第7話 幼女滞在

 フェイは機嫌が悪かった。それもそのはずで、ウルルスの膝の上にルイゼが座っているからだ。


「そんなに密着する必要あります?」

「好き合った男女が仲良くするのは当たり前なのじゃ」

「ウルルス?」

「なんで不機嫌なんだよ、後で替わってやるぞ?」

「替わってもらわなくて結構です」


 意地を張った。無茶苦茶して欲しいのが本音だ。


「そうだウルルスお金持ってきたのじゃ」

「逃走資金か?」

「滞在費なのじゃ」

「ここに住むつもりですか!」

「本当は眷属化で容姿を変えてやろうとしたんじゃが父上に止められたのじゃ」

「眷属化?」

「ブラックドラゴンの眷属になれば黒髪に金色の瞳になれる。だれにもウルルスと気付かんはずなのじゃ」

「それは確かに別人ですね」

「フェイとか言ったか、この金で酒を買ってくるのじゃ」

 

 金貨の詰まった革袋をフェイの目の前に掲げる。今すぐ買ってこいと言う事だろうか?


「質の良いのをかってくるんじゃ」

「はいはい」

「中には白金貨も入っておる。バクったら許さんのじゃ」

「そんな事しませんよ」


 革袋を受け取り外出の準備を始める。


「一本でいいですか?」

「この体ならすぐに酔いが回るから構わんのじゃ」

「飲み過ぎるなよルイゼ」

「ダイジョブなのじゃ」

「仲がよろしい事で……」


 見てられないので家を出た。胸がモヤモヤする、見た目幼女が懐いているだけなのに。年齢的には年上だが種族が違う、正直複雑な気持ちだ。


「フェイではないかこんな所で何しておる?」

「お師匠様……。実はちょっと困ったことに同居人が増えました……」

「なんでじゃ? 意味が分からん」

「ブラックドラゴンのルイゼさんがウルルスを助けに来たんです。なんか昔世話になったみたいで」

「風の噂ではそんな事もあったらしいの……」

「さすがはお師匠様の情報網ですね」

「眉唾物だと思ったんだがなドラゴンと知り合いなどと」

「ですよねぇ」


 酒を買いに師匠と別れて店に向かう。


「すみません。この店で一番高いお酒ってどれですか?」

「一本金貨五枚だけど、予算は大丈夫かい?」

「はい大丈夫です」

「凄いね、これは一番高いブランデーだよ。気をつけてな」

「ありがとうございます」


 ブランデーが金貨五枚という法外の値段で売ってるとは思わなんかった。どんな味なんだろう……。


「ただいまです」


 部屋に入ると二人は腕相撲していた。幼女相手に何してるんだと思う。


「おかえり」

「おかえりなのじゃ」


 両手を使っているウルルスをルイゼが細腕で圧倒している。ドラゴンというのはホントらしい。すぐに決着が着く。


「身体強化魔法アリでも負けるかぁ……」

「人の身で勝とうなんて身の程をしるのじゃ」

「は~い」

「ブランデーこれでいいですか?」

「あ、これは凄いなオラリエ村のブランデーじゃないか、高かっただろ?」

「金貨五枚でした」

「え、破格のお値段。良心的だなぁ」

「そうなんですか?」

「ああ、ブランデーの最高峰だぞ」

「さっそく飲むのじゃ」

「あ、グラス持ってきますね」

 

 当然の様に三人分持ってきた。これでおあずけされたらたまったモノじゃない。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

魔法士殺しと情報屋の卵 神城零次 @sreins0021

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ