第3話 倶楽部結成

付き合っていた女と別れたが、淋しさよりも、さっぱりとした爽快感の方が上回っていた。しかし、本能的なものだと思うが、相も変わらず、目で女を追いかけ、ムラムラすれば、自分で処理をし、昔の彼女へ連絡してみたりと、決して脳裏から女の影が消えるなんて事はなかった。そんなオレも40歳を超えてから、分かってきた事実がある。風俗店で遊んで比較すると、顕著になるのだが、コミュニケーションの質によってセックスは、濃密さが変化するのだ。一般人と出会い、いや、出会うまでに幾多のストーリーを経て、コミュニケーションをとっていくなかで、親密さや、安心感といったモノがベースとなり、瞬間的にでも愛情を込めて行為に及び、かつ女性側もオーガズムに達するのが、自分の中ではベストなセックスだと考えている。

そんな40歳を超えた、オッサンの話を、親身に聞いてくれる人間なんてそうはいないが、オレはみつけた。     

 それは、同じ40歳前後のオッサン達だ。環境は違えど、世代、境遇、性別が同じであれば、もうただ、それだけで同志ではないか!。

 きっかけは腕時計だった… とあるSNSの腕時計コミュニティに入会してから、その事実を発見したのだった。

 最初に購入した高級機械式腕時計は、ロレックスのサブマリーナだった。通称青サブと呼ばれるモデルで、ベゼルや、ブレスの一部がゴールドで作られていた。自分には、少し背伸びして買い求めた時計だった。しかし、その時計コミュニティで知ったのだが、とてつもなく世の中は広かった。まだまだ普通の人間には知られていない、スイスメイドのマニファクチュールを纏うフリークの存在をオレは知ってしまったのだった。

 流石に、ウン千万円もする方々と話が合うわけもなく、似たようなレベルの時計と知識、そして、ウマが合う一部のメンバーとだけ、新たにコミュニティを立ち上げる運びとなった。共通していたのは、40歳前後だという事、時計好き、そして、女好き、あとは個人の人柄の良さと、それぞれのポリシーを大事にしているところだった。こうして、出会うべくして、出会ったオッサン5人で、『星屑倶楽部』というコミュニティが結成された。もちろん、女性秘書も、美人受付嬢も存在していない。存在しているのは、あくまでも、少し疲れていて、少し汚らしいオッサン達5人だ。

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