第14話 かめんのひーろー
これがアイドルか…!すごい、とても息ぴったりだ。
「貴方がライブのお手伝いをしてくれたヒトよね?どうもありがとう!」
「いえいえ…… 皆さんも息がピッタリですごいですね」
「ありがとう!でも、まだまだよ。たっくさん練習しないと初代のようになれないもの」
今でも十分誇ってもいい程なのに、なんて努力家な子なんだろうか。流石、アイドルだ。
「ところで、ライブはいつから?」
「明日よ。明日のお昼から始まるの」
明日…… 結構ギリギリなんだね。
「他にやることありませんか?俺でよければ手伝いますよ」
「えっ、ホント!?」
そう発言すると、勢い良く迫って来たマーゲイさん。ちょっと色々近いかな。
「それなら、貴方にやって欲しい物があるの!」
「やって欲しいもの……?」
情熱の圧に押され気味になりながら、そのやって欲しいことの正体に探りを入れる。
「明日のライブには新しい取り組みを入れようと思ってて…… それが!ヒーローショーなのよ!」
ヒーローショーか。中々良い取り組みなのでは?
「なるほど、それで何をすれば?」
「貴方にはヒーローをやってもらうわ」
「なるほど、それで何をすれば?」
「ヒーローをやってもらうわ」
ライブ明日だよな…?
「それじゃあ更衣室の方に台本とかスーツとかあるから、そこで説明するわね」
……拒否権はないみたいだ。
§
「これが今回使う衣装と小道具よ」
更衣室にあるロッカーから取り出されたのは、ヒーローの衣装と変身する為に必要なベルト。
衣装は青と白がベースで、頭にはバイザーと少しメットを付け、体には少しのアーマーが付いたスーツ。
そして変身する為のアイテムの方は、腰に巻くベルトと個別のアイテムに分かれているみたいだ。
「あと、これが台本ね」
渡された台本をペラペラとめくり、内容を確認する。
読んで思ったのだが、ヒーロー物には悪役が必要不可欠。その悪役は一体誰がやるのだろうか?
ダンッ!!
「たのもー!」
「ちょっとヘラジカ、道場破りじゃないんだから」
突然、勢い良く扉が開かれる。
奥から現れたのは、立派な角を持ったフレンズさんと、立派な鬣らしきものを持ったフレンズさんだった。
「ちょうど来たわね。二人が、今回の悪役をやってくれるわ」
「ライオンだよ~、よろしくね」
「ヘラジカだ!よろしくな!」
「ルロウです。よろs「ルロウというのか!強そうな名前だな!ちょっと私と勝負しないk「こらっ!ヘラジカ!」
今まで名前が強そうだからと勝負を申し込まれたことがあっただろうか。目と目があったら勝負!じゃないんだからさ……
「とりあえず、セリフ覚えて掛け声のシーンして最後に本番と同じ状態で練習…… って感じにしたいから、よろしく頼むわね」
相変わらず計画性が終わってらっしゃる。
「分かりました、それじゃあ台本を…… あれ」
台本、一冊しか渡されてないよね。
「台本これだけですか?」
「うん、これだけよ」
……ちゃんと用意しといてよ。
§
一通りの台詞の暗記が終わり、ようやく練習に取り組める。
本当に大変だったよ。台本が一つしかないせいで読み込む時はぎゅうぎゅう詰めで毛がくすぐったかったし、休憩中も決闘を申し込まれていたせいでくたくた。よくここまで来れたな。
まぁ、そんな苦労話は置いておいて練習に移ろう。
まず最初にやる場面は掛け声でヒーローが登場するシーン。
ショーでは欠かせないワンシーン、掛け声役はぺぱぷの皆さんが担当して下さるようだ。忙しい中ありがとう。
「皆さんで一緒に〜?せぇーの!」
\助けて!ヒーロー!/
「まだまだ!大きな声で!」
\助けて!ヒーロー!!/
「もう1回!これより大きな声で!」
\助けて!ヒーロー!!!/
「そこまでだ!」
「誰だお前はっ?!」
「地獄からの使者!
名前が安直すぎるって文句は受け付けない。何故なら命名は俺じゃないから。
でもシンプルだし普通にカッコイイと思う。
「カットぉ!いいですよ!いいですね!最っ高ですぅ」
監督もご満悦のようだ。
この調子で次のシーンも行こう。
負けそうなヒーローが声援で立ち上がる王道な展開。
次はそんなクライマックスのシーン。
「くそっ、ここまでか……」
「大変です!このままだとヒーローが負けてしまいます!そうだ、皆で応援しましょう!せぇーの!」
\負けるな!ヒーロー!/
「もっと声を出して!」
\頑張れ!ヒーロー!!/
「最後に!大きく!」
\負けるな!ヒーロー!!!/
「ここで…… 負けるか!!」
「カットぉぉ!やっぱりいいですね!熱いです!最っ高……」
このシーンも難なくOKが出た。
次は戦闘シーンで、細かい動き等をしばらく練習しているといつの間にかお昼を迎えていたので休憩に入った。
§
「……ふぅ」
「お疲れ様です」
ベンチ… はないので代わりに観客席で休みを取っていると、じゃぱりまんを持ったかばんちゃんが隣に座った。
「これ、食べます?」
「うん、ありがとう」
差し出されたじゃぱりまんを受け取ると、一口サイズにちぎって口に放り込む。
もぐもぐ、と。
しばらく口にしていなかった味に浸っていれば、隣のかばんちゃんがじっくりと自分を見つめていることに気づいた。
「えっと、どうしたの?」
「ルロウさんって、すごいヒトなんですね」
「随分と急だね」
「だって力持ちで演技も出来て、皆からの信頼も厚いですし…」
褒められるのは嬉しい。
けど、たんたんと述べられる言葉が表す俺はそんな綺麗なものじゃなくて。
「そうでもないんだ。俺は非力だし、演技も出来ない」
それに、俺は自分に。
──バサバサッ… ドカッ!!
「痛っ!?」
頭に衝撃。
まさか……
「ここにいましたか」
「やっぱり、博士達か」
見下ろすように空中を飛んでいたのは、博士と助手。
いよいよ我慢出来なくなって、料理を求めて来たか。
「かばんも久しぶりなのです」
「はい、お久しぶりです」
「サーバルの姿が見えませんが?」
「サーバルちゃんなら飾り付けのお手伝いをしてると思います」
「……サーバル?」
「あ、ルロウさんはまだ会ってませんでしたね」
「サーバルはかばんが最初に出会ったフレンズなのです」
「はい、僕の大親友です!」
「詳しい事は、サーバルに会った時にでも教えてもらえばいいですよ」
「そうするよ」
「ルロウ!始まるよー!」
ちょっと話し込んでいると、いつの間にか時間のようで。ライオンさんが呼びに来てくれた。
「俺はそろそろ行くよ」
その一言を置いて、その場を後にした。
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