第6話 幼女襲来
ウルルスが来てから二ヶ月がたったある日の事。王都で買い物の途中声を掛けられた。
「お主、ウルルスの居場所を知っておろう? 案内せよ」
不遜な言葉を使う幼女に出会った。身なりはかなり上級な貴族が着ているような豪奢な物で高い地位の者だと分かる。
問題は私の背丈の半分もない幼女である事。ウルルスの知り合いとは到底思えない。
「あの、なぜ私に声を?」
「決まっておろう、貴様からウルルスの匂いを感じる。一緒に住んでいるのであろう?」
「…………」
匂いで分かるモノだろうか? 例えそうだとしたら犬並みの嗅覚じゃないか……。
「知りません」
ウルルスはお尋ね者だ。用心してしすぎることはあるまい。
「強情なん奴め。幾ら出せばウルルス居場所を教えてくれる?」
「金額の問題じゃありません」
「知っておるではないか、さっさと案内せよ」
しまった。言葉を間違えた。この場合、意味が分かりませんと答えるべきだった。
「ベスの居場所が分からぬ、どうせ一緒なのだろう隠れ家は」
「……案内します」
師匠の名前を出されたら従うしかない。どうやらウルルスの関係者なのは間違いない。もし違うなら情報屋として失格だが。私の勘は是であると告げている。
「最初から案内せよ。まあ、こんな身なりの者に突然話しかけられて混乱するのは分かるがな」
「こっちです」
幼女を家に連れ帰った。もう、あとはウルルスに任せよう。なにかこの幼女は妙な迫力がある。
「ただいま戻りました」
返事はない。ウルルスは部屋の奥で寝ているのかもしれない。
「ウルルス、お客様ですよ」
「は? 誰だ? お、ルイゼじゃないか、どした?」
目線を合わせてウルルスは幼女改めルイゼに声を掛けた。
「父上がウルルスが面倒なことになっていると聞いて心配にななってな、来たのじゃ」
「ありがとな、酒飲むか?」
「頂く」
「ウルルス、幼女にお酒を飲ませるのはちょっと……」
その言葉を無視してウルルスはグラスのブランデーを注いで渡している。未成年に酒を、しかも幼女に酒を飲ませるなんて何を考えているのか。
「中の下じゃな」
「ははは。ルイゼが普段飲んでる物に比べたらな」
「ウルルス、この子は一体」
「ん? ルイゼ話してないのか?」
「話したところで信じまいて」
「話が見えないのですが?」
ウルルスは一つ息を吐くと口を開いた。
「この子はブラックドラゴンのルレイシアの末っ子のルイゼ。年は百五十歳だったか」
「は?」
ブラックドラゴンって伝説の龍? その末っ子? 冗談でしょ?
「まあ、幼竜だから、こんな見た目だけどな」
「五十年前に人化の術を覚えてな、酒の味を覚えたんじゃ」
「どこからツッコめばいいいか分かりません……」
簡単に説明してもらうと人の姿で酒を飲もうとしても門前払いを喰らっていたルイゼにウルルスは酒を買い与えたそうだ。その恩でルイゼはウルルスを気に入り、度々会いに来ていているらしい。
「幼女に酒を買ってあげるって……」
「見た目通りの年齢じゃない事はすぐに分かったからな、ルイゼが暴れる前に酒を渡した方が平和だろ?」
「うむ、腹いせに街を焼き払う事もかんがえたのじゃ」
「ウルルス、ファインプレーです」
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