第9話 3本目(下書き)
イージアの青年のロマン武器説明会が長そうだから、しばらく実家には帰らないつもりなんだけれど、ここ最近、ロマン武器の調査ばかりしていたから、何も調べないのも落ち着かなくって、ついペンをとってしまったわ。
まぁ、ノートはイシャール堂に置いてきてしまったから、下書きしかできないのだけれど。
まだ調べていない場所って、どこかしら? と思って、ガルレア大陸を中心に調べてみたんだけれども……
あったのよ。ロマン武器は何本かあったの。でも、イージアの青年一族のロマン武器を見た後だと、どれも霞むというか、パンチが弱い気がしてしまうのよね。
う~ん。どうしようかしら。と思って、戦闘終了後の自分の拳を見てみたんだけど…… これ、次元の狭間にある『ノポウ・カンパニー』で強化して持った武器だわ。
ということで、私は『ノポウ・カンパニー』に向かったの。
『ノポウ・カンパニー』のノポウ族に声をかけると、いつも通り「ポッ……クル?」と返してくれたわ。
そう。そうよね。
ノポウ族との間には言語の壁があったのよ……
いつかやったように、アルドが「ポポック、ポックルルー!」と意思疎通を試みてくれたけど、当然通じなかったわ。
『ノポウ・カンパニー』のノポウ族は、「やれやれ……」という感じで首を振ると、カウンターから降りて、近くにいたアベストを捕まえて戻って来たわ。
「ポ。ポポックル……ポポ!」
「デボ、オデダチ、マダ、ミナライ……」
「ポポポ、ポックル! ポポー、ポ、ポック…… ポックルー!」
「ゾンナニ、イヴナラ…… ワガッダ」
なんだかアベストは嫌がっいたみたいだけど、ノポウ族が無理やり説得していたわ。
「オデダチ、ヅウヤグ、スル…… マダ、ミナライデ、ワガラナイゴド、アルゲド……」
そんな経緯で、『ノポウ・カンパニー』のノポウ族から武器に関する話を聞くことができたわ。
ただ、聞けはしたのだけれど、あんまり理解はできなかったのよね。
ノポウ族の言うことには、「ノポウ族にも、武器の思念を好んで食べる個体と、人間の食べるものを好む個体がいる。武器も同じ」「白はっぱはダメだけど、それ以外の趣向は自由。武器もそう。制約の範囲で好きなもの、好きにしていい」「武器自体が持つ個性を伸ばしてあげる。それが大事」って言っていたけれど……
◇◇◇◇◇
「うーん」
「あら、エイミまた何か悩んでいるの?」
いつかのように次元戦艦内でエイミがロマン武器について書き物をしているとヘレナが声をかけてきた。
「この間、『ノポウ・カンパニー』で武器の話を聞いたでしょう…… でも、それをどうやって店員に伝えたらいいのかしらって悩んでいて……」
エイミはペンのお尻を軽く唇にあてるようにして、上体を軽く後ろに倒す。
「ああ。『次元の狭間』も『ノポウ族』もAD1100年には認識されていないものだからかけないのね」
「そうなの。しかも、ノポウ族の話もよく理解できていなくって……」
「ノポウ族は、ヒトとはまた違った価値観で生きているから…… というか、エイミ。最近『イシャール堂』に立ち寄っていないけれど、よいの?」
「イージアの青年の武器説明会が長そうだったから、最近家に帰るのを避けていたんだけど…… さすがにそろそろ説明会も落ち着いたころだと思うから、一回家に行ってみるわ」
エイミは倒していた上体を戻すと、椅子からぐっと立ち上がった。
「次元の狭間の件は、家に帰って、父さんと店員の様子を見てから伝えるか考えることにするわ」
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