第4話

信号が青に変わった。

どうにか、アクセルは踏んだ。

そのまましばらく走ったところに、ロードサイドに広めの駐車場をとったコンビニを見つけて、吸い込まれるようにそこへ車を停めた。


彼の曲の、最後のフレーズが流れている。

そこに、明るすぎるラジオDJの声が重ねられた。


「この冬、注目の新人アーティストがお届けするのは、失恋ソング。せつない恋の終わりを表現した歌詞は、自身の実体験に基づいたものだそうです!」


よろよろと、スマートフォンを手に取り、DJが読み上げた曲名を、そのままタップした。

検索結果の一番上には、歌詞が出ていた。


覚えのある言葉がたくさん散りばめられた歌詞だった。

私が家に置いていたソファの色、飲んでいたお酒、いつもつけていた細いゴールドの指輪。

あのときは髪を伸ばしていたから、long brown hairなのか。

仕事帰りに店に寄ることが多かったから、白いシャツを着ていることがほとんどだっただけで、別に好きだったわけじゃないのに。

ああ、それよりも。


「青い空の心が好きだった」なんて、陳腐な言葉を使わないで。


俯けば、紺色のスカートにいくつも水滴がこぼれて落ちた。

もうあの店のことも忘れかけていた。そんなときに、こんな風にあのときのことを思い出すことになるとは思わなかった。


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