修学旅行(2)
「で、声を掛けて集まってくれたメンバーだ」
「俺、佐藤
「私は、鈴原
「私は、相沢ひよりだよ。よろしくね」
「俺は白上ましろ。よろしく」
金髪を短髪にしており如何にも体育会系な感じなのが佐藤さん。
茶髪をポニーテールしており、爪にはマニキュアを塗っていたりー耳にはピアスを開けている如何にもギャルって感じのが鈴原さん。
そして一番大人しそうなが、薄らとした茶髪をミディアムぐらいにしているのが相沢さん。
「俺、白上と仲良くしてみたかったんだよなー!」
「俺と?」
「あー!それ私もー!!」
ぐい、と迫ってくる佐藤さんと鈴原さん。何この人達? すっごく眩しいんだけと。これが、リア充ってやつか?
「えっと、さ、……佐藤さんと…………すはらさん?」
「ちがうよ! 鈴原美緒だよ!」
「あ、そうそう鈴原さんだ」
「さっき自己紹介したばかりじゃん!」
「ごめん、人の名前覚えるの苦手でさ」
「あ、じゃあ忘れないように愛称で呼び合お!ましろん!」
「え、ましろん……?」
「うん!ましろだから、ましろん!いいでしょー!」
「う、うん……」
さっきからよくそんなにぐいぐいと来れるな……。これがリア充なのか、、、恐ろしい……。
「じゃあ、俺も佐藤じゃなくて名前で呼んでくれよ。あ、もちろん『さん』抜きでな? ましろん」
「ああ、分かった。亮平」
「私は、すず、とかみーちゃんとか呼ばれてるよ!好きな方で呼んでね!」
「分かった、鈴原さん」
「だーかーら!すずって呼んで!」
「あはは」
「なんで笑うの!?」
ぷんすか、と怒る鈴原さん。俺はそれを華麗に無視をする。
あんまり騒がしいのは得意じゃないけど、、、たまにはいいのかな。
「自己紹介終わったのなら何処行くのか決めんぞー」
そう悟が言うと、皆席に座って話し合いが始まった。
修学旅行は、沖縄に二泊三日。
一日目は団体行動で平和学習と言うものを行う。
そして、二日目は予め班で行く所を決めた場所を回っていく。
で、最後の三日目は帰りの飛行機の時間まで自由時間となっている。
「で、どう決めるんだ?」
「まず皆が行きたい場所を言っていけばいいんじゃない?」
「それもそうだな。ましろ何処か行きたい場所あるか?」
「なんで最初に俺に訊く…………。特にないから任せるよ」
「あ、私も特にないから皆に任せるよー」
「いや、一人一個は言えよ。せっかくの修学旅行なんだからな」
俺と相沢さんは任せると言ったが、悟に怒られてしまう。
ええ、本当にないんだが………。
元々、行く気が無かったから特に考えてないんだよな。
「この二人後にして。柊は何かあるか?」
「私は沖縄記念公園に行ってみたいです!」
「じゃあ、私もカナと一緒の場所で〜」
柊さんに便乗する相沢さん。
その手があったか!今からでも遅くない、俺も便乗しよう。
「あー、おれ」
「ましろはちゃんと言えよ」
俺の言葉を遮ってきた悟。悟、覚えとけよ……。
「やっぱ、沖縄って言ったら海だろ!」
「私も海行きたい!」
「海か。悪くないな」
ん? 珍しいな。悟が海に行きたがるって。普段は身体を動かす事やめんどくさい事なんて嫌いなのに。
「ましろ、本当にないのか?」
「んーー、強いて言うならお土産を買いたいぐらいかな」
「はぁ、仕方がないな。朝は公園に行って、途中でお土産を買ってから、海に行く。でいいか?」
「異議なし!」
「同じく!」
「私もありません」
「私もないよー」
「俺もないよ」
全員、異議なしとなり、後は昼飯を何にするかだけを話し合って終わった。
◇◇◇◇
「今日は疲れたな……」
家に帰ってきて早々にソファーに寝転がる。今日はいつも以上に疲れた。
初対面の人と話したり、帰りは一緒に帰ってきたりと。
「パパ、だいじょうぶ?」
「ああ、大丈夫だよ」
花月が心配そうに近寄ってきてくれた。俺が大丈夫だと言うと笑顔になってくれた。
ああ、この笑顔で今日の疲れが一瞬で吹き飛ぶ。
俺は身体を起こし、花月を膝の上に乗せる。
「なぁ、花月学校は楽しいか?」
「楽しいよ!」
「そうか。誰かに虐められたりしてないか?」
「ううん!だいじょうぶ!」
花月の銀髪は日本では珍しい。そのせいで虐められてないか心配だったが大丈夫のようだ。
「あでも、今日……」
「ん? 何かあったのか? 言ってごらん」
顔を俯かせ、もじもじとする花月。
どうしたんだ? 本当は虐められていたのか?
「えっとね、きょう花月ね。クラスの男の子に告白されちゃった!」
きゃ!と言いながら両手で頬を抑えて恥ずかしがる花月。
………………誰だろうな、そんな命しらずのマセガキは。
「そ、そそそれで? 花月はどう返事したんだ??」
「断ったよ。花月はパパが好きだからって!」
「花月!! パパも大好きだぞ!」
「 痛いよ〜パパ〜!」
うちの子、なんていい子なんだろうか。天使、いや、女神様?
「パパ、ママは?」
「あー、ママね、今日は来れないんだ」
今日、柊さんは鈴原さん達と買い物に行ってしまっているため家には来ていない。
「パパ、いつママといっしょに暮らせるの?」
その言葉が胸に刺さる。
俺と柊さんは、嘘の恋人だ。当然一緒には暮らせない。花月にはまだ恋人だから一緒には暮らせないとは伝えてはいる。
「そうだな〜まだちょっとかかるかな」
「むぅー」
不満そうに頬を膨らませる花月。これでも納得はしてくれているから、とても助かっている。
よしよし、と花月の頭を撫でる。
「…………パパ、今度は2人とも居なくならないよね」
俺はその言葉を聞くと、手を止める。花月は心配そうな様子で見上げてくる。
悲しない為に、安心させる為に直ぐに答えた方がいいんだろうけど、俺は悩んでしまう。
柊さんが母親を演じてくれてるのは善意だ。柊さんが辞めたくなったらいつでも辞められる。
花月の為になら本当の事を言うのが正解なんだろう。
でも、花月が泣いたり、また心に傷を残してしまうと考えると。
「パパ?」
「! …………ああ、大丈夫だよきっと」
「そっか」
花月は嬉しそうに頷く。
そうだ、俺が守りたいのはこの笑顔だ。
今だけは見て見ぬふりをしてもいいよな。
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