってる参考書をカバンに詰め込んだ。
咲也の家に泊まりに行けるなんて本当に久々だ。
咲也の姉、莉子ともそこそこ仲良く遊んでた記憶がある。
主に、遊ぶと言うよりは咲也と一緒にパシリに使われてたに近い。
だがしかし、素直に言うことを聞いてしまう、そっくりなのだ、咲也に。
きっと学が見たら驚くだろうなと思う。
少し大人びた咲也というのが莉子の形容詞だ。
咲也自信は、僕と学が女子の注目を集めていると思っているようだがそうではない。
正確には、僕たち3人が注目の的なのだ。
自分で言うのもなんだが僕自身モテないタイプではないし、学もなんだかんだ言ってイケメンに分類される。
そして、咲也自身は今流行りの可愛い系男子とでも言うのか、癒し系というのか・・・。
見た目に反して男らしい中身もまた人気のポイントなのだが、本人は一切気付いていない。
要するに、僕たち3人が一緒にいることが女子にとって注目の的なのだ。
「片瀬くんか桜井くんか一条くんが・・・どれも捨て難いよね・・・!」
「私は断然メガネ男子好きだし、頭の良さも含めて一条くん!」
「えー、ちょっとワイルドな感じのある桜井くんでしょ〜」
「いいや、癒し系なのに男らしい片瀬くんだよ!」
なんて声が飛び交っているのだ。
そして、僕自身今後どう行動していくことが正解なのかまだ決めきれずにいた。
本当なら咲也と2人で勉強のつもりが学という余計な虫までついてきた。
まぁ、学の場合は本人の自覚がないだけで、多分莉子を見たらそっちに興味が移るかもしれない。
でも、僕の予想が正しければ学も・・・。
まぁ、咲也事だ学にも僕にも友情は感じていても恋愛としての感情は持っていないだろう。
僕としては、朔也には是が非でも恋愛としての感情を抱いてほしかった。
最初は、男の子を好きになるなんて・・・という葛藤に悩まされた。
正直、中学時代に彼女とかを作ったこともある。
だが、どうしても朔也の事が頭の片隅から離れないのだ。
わざわざ同じ高校に進学するくらいには、3年間ずっと僕の頭の片隅に朔也が居た。
でも、それは思い出として残っているだけなのだと自分に言い聞かせてきたつもりだ。
しかし、入学式で見かけた朔也に鼓動は高鳴り、そしてやはり「好き」の感情は間違っていないと思ってしまった。
何より、保健室で眠る朔也のふにふにとした柔らかそうな唇に自分の唇が触れた時、今までの何倍もの稲妻が落ちるような快感を覚えた。
(あー・・・、やっぱり僕は朔也が好きなんだな・・・。)
そこで初めて自覚し確信し、己自身をずっと騙してきた事に気が付いたのである。
「さて、出発するか。」
そんな葛藤も荷造りをしている内に終わり、珍しく誰もいない家に走り書きで
『久々に朔也の家で勉強合宿してくる、日曜まで帰らない』
と書置きを残しておいた。
普段なら弟が居にいてもいい時間なのだが、予定より早く帰宅して遊びにでも行ってるのだろう。兄に関しては、バイトの可能性もある。
兄の彗≪すい≫と弟の皓≪こう≫の男3兄弟の次男なのである。
女性に理想を持っても良さそうな環境なのに、僕は、一応異性愛者ではあるが同性愛者でもあるということになる。
「あh、僕は全人類恋愛対象として見れるなんて素晴らしいな・・・」
少し自虐気味に独り言をつぶやいた後に、思い直した。
いいや、全部が良いわけじゃない。
朔也だからいいんだ、僕が欲しいのは朔也だけなのだ。
今まで付き合ったどんな女子にも感じだ事のない気持ちだ。
キスだって初めてなわけではない。
それなのにあの感覚が忘れられない。
「チャンスがあれば、今度は起きてる朔也とキスしてみたいなぁ・・・」
ふふふっと笑いながらそう呟き、僕は自宅をあとにした。
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