ー羨望ー
まさかこの学校に蓮が進学してくるなんて思ってもみなかった。
昔はよく一緒に遊んだが俺と違って成績優秀な蓮なら、もっと有名進学校でも全然余裕で受かるはず。
でも、今は3年ぶりに再開した蓮の姿が男の俺から見てもカッコイイ人間に変わってて驚いた。
周りの女子がキャーキャー騒ぐのも頷ける。
どちらかと言うと男に囲まれて過ごしてきた俺と違い、遠目から見てて笑顔でスマートに女子の相手をしている蓮は確実にモテる男なんだろうと安易に予想がついた。
「人生って不公平だなぁ」
小学生の時は背丈だって大差なかったのに、成長期というモノは、酷く残酷だ。
俺より10cmは高いだろう、俺自身、【まだまだこれから背が伸びる!!】と豪語しているし、昼飯の時は牛乳を欠かさず飲むようにしてる。
それでもなかなか伸びない身長に内心悩んでいた。
「お前は、小さいところがいいんじゃねーかと俺は思うぞ!」
心の中を見透かされたかのように、桜井に声をかけられた。
こいつもこいつで俺より10cmは高いだろう。
「お前、喧嘩売ってんの?」
「そんなつもりはないけど、世の中には可愛いものが好きって奴もいるだろって慰めてるんだよ」
机に突っ伏した頭をくしゃくしゃっと撫でられ笑っている桜井に不満気な顔を見せる。
「お前の友達くんは、女に相当モテそうだねぇ。」
俺の視線の先の蓮を見て桜井がそう呟く。
(モテまくってるお前が言うな)と心の中で悪態をつきながら、桜井へと視線を戻した。
「そーいや、お前なんでここの学校に来たんだ?」
「そりゃー、家から近いからに決まってるだろ。それに、お前と同じ学校行くわって前に話しただろ」
「あ〜、そうだったな」
大体がみんな「近いから」を理由にここの学校に進学してくるし、男女含めて1/3くらいは顔見知りだったりする。
桜井とは、中学1年の時に同じクラスで仲良くなった。
2年、3年とクラスは違ったが、お互いの家に行き来するくらいには仲がいいし、確かに進学先を聞かれた時も「俺も同じところに行くわ」と言ってた気がする。
宮ノ森学園は、自由な校風がウリの1つである。
その為か、高校デビューなのか桜井は黒髪だった頭髪を今は金髪に近い茶髪にしている。
片耳につけたピアスと若干着崩した制服姿が様になってて、こいつも蓮が優等生タイプのカッコイイ男だとしたら、桜井はちょっとヤンチャなタイプのかっこいい男だ。
中学時代も、何組の誰ちゃんを振っただの、なんだの噂が絶えない奴だったし、こいつも今後はさらにモテるだろうなぁと思っている。
彼女を作らない理由を聞いても「男同士でつるんでる方がずっと楽しいだろ」としか言わず、仲間内でも彼女持ちでないのは俺と桜井くらいだった。
確かに、他の連中の彼女の話を聞くと惚気けているのかと思えば、突然不機嫌になる彼女のご機嫌取りを必死にしたり、男とは違う未知の生き物なんだというイメージが作られていた。
俺の場合、姉がいるから女子の突然不機嫌モードや突然怒りモードなど多少の耐性はあるが、友達とつるむのを辞めてまで付き合うかと聞かれたら、答えはNOだ。
今の俺には未熟すぎてきっと相手にならないだろうし、女子からもそういった好意を向けられた事はない。
「俺もモテてみてーなー」
呟いたところで、桜井がケラケラ笑っている。
友達は多いが恋愛に発展するような関係の女友達など皆無だ。
むしろ、桜井が好きだから協力して欲しいなど頼まれることが多かったくらい。
「なぁー、桜井はなんでそんなモテんのよ?」
「俺か?俺は、まぁはっきり言えばモテる男だもんな、俺と居たら楽しそうじゃん?連れ歩いたら自慢になるじゃん?やっぱそこじゃね?」
聞かなきゃ良かったと今更後悔しても遅いが胸にグサッと刺さる言葉だった。
連れ歩いて様になる男だって事か・・・
「朔はさ、同い年なのに弟みたいなかんじなんだよなぁ。素直で馬鹿正直だから」
言った後に、また1人でケラケラ笑ってる。
「お前に聞いた俺が馬鹿だったよ」
はぁと溜息をついたところで、担任が教室に戻ってきた。
「みんな席に着けー、プリント配るぞー」
ザワザワと騒がしかった教室が静かになるまでそう時間はかからなかった。
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