二章 ゴースト駆除 ―6―

 しばらく経っても先輩が現れない。


 手に握っている猫耳も、いまだ着信を知らせてくれない。


 カーテンから漏れる光が赤みを増してきており、太陽が傾いてきているのがわかる。


 何か、あった………?


 そんな考えに、冷たい汗が首を伝う。


 いや、彼はゴーストに関しては相当なベテランのはずだ。そんな簡単にゴーストに打ち負けるわけがない。


 そう自分に言い聞かせていても、気づけば体が動いていた。この屋敷内のどこかには先輩はいるはず、とりあえず歩いて探そう。


 まあわたしがこんな心配したところで、何事もなかったように後ろから現れるのが、松本先輩だ。


 本部では口数が少なく、年齢も不詳のままだが、この職は長いと噂で聞いた。


 ………。



 一体何歳なんだろう……。


 3歩歩くとなんちゃら――鳥頭な性格がでて、先輩を探しているのに、つい 日頃の疑問が頭の中に浮かぶ。


 顔は20代後半くらいなのだが、流行には無頓着で全然若者らしくない。


 あの日、観たかったドラマというのも『水戸黄門』だった。


 2054年の今、あんな大昔のドラマをリアルタイムで観ることないのに。

 というか、リアルタイムじゃなくて再放送だし……。


 顔はいいんだけど。


 記憶に新しい、ガラスフルスイングの先輩が目に浮かぶ。


 やっぱり、性格がなぁ……。



 そこまで考えて、またハッとする。


 何考えてるんだわたひは……っ。


 飛び出したはいいものの、すぐに他のことに気をとられるマイペースぶりはわたしの長所であり短所だ。


 ……いまのところ短所にしかなっていないけど、そこはポジティブにいきたい。


 戒めに自分の頬をピシャリとひっぱたく。


 ただ……どうしてもあの先輩がゴーストに負けているような想像が、わたしにはできなかった。



 そんなことを思っていると、ふと目をやった部屋の扉が重い音をたてながら、ひとりでに薄く開いた―――

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