第8話 おりょうりだいすきルロウ君
「調理する際はここを使うといいのです」
「食材も図書館の中にあるので、自由に使っていいのです」
「調理器具もしっかりと揃えてあるので、ちゃんと作るのですよ」
「最後に、火は自分でおこすのですよ」
「それでは」
マシンガンの如く説明を終えると、二人は何処かへ飛び去っていった。
こいつら、道具も無しに火を起こす大変さを知らんのか。
まぁ、ここで文句を言っても何も変わらない。とりあえず行動に移すべきだ。
「材料は図書館の中… って言ってたよな」
本しか無いように感じるんだけど。
「……おっ、あった」
材料があったのは二階、というか階段を登った先。確かに色々あるみたいだ。
「何があるかな」
まずは野菜。玉ねぎにじゃがいも、トマト、人参と結構な数がある。
他にはお米や…… 香辛料かな?まぁ、粉っぽい調味料がある。
「カレーが出来そう…」
(いや、カレーしか出来なくない?)
あの二人、さてはカレーが食べたいだけだろ。何が試練だ。
……生憎、カレーは得意料理な為、このまま作れば試練は確実に突破出来るだろう。
しかし、俺の妙なプライドがそれを許さない。素直に作るとなんか負けたような気がする。
(何か良い手はないものか…)
「…そうだ!」
あるじゃないか。この材料で作れて、美味しい料理。
おにぎりと呼ばれる、偉大なものが!!
§
「博士、やりましたね!」
「助手、やったのです!」
「かばんがゴコクに行ってからというもの、毎日がじゃぱりまんだけでした。しかしようやく、それ以外の食べ物にありつけるのです!」
「楽しみなのです」
「「じゅるり」」
§
さて、作る料理は決まった訳だが。米を炊くにも火を起こす必要がある。
一応、虫眼鏡を見付けてきたから太陽光を使う手段は取れるんだけど…… あまり太陽が見えないな。
残された手段は摩擦熱なんだけど、木を使う原始的なことをやっていれば日が暮れてしまう。
まぁ、なんというか。手詰まりだ。
「あーもう!やけくそだ!!」
山のように積まれた薪の中に手を突っ込んで、適当にガチャガチャ動かしてみる。
この摩擦で着火出来ないかと願ったりしてみるが、当然叶うはずもなく。
「しょうがない、地道にやるか……」
そう思って手を引き抜こうとした時、違和感を抱いた。
なんだか指の先が熱いような、何故か焦げ臭いような……
「って、あっつぅ!?」
(え、火がついてる?なんで!?)
慌てて手を引き抜くと、薪は綺麗な橙色に燃え盛っていた。
「自然発火!?いやありえないでしょ……」
原因は不明だが、火が起きた以上とりあえず作るしかない。これは幸運だったと言い聞かせよう。
気を取りなして、調理工程に移った。
§
「待たせたな!料理が出来たぞ!!」
「もう出来たのですか?」
「結構早かったですね」
「では、こちらをどーぞ?」
期待している博士と助手の目の前に、三角や丸など様々な形をしたお米の塊を並べる。
「……え、これだけですか?」
「うん」
「なんですか、これは」
「おにぎりだ」
「バカにしてるのですか!?こんな米塊を……」
「文句言わずに食ってみろ、美味しいから!」
我儘が絶えず出てくる博士の口におにぎりをねじ込んでみる。すると、どうでしょう?
「こ、これは…!?」
「どうだ…?」
「美味しいのです!!」
一度味わえば大人しく食べ始めるではありませんか。
これには博士もニッコリ笑顔。
でも満足するにはまだ早いぞ?
「博士、こっちも食べてみて下さい」
「なっ、中からカレーが!?」
握るだけってのも味気ないからね。
ちゃんと
「どーだ!これが俺の料理スキル!!納得してくれたよな?」
「ええ、もちろんなのです!」
「試練は合格なのです!」
試練合格ヨシ!!
§
無事にここで住み込む許可を貰えたところで、初夜を迎えた。
合格を貰ってすぐにかばんってヒトのことを聞いてみたけど、もうここから出発してしまったみたいだ。
一応、他のちほーに行っただけだから戻ってくる可能性はあるみたいだけど。
とにかく、しばらくはここでお世話になるだろう。
(それにしても、あの火はなんだったんだろ)
摩擦熱にしては違和感があり過ぎる。
それに、どちらかといえば俺の手から噴き出したような……
「ま、難しいことはいいか」
とりあえず今のところは。
明日に備えて寝ることにしようか。
そのまま眠りについて一夜を明かした。
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