第4話

「待ってー!月島さん待って!」


すでにビルを出てしまった少女を追いかけ声をかける。

怒りに満ちた少女はこちらを一瞥するも歩みを止めなかった。

そうだよな、怒ってるんだから止まるわけないよな。

そう考え足を速めた。

数十秒後、少女に追いついた。


「師匠は、ああ言ってたけど、僕は、どうかなって、思うんだよ。」


息を切らしながら喋る。

そんな僕をしり目に少女は無視をして歩く。

どうにか喋ってもらわないと。


「ねえ、僕が受ける!依頼は僕が受けるから!師匠ほどじゃないけど僕にも見えたり感じたりできるしなんならそういう道具を扱ってるお店も知ってるから一緒に解決策を探そう!」


少女がピタリと歩みを止める。

怒った顔でこちらを見つめ何かを思案しているようだ。

こんな美人に見つめられると高校生とはいえ心拍数が上がる。

ゆっくりと僕に近づく。

少女の息がかかりそうな距離まで顔が近くなる。

僕は生唾を飲んだ。

その瞬間、少女の顔が綻んだ。


「ありがとう!お兄さんの事信じてみるわ、いい人そうだし。」


可愛く年相応な笑顔を見てホッとした。

月島グループの令嬢とはいえ高校生だと思った。


「で?どうやって退治するの?それとも封印するの?」


「いや、えっと、まだ専門家じゃないから聞いただけじゃわからないんだ。とりあえず現地で調べないといけないと思うんだ。」


「ということは学院に入る必要があるわね。いくらなんでも部外者だから入れるのは難しいかもしれないわ。」


確かにそうだ、月島さんの知人としたって学院側に手続きを取るには時間がかかるだろう。

それに入れない可能性だってある。

守衛や防犯はしっかりしているはずだろうし下手に侵入したら僕が警察に突き出されてしまう。

どうしたものかな。


「仕方ないわね、お兄さんは私が雇った秘書ってことにしましょう。」


「え!それは学院側に通る話なの?」


「大丈夫、他にも従者を連れてる学生は多いわ。私は今まで邪魔だったから付けてなかったけど。」


さすが名門中の名門。

それにしても住む世界が違い過ぎる話だ。

これで学院内を見ることは出来るようになった。

さて次は自分たちを守る物を用意しないと。

そういう道具を売ってる店に行ってみよう、師匠に一度だけ連れて行ってもらったことがある。


「じゃあそっちの手続きは明日になったら学院に話しておいてもらっていいかな?僕は今から除霊とか怪物退治とかの道具を買いに行こうと思うんだ。」


「わかったわ、じゃあ行きましょう。」


「え?ついてくるの!」


「当たり前じゃない。それに費用は私が依頼しているんだから出すわ。どれぐらいの値段かわからないけどあなたの手持ちがあるとは思えないし。」


ぐうの音も出ない。

僕の財布には数千円程度しか入ってなくて道具の類がどれほどの値段か分からないから居てもらうのは有難い。

年下に奢ってもらっているようで本当に情けない。

生い立ちだけでこうも変わるだろうか、僕もお金持ちの家に生まれたかった。

月島さんは僕をしり目に歩き出した。


「あなたの言うお店はどこ?早くいくわよ、あんまり遅くなると家の者に心配をかける事になるわ。」


「あ、そうだね。こっちだよ。」


急かされて歩き出す。

さて、あの店はこっちだったはずだ。

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