第5話葛藤、残像

 レイラから刀を受け取る時、その重さに、私はそこに宿る、散り散りになった命の重さを感じた。命の重さなんて、生まれて初めての言葉であるし、発想である。その雷のような響きに、私は半ば、放心した。「刀には問題なかったのよ。でも刃こぼれで痛んでいたから、刀身ごと、取り換えたんだけどね」「刀の問題じゃないなら、なんで」私は言い淀んだ。「なんで、私はあの人の為に、要らない人を殺せなくなったの」絶望と悲しみか混在する心と魂。「殺せないのではなくて、もう殺したくない、という事はないの」レイラは静かに私の目を見つめた。

「私はあの人の為にならないといけないの。生きていけないの。意味がないの。殺さなければ、あの人と一緒に、私は居られなくなってしまうのよ」「生きる意味は、自分で探さないと、いつか生と死に挟まれる事になるわよ。あなたの意志とは無関係ではない生と死の矛盾に、あなた自身が飲み込まれる事になるわ」

 洋館に帰ると直ぐに、あなたの部屋に呼ばれた。夕方の暮れる日差しの眩しさを疎ましく思いながら、あなたから次の仕事の話をされた。ある施設に行き、全員始末。至極簡単な仕事内容だった。「民間人も混じる施設だが、全員始末してくれ。お前の顔が割れると困るからな」「普通の人も居る施設で殺すの」「全員殺したら、お前の言う普通の人も、関係ない。そう思わないのか」あなたは瞼を閉じた。「お前のいう普通の人間と、それ以外の人間との違いって一体なんだ。善と悪の違いか。そもそも普通、を語るほど、お前に普通、があるのか」あなたに抱いてほしいと純粋に思う、わたしは、普通じゃないのか。「俺はお前を抱くつもりは、ない。初めからそう伝えていたはずだ。お前は初潮も来てない、ただの小便臭いガキだ」あなたは瞼を開けて、アメスピの箱から煙草を取り出して火を点けた。「リベルタに感化されたのかもしれないが、あいつの言う事は信用するな。正義の面を被った、ただの偽善者だ。それにあいつはお前と同じだ。家族を殺してる」

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