第19話 ぺぱぷらいぶ

 ヒーローショーの後は待望のぺぱぷライブだ。ショーで疲れきった俺は後ろの方で静かに見届けるつもりでいる。


 しばらく待っていれば、ぺぱぷのメンバーがステージに上がってくる。観客席のざわつきはボルテージを上げる。


「ロイヤルペンギンのプリンセス!」


「コウテイペンギンのコウテイだ…!」


「ジェンツーペンギンのジェーンです!」


「イワトビペンギンのイワビーだっ!」


「フルルー!フンボルトペンギンー」


「5人揃って…」


「「「「「ぺぱぷぅー!」」」」」


 メンバー全員の名乗りが終わると、観客席のざわつきは歓声に変わった。この事からやはり人気があることを思い知らされる。


 ライブはまず雑談から始まった。


「みんなー!今日は集まってくれてありがとう!ところでこんな話は知ってるかしら?」


 観客席からは、なんだろー?等の疑問の声が挙がっている。


「少し前、このパークにかばん以外のヒトが来たのは知ってる?」


 あれ、嫌な予感が。


「今日、この会場に来てるらしいの!みんなー!後ろを見て!」


 観客席のフレンズが一斉に後ろに振り返る。その目線の先にはもちろん俺だ。


 俺に注目が集まる訳だが…… 正直めっちゃ逃げたい。俺がセルリアンと戦ってた時に使っていたらしい炎になって消えるやつ使いたい。


「そのヒトが、このパークに来たヒトよ!それじゃあ、自己紹介をしてもらうわ!」


 こんな大勢相手に自己紹介なんて、プリンセスさん鬼畜!!……本当にやらなきゃダメですか?


(期待の眼差し)×沢山


 ダメですよね!それじゃルロウ、いっきまーす!


「こほん、俺はルロウだ!ヒトのフレンズ…って言いたいんだけど、厳密にはニホンオオカミとのハーフらしいんだ!」


 会場は一瞬、静寂に包まれるがすぐにそうなのー?すっごーい!見せてー!等の沢山の声が飛び交った。


 案外反応が良い……?


(……ん、見せて?)


 まっさか!そんなの聞き間違いだよね??


 \見せてー!/

(わざわざ言い直した!?)


 そんなに見たいか!なら見せてやるよ!!やり方知っていればな!!!


『……出来るが』


 こいつ脳内に直接ッ!?


『妖御用達だ』


(野生解放も?)


『出来るぞ』


(やり方を問おう)


『中にあるものをパァーっと外に出す感じでやれば出来る』


(説明雑くない?感覚派だなオメー)


『分かれば良い』


 はいはいそうだね。

 それじゃ、ルロウいっきまーす!


「やっ!」

 ボウッ


 多分出来たはず。頭にはオオカ耳、腰あたりには尻尾生えていることだろう。


 すぐに観客席からは、すっごーい!やかっこいいー!等の言葉が飛んできた。


(意外と好評だな……)


 とりあえず野生解放を解いて、ライブを始めてもらおう。


「それじゃあ、ようこそ!の意味を込めて一曲目!『ようこそジャパリパークへ!』」


 前座が終わり、いよいよライブ本番へ。


 曲が流れ響き始めると、それに共鳴するかのように観客席も騒ぎ始める。


 その光景は凄く輝いていた。とても、とても大きく、綺麗に輝いていた。


 これを見て俺はふと思ったんだ。

 こんな強い輝きをずっと見てみたいと。




 §




 今回のライブは、俺へのようこそを兼ねた『ようこそジャパリパークへ!』とぺぱぷの代表曲『大空ドリーマー』、そしてメンバー全員のソロ曲に『純情フリッパー』、休憩を挟み観客を巻き込んだ『ようこそジャパリパークへ!』と次回のライブで新曲を発表するといったお知らせでライブは幕を閉じた。


 感想としてはライブ会場全体の様子は圧巻で、とても印象に残る良い思い出となった。





 §





 ライブも終わり、ルロウ達がその後片付けをしている頃だろうか。

 少し遠くで、それを傍観する何かがいた。


『ふぅむ、あれがヤラレタか……』


 小型のカメラのようなセルリアンを突っつきながら、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。


『伝達ご苦労だったな』


 その言葉と共に小さなセルリアンはどこかに行ってしまう。


『……ルロウか。とっても面倒い奴が居たものだ』


 間もなくしてそいつも立ち上がると、闇夜の中へと消えて行った。

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