おでかけ(1)

「白上くん、今週末に皆でお買い物行こうって事になってるんですが、一緒にどうですか?」

「あーー。俺は遠慮しとくよ」

「そ、そうですよね……」


がくっ、と肩を落として落ちこむ柊さん。

何故、落ちこむんだ………。


だとしても、俺には行けない理由があるからな。


もちろん、花月だ。

花月を一人にはできる訳もない。


「あ、そうだ! パパ! おやすみの日にれなちゃんと遊んできていい?」

「お、いいぞー。帰りは暗く前に帰ってくるんだぞ」

「うん!」


笑顔で返事をして、オムライスをパクパク、と食べ始める花月。

そうか、花月は友達と遊ぶのか。だったら、久しぶりに大掃除でもしようかな。


そんな事を思いつつ、オムライスを一口食べる。


ケッチャプの味もしつこくなく、丁度いいな。


ん? 柊さんがぱぁぁ、と顔を明るくし、淡い青い瞳をキラキラさせててこっちを見てくる。え、何? その期待の視線……。


「白上くん!行きましょう!」

「え、何処に?」

「だから、お買い物です!」

「ええ」

「そんな嫌そうな顔をしないで下さい……。行きましょうよ!」

「いや、家の事があるし」

「そんなに、行きたくないですか、?」


顔を俯かせて、瞳を潤ませる柊さん。だから、それは販促だって………。


「分かったよ。行くよ」

「本当ですか!」

「うん」


やった、と喜ぶ柊さん。ふいにも可愛い、と思ってしまう。


◇◇◇


そして、当日。


「珍しいな、ましろが来るなんて。てっきり断ると思ってたんだかな」

「殆ど無理矢理って感じだけどね」

「だろうな」


納得した様子で頷く悟。


今は待ち合わせ場所である駅前に来ている。今のところ来てるのは、悟と俺だけ。他のメンバーはまだ来てない。


「よっ! おはようさん!2人とも!」


そう言って声をかけてきた体格のいい男──亮平だ。


「ん? 後は女子だけか?」

「そうだね」

「そろそろ来ると思うが」


「おっはろー!」


そんな話をしていると、元気な声が聞こえてきた。

視線を向けると鈴原さん、相沢さん、柊さんと女子三人組がいた。


「おはよう〜皆」

「おはようございます!」


それに続いて挨拶をする二人。


「よし、皆集まったし、行くか」

「おー!!」


そして、俺達は後ろに建つ目的地、大きいドーム状の建物──ショッピングモールに向けて歩きだす。


「おお、結構人いるね」


入り口前だけでも人混みがスゴい。酔わないかちょっと心配になる。


「んーこれ皆で移動できるかな?」

「ちょっと難しそうだな」

「んーなら、二人一組に別れて、また後で合流する?」

「それが一番かな? 皆もそれでいいー?」


鈴原さんがそう言うと、皆異議なしと言った感じに頷く。


じゃあ、俺は悟と回ろ。一番楽だしな。


「じゃあ、亮平は俺とな」

「おう!」

「すずは私とね」

「分かったー!いこー!」


そう言ってしまうと、止める暇もなく居なくなってしまう悟達。


残った柊さんと俺は唖然としていた。



「じゃ、じゃあ、俺達も行こうか…」

「はい」


ここで止まっていても仕方がないので、俺達はショッピングモールの中に入って行った。



中に入ると、やはり人混みはスゴく物にでも捕まってないと流されて行きそうだ。これ、後で合流できるか?


「柊さんよかったらだけど、はぐれない様に手でも繋いどく?」

「え」

「あ、嫌なら大丈夫だけど」

「いえ! 繋ぎます!」


柊さんは頬を赤くして恥ずかしそうに手を差し出してくれた。


そりゃあ、こんな大勢の人がいる中で好きでもない男と手を繋ぐなんて嫌だよね。でも、はぐれるよりはマシだから我慢して欲しい。


俺は、柊さんと手を繋ぐと取り敢えず人混みから抜けようと開けた場所に向かって行く。




「ハァハァ………なんとか抜けたね」

「は、はい……」


人混みを掻い潜って開けた場所にでれた。


よく周り回ると入り口と違ってそこまで人がいない。入り口だけがあんなに混んでたのか? これなら普通に回れそうだ。


息を整えて、


「よし、柊さん何処に行きたい?」

「私は取り敢えず小物を揃えたいですね。白上くんは?」

「俺も小物を揃えたいから、そっちに行こうか」

「分かりました。じゃあ、まずはあっちに行きましょう!」


それからは、柊さんと色んな場所を回って、とても楽しい時間を過ごした。

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