第6話 のりもの

「それでは、そろそろ行きます。ありがとうございました~」


「ああ、気をつけるんだよ」


 タイリクさんに見送られ、俺達は次の目的地に出向こうとしていた。


 その為には、まずやることがある。


「オーケーラッキービースト、図書館までの道を教えて」


「分カッタ、ナビヲ開始スルヨ」


「ついでに時間も教えてくれるかな?」


「丸三日ダネ」


「うん?時間教えて」


「丸三日ダネ」


「うん?時間教えて」


「丸三日ダネ」


 そっかー、丸三日掛かるのか……


 いや無理だろ。

 普通の島国ならまだしも、セルリアンとかいう怪物が生息してる所で歩いてられるか。襲われて死んでしまうわ。


 乗り物さえあれば話は違うんだろうなぁ。

 ま、こんな島には存在しないだろ(失礼)


「検索中… 検索中…」


「ん、どうした?何か捜し物?」


「近クニ乗リ物ガ無イカ調ベテルンダ」


 言わなくても調べてくれるだなんて…… ガイドの鏡じゃねぇか!ガイドとしては優秀だな!!ガイドしては。


 でも流石にないと思うんだよね。だってほぼ無人の動物園だぜ?(失礼)


「アッタヨ」


「あるんだ」


 ごめんなさい。


「着イテキテネ」


 そのままラッキービーストに着いて行って、歩くこと数分。

 シャッターが降りた小屋に着いた。


 小屋はとてもボロボロで、長年使われていないことが分かる。


「開ケテミテ」


「うん。よいしょっと…… ンググググググ」


(…開かない)


 ボロいから簡単に開くと思っていたんだけど、思ったより頑丈みたいだ。

 何か抜け道はないだろうか?いやここは強行突破STR対抗だ!!


「鍵ガカカッテルネ、チョット待ッテテ」


 なるほど、鍵が掛かっていたみたい。

 でも大丈夫!俺が今からこじ開けてやる!!


「チョット待ッテネ」(半ギレ)


「あっ、はい」


 怒られてしまった。

 この場を制したラッキービーストは、小屋に隣接した部屋の中にある机の引き出しを漁ると、器用にも耳を使って鍵を取り出した。


 そう、耳を使って。


 そんな光景を見た俺は0or1のSAN値チェックです。


「アッタヨ、使ッテミテ」


「う、うん」


 鍵を受け取ってシャッターの鍵穴へ。

 錆びたり蔦張ったりしていたけれど、ちゃんと機能するようでカシャっと音を立てた。


 これでシャッターは開くはず。

 これでもダメだったら今度こそ強行突破STR対抗だ。


「よいしょっと……!」


 キィィィガラガラガラ!

 軋むような音を立てながらもシャッターは開いた。その奥には───




「……バイク?」


「ウン、職員用ノバイクダヨ。『ジャパリチェイサー』ト呼ブンダ』


 何だその独特な名前。


 シャッターの奥に隠されていたのは、特撮ヒーロー物でよく見るようなバイクだった。

 色は黄色と斑点模様の茶色で、ネコバス仕様となっている。


「これ、ちゃんと動くの?」


「調ベテミルネ」


 ピロピロと音を立てながらバイクと向き合い始める。

 それだけで分かるんだね。かがくのちからってすげー!


「異常無シ、燃料満タン…… 動クヨ」


 それは良かった。

 でも一つ良くないことがあって。



「俺、免許持ってないんだけど」



 ……まぁ、いいか!(良くない)


 きっとこれがあれば、三日も掛けずに図書館に行ける!


 そうとなれば、早速向かおうじゃないか。


 バイクに跨りエンジンをかける。

 勇ましく駆動音が嘶きを上げ、乗り手の気分をMAXに上げてくれる。


「いいね、これ」


 ラッキービーストをしっかり後ろに乗せて、いざ。

 アクセルを押して走り出した。



 風と一体となり、整備されず凸凹した道を駆け抜けてゆく。





 §




 風に成ったまま、図書館に辿り着く…… そのはずだった。


 結果的に言えば、その願いは叶わなかった。


 だって、急に「のだー!」って道に飛び出してきた何かに逆にはね飛ばされるし。これがまた良いところに貰ったのかさ、意識が朦朧とし始めた。



(…っ!マジでやばいかも)



 何の冗談でもなく、俺は完璧に意識を落としてしまった。




 §




「助手、ヒトが倒れているのです」


「博士、コイツは生きてるんでしょうか?」


「分かりません。でも、仮に生きてたら大チャンスですよ」


「そうですね……」



「「料理が食べられるかもなのです!!」」

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