第8話 店員からの回答_2

 お嬢さん、先日はイージスの青年を紹介していただきありがとうございます。


 師匠の手によって、自動追尾機能は無事解除されました。

 自動追尾機能解除直後の青年は、腕のケガが原因でもう鍛冶ができないということで、落ち込んだ様子も多かったです。


 でも、青年が来て数日でセバスさんが「もう、エイミったら『急がない』とは言ったけど…… まだ何の連絡もないって、どういうこと!」と当店に乗り込んでこられまして……


 どうやら、セバスさんは「生体機械のテスターとして日常的に身体的負荷を受ける職業の人の紹介」をお嬢さんに依頼したかったらしく、「ハンターとは違うけれど、鍛冶師も『日常的に身体的負荷を受ける』職業よね」ということで、青年にKMS社の生体機械のプロトタイプテスターを紹介してくださりました。


 KMS社の生体機械は、さすが、最先端ということもあって、訓練次第では青年も鍛冶師に復帰できそうとのことでした。


 希望を得た青年は、目を生き生きとさせて毎日リハビリに励んでおり、僕も安心しております。お嬢さんが紹介してくださった直後の青年は、なんというか、危うさがありましたから……


 昼間は、各々仕事や訓練に励み、終業後や休業日にはロマン武器について熱く語るという充実した日々を過ごしております。


 イージアの青年のロマン武器を見た師匠は「なぜ、こんなに複雑な機構がバイクサイズに収まるんだ…… どれだけうまく収納しても、大型のカーゴサイズにはなる気がするんだが……」と頭を抱えていましたよ。


 あと、セバスさん…… いえ、セバスちゃんさんが先日「紹介した手前、様子見に来たわ」と青年を訪ねてきまして。その時ちょうど三人でロマン武器の話をしていたのですが、「武器は専門外だけれども、『浪漫』を追い求めたい気持ちはわかるわ」と。


 もう、それからは四人で日々ロマンを追い求めております。毎日楽しい!


 独創的なアイディア、1024機能もの過去事例、師匠やセバスちゃんさんの確かな腕前と、潤沢な開発資金!

 

あ、「あくまでロマン武器は余暇でやるもの」という師匠の方針を受けて、各々仕事はまじめにしていますので、その点は安心ください。


「やっぱり、もう武器にこだわらずにロマンを優先しない?」

「いや、でも武器は武器じゃないと……」

「バイク型なのに、武器だと言い張るのね…… うーん。じゃぁ、武器と武器を使うメカの両方を作って連動させるのはどうかしら」

「あー。それなら」


 いやー。めっちゃ楽しい。楽しいのですが、出来上がったものは何に使うつもりなんでしょうね…… そろそろ、小さな島程度なら墜とせる威力がある気がするのですが……


お嬢さん、最近イシャール堂に帰ってきませんけど、そろそろ帰宅してロマン武器開発を止めてくださってもいいんですよ?


僕自身もロマン武器開発が楽しいので、僕は止められないのですがちょっと、行き過ぎちゃった気がしないでもないんですよねぇ……

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