第7話 父との会話は久しぶり
「だだいま」
結局俺は一人で家まで帰った。いつもクレアと二人で帰っていた家までの道が遠くとても寂しく感じた。
「おう、おかえり」
返事が返ってきたのに驚いた。家に帰るといつもいないはずの父ボルタが迎えてくれた。父は剣の手入れをしているようだった。
「今日は休みなの?」
「あぁ、今日は特にやることもなくてな。ザワード様が休みをくれたんだ。久しぶりに一緒に飯でも食うか」
「うん、いいね。急にどうしたの? めずらしく手入れなんてして」
いつもはほったらかしで無造作に倉庫に置かれている剣を取り出してキレイに磨いていたのだ。昔は騎士団にいたらしいが何か失敗し、退団さらせられたようだ。それを仲間だったザワードさんに拾ってもらったらしい。
「いや、急に休みになったからな。昔の相棒をたまにはキレイにしてやろうと思ってな」
「ふーん、じゃあ俺は今から料理をつくるよ。少し時間かかるから続けてていいよ」
「おう、すまんな」
そう言うと父は手入れを再びはじめた。
父はザワード様に仕えている。髪を七三分けにして、メガネをかけている。細身で身長は、俺よりも少し高いぐらいか。顔は優しさが滲みでるようであり、実際俺は父に怒られた記憶がない。
父は普段は忙しくほとんど家にはいないのだ。母は俺が小さいときに病気で亡くなってしまったらしい。なので俺は独り暮らしのような生活を送っている。洗濯や掃除、料理もお手の物だ。特に料理には自信がある。
父とテーブルを挟んで俺が作った料理を食べる。
「やっぱりお前の料理はうまいな。ザワード様の家で食べる賄いよりも断然うまいぞ。特に後からくるピリッと辛いアクセントがいいな。ご飯がすすむ。将来は料理人になれるかもしれないな」
ふふふ、今日は久しぶりだから腕によりをかけた料理だからな。俺の五大必殺料理の一つだからそりゃうまいだろう。いつかクレアに食わせて誉めてもらう為にあみだした料理の一つだ。ちなみに今日の料理は肉や野菜を煮込み、数々のスパイスを入れてご飯にかけて食べるものだ。
「気に入ってもらえてよかったよ。料理人かぁ。特に将来やりたいことがなかったらいいかもね」
「そういえば、最近学校に通い始めたんだよな。ザワード様が急に息子を推薦してやると言ったときは驚いたぞ。まぁ、お前はザワード様やクレア様に気に入られてるからな」
「ザワードさんは良くしてくれてるけど、クレアはどうかな。毎日バカって言われて、暴力ふるわれて大変だよ」
「ふふ、それはそれは。楽しそうだな」
もう食べ終わったのか口を拭きながら笑っている。
「どこがだよ。今日だって一緒に選ばれたアイスライト杯予選の選手と話してただけでブチギレだよ。俺はクレア一筋だってのに」
「ははは、そういうのは言わないと分からんものさ。それに言えるときに言っておかないと後悔することもあるしな」
父の顔は真剣だった。
「でも簡単に言えたら苦労しないよ…」
「まっそれもそうだな。おっ食べ終わったか。片付けは俺がやろう」
「ほんとに? ありがとう」
父はテーブルの食器を重ねて流しに持っていき、洗いはじめた。
「そういえば、さっきアイスライト杯の予選の選手に選ばれたって言ってたな」
「そうだよー。まぐれだよ、まぐれ」
「いやあれはまぐれで選ばれるほど甘くないぞ。教師達も優秀だしな。ところで何位だったんだ? 15位くらいか?」
食器をカチャカチャ洗いながら話を続ける。父さん学校のこと詳しいんだな。
「それが1位だったんだよ。ほんと参るよ。おかげで強い奴には目をつけられるし」
1位と言った瞬間、食器を洗う音が一瞬止まった気がしたが再び勢いよく水道を流して洗い出した。
「こ……まで……か……き………だな。や……急がないとな」
水道の音で何を言ってるのか聞き取れなかった。
「え? なんかいった?」
俺が大声で聞きなおした。
「いや大丈夫だ」
なんだったんだろ。食器を洗い終わり、こちらへ向かってくる。
「明日は朝からアイスライト杯の予選だったよな。がんばれよ」
「うん、たぶん帰りは夜になるよ」
「そうか。俺も明日は忙しい。今日はお互いゆっくり休むとしよう。ではおやすみ、レイン」
「うん、おやすみ。父さん」
あっ、そういえば明日はクレア一緒に学校行ってくれるのかな。待ち合わせの場所に来なかったらどうしよう。
明日の戦いよりもクレアと一緒に学校に行けるのかが気になり、なかなか寝つけなかった。
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