第9話 でんせつ

 翌日。

 何かこの島のことや帰る方法がないかと探す為に本を探してみると、面白そうなお話の本が沢山見つかった。


 白猫の男の子がパークにやって来るお話。

 明るい太陽のような少年がパークを冒険するお話。

 異世界からパークにやって来た少年のお話。

 双子となった少年少女がパークを旅するお話。


 と、それ以外にも気になる話が様々あった。


 その中でも一つだけ、異彩を放つものが。


 それは実際に存在していた(らしい)青年のお話らしく、この物語も昔にあった出来事らしい。


 歴史の勉強に良さそうだと思い、そのままページを捲ってみた。




 ───




 ある日、獣人が暮らす島に一人の青年が漂着した。


 浜辺で倒れているところを、ニホンオオカミの少女が発見した。

 目覚めた青年曰く、ここを目指して海を渡っていたらしい。


 青年と少女が話をしていると、そこに怪物が現れた。

 黒くて人間サイズの恐ろしい怪物。


 少女は青年を連れて逃げようとした。

 しかし青年はその手を振り払い、あろうことか怪物に立ち向かおうとした。


 少女は叫んだ。


『危ないよ!逃げようよ!』


 青年は聞く耳も持たず、怪物の方へ駆け出し……



 ───一瞬の内に怪物をやっつけてしまった。


 少女は目を丸くして驚いた。

 当然だった。


 だって最初の青年は、普通のヒトの姿をしていた。しかし怪物を倒した時の彼の姿は。



 狼の耳を生やし、掌の上では青白い炎を靡かせていた。


 その時の姿はとても神々しく、美しかった。


『あなたは、何者なの?』


 少女は青年の正体を探る。

 青年は答える。


『妖怪と人間の血を持つ、ただの一匹狼さ』




 ───




 最初の方を少し読んだだけなんだけど、この主人公には既視感がある。


 そう、俺だ。


 いや別に自画自賛とかじゃなくてだな。

 狼じゃないし、手から火も出さない(疑惑あり)


 ただ何故だが、彼は他人のようには思えないのだ。



「ルロウ、いますか?」


 

 おっと、我儘バードからお呼び出しだ。

 持ってた本を投げ出して彼女の元へ。



 当然だけど、後で二人に怒られたよね。

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