ー三人ー
入学式から数週間。
特に変わったことはなく、中学時代との違いといえば購買と学食があるかないか位なもので特に変わりない日々を過ごしていた。
中学時代から一緒の桜井と小学校が一緒だった蓮と3人で行動することが多いくらい。
あの後、桜井から「選択授業何にすんの?」と聞かれ、書道と答えた結果、桜井も同じ教科を選択していた。
「それにしても、高校って言っても中学とそんな変わんねーな」
今は体育の時間。
体力テストを受けている最中だった。
「まぁ、思い描いてるような青春ってこれからなんじゃね?」
桜井の言葉に想像を膨らませた。
甘酸っぱい恋をして、彼女が出来て、一緒に登下校なんかしてみたり。
休日は遊園地に行ったり水族館に行ったりデートを楽しんで大人の階段を・・・ついニヤニヤしてしまった。
「朔、今絶対変な想像してただろ」
笑いながら桜井にそう言われて思わず赤面していると、50m走を走り終えた蓮が近付いてきた。
「朔也、顔が赤いけどどうしたの?」
「一条、今朔は【大人の階段を登る セイシュン】を想像してニヤニヤしていた所だよ」
「あー、なるほど。健全な男子なら思い描く事だ、恥ずかしがる事はないよ」
「ちょっ、桜井変な事言うなよ、蓮も俺はそんな変な想像はしてねーぞ!」
「耳まで赤いのに?」
蓮にそう言われ、更にカーっと顔が熱くなるのがわかる。
「つ、次俺が走る番だから行ってくるわ!」
あのまま2人にからかわれてたら溜まったもんじゃない。
ヘラヘラ笑ってる桜井と意地悪そうに笑う蓮をあとに、俺はその場を離れた。
「一条はさ、朔ってどんな奴だと思ってる?」
「うーん、素直で単純なおバカさんだな。」
「あはは、俺も同意見だよ。」
2人は、50m走のスタート準備をしている朔也に目を向ける。
「朔の唯一の取り柄は運動神経の良さだから」
「活躍の場はここしかないね、昔と変わらずだ。」
「あいつ、女子からモテないって思ってるみたいだけど、結構隠れファンいるんだよなぁ」
「あぁ、それは小学生の時もそうだったよ。正義感が強いし、朔也は誰にでも優しいから」
「みんな友達!って感じだからな、アイツ。鈍感すぎるのも罪なもんだよねー。」
チラッと横目で一条を覗き見る。
「僕は・・・小学生の時の朔也しか知らないけど、桜井から聞く限り、ほとんど変わらずに高校生になってるみたいだから安心したよ」
「一条、朔の中身は小学生のままって言いたいの?」
「おっと、失言。あ、走り出したよ。」
パーンっ!
とスタートの合図が聞こえたと同時に5人ほど一斉に走り出す。
飛び抜けて早いのはやっぱり朔也だった。
「やっぱり、早いねー朔也」
「中学時代は陸上部から誘われ出たみたいだけど、朔はずっと帰宅部だったよ」
「朔也は、面倒な事嫌いだし体動かすのは好きだけど何かに縛られるタイプじゃないからね」
2人が語り合ってることなど露知らず。
唯一の取り柄である運動神経を思う存分発揮して、50m走の自己ベスト更新することが出来た。
自慢してやろうと2人に駆け寄り
「自己ベスト更新!50m6.8秒だぞ、どうだ!」
と自慢げにドヤ顔をしてみた。
2人は顔を見合わすと
「やっぱり小学生だ」
と声を出して笑い始めた。
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