第1話 おめざめ

「うぅ… うーん?」


 ゆっくりと目蓋を上げた。

 ぼやけて見える空の色はいつの間にか茜色に染まっていて、どうやら気を失っていたみたいだ。


「クシュン!!」


 似つかない可愛らしいくしゃみ。

 少し肌寒さも感じるし、夜は冷えるのだろう。しっかりパーカーを羽織わなくちゃ。


 そんなことよりも、さっきの変なのは?


「ヤァ、目覚メタカイ?」


「わっ!?」


 さっきの生物(?)は隣にいた。


 落ち着いてよく見てみると、喋る度に目は光るし、仕草も声も妙に機械的。もしかするとコイツはロボット…?


「ハジメマシテ、ボクハ『ラッキービースト』ダヨ。ヨロシクネ」


「えっと…… よろしく?」


 このロボットはラッキービーストという名前らしい。

 こいつなら何か色々知っているかもしれない。とりあえず聞いてみよう。


「なぁ、ここは何処なんだ?」


「ココハ、『ジャパリパーク』ダヨ」


「じゃ、ジャパリパーク…?」


 聞き覚えがあるような…… 確か父さんが知っていたんだっけか。何故か詳しいことは教えてくれなかったけど、こう言ってたような。


 "優しさで溢れた、獣人の楽園"


 そうとだけ教えてくれた。


「えっと、ラッキービースト」


「ナニ?」


「ここは… ジャパリパークはどんな場所なの?」


「ココニハ、様々ナ動物ガ人の姿ニナッタ『フレンズ』ガ暮ラシテイルンダ」


 動物がヒトの姿に…?原理はよく分からないけど、ここが動物園みたいな場所なのは分かった。


「と、とりあえずだ!近くに建物があるか探してくれないか?」


「分カッタ、検索中… 検索中…」


 検索?無人島なのにネットに繋がっているんだな。

 何れにせよ、こいつがロボットなのは変わらないらしい。


「検索完了、近クニ『ロッジ』ガアルヨ」


 宿泊施設… ヒトがいるかも!


「よし、そこに行ってみたい。案内とか頼めるかな?」


「ガイド機能ヲ使ウナラ、名前ヲ登録シテネ」


 そういえば、向こうは名乗ってくれたのに俺は教えてなかったな。


 名前。

 ちゃんとあるにはあるんだけど、本名と向き合うとどうしても思い出してしまう。


 あの家のことを……


「君ノ名前ヲ教エテネ」


「ねぇ、ラッキービースト」


「ドウシタノ?」


「とても変なことを聞いてしまうんだけどさ、出来たらでいいんだ、俺に名前を付けてくれないかな?」


 何を血迷ったのか。

 ロボットなんかに変な提案をしてしまった。

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