第059話 黒化制御
現代のこの世界において『
それを成立させている『聖教会』の秘匿最強戦力、数百年の過去に最初の『
彼らの平均レベルは驚異の1,500
『魔導剣士』、『竜騎士』、『侍』、『忍者』、『召喚士』、『青魔導士』の6
――とはいえ全員上位
それぞれがきっちり有効な
男女比も3:3であり、いいパーティーだと言えるだろう。
これならよほど理不尽な能力を持った
なによりもその突出したレベルと、それに裏打ちされた各種ステータス、魔法や武技、取得した
地上や
だが彼らが自分の意志で
つまりいまだ一人目の『
自在に
今の
「強くなる」という効率で考えれば、常に
それをできていないということは、少なくとも『聖教会』側に現在『
いるのであれば、補助職の育成を放置しているはずがない。
まあそれが今のこの世界に俺以外はいないという保証にはならない、ということは気をつけておかねばなるまいが。
ともかく少なくとも『
数百年をかけて育て上げた各々の
であれば怖くはない。
なんとでもできる。
それを確認できただけでも、ある程度の危険を覚悟してでも
どの道今俺が考えていることを実行しようと思えば避けては通れない道でもあるし、その結果が今のところ俺の想定内に収まっていることは僥倖だと言うべきだろう。
とはいえ躊躇なく放たれた彼らそれぞれの最大技――武技であれば『絶技』、魔法であれば『禁呪』――は絶賛俺へと殺到中である。
さすがにこの世界においてそうなった場合、どうなるのかの検証はできてはいない。
試した結果「一度死んだらはいお終い」の可能性もあるし、うっかりゲーム・オーバーになることは避けねばなるまい。
『
ちなみに発動すれば刹那に着弾するはずの『絶技』と『禁呪』の飽和攻撃に晒されながらも、俺がのほほんとこんなことを考えていられるのは、戦闘状況における『
だがいくら着弾までの時間を無限に切り刻んで思考を重ねても、躱す手段も耐える手段も生えてくるわけではない。
それとても『時間停止』を発動すればなんのこともなく凌げはするのだが。
この世界における力の在り方すらあっさり覆すのが俺の
彼らが理解できないとして諦めている『力』を、彼らが取るに足らないと見下していた『力』を以って制御して見せたのだという事実を叩きつけることが必要だ。
――クロ。
――ニャッ!
俺の思考に即座に反応し、足元に佇んでいたクロが短い鳴き声と共に、己が管制管理している俺の
俺の頭上に魔力を以て浮かぶ、大型魔物の巨躯と並ぶほど巨大な機械の塊。
各機能に応じて接続された『魔石』の数は万を遥かに超え、自重を支えて浮かぶだけでもかなりの魔力を消費するシロモノである。
――まだここまでしか
これでも随分コンパクトになったのだ。
試作初号機の頃なんて、
それでもまだ、先日広場を騒がせた
作動実験の時とは違って、今この場には俺とクロしかいないから少々不安だが、あれだけみんなで何度も確認したのでまあ問題ないだろう。
現実時間ではすべてが一瞬で完了するその機械が行う全工程を、『
接続されたすべての『魔石』が爆縮消滅し、最高効率で膨大量の魔力へと変換される。
それを以って全機能を超過駆動開始。
その機能によって周囲へ迸っている通常の魔力
これだけのカラクリと膨大な『魔石』を使用して起こすことは、たった一つの現象に過ぎない。
だがそれだけのことを実現するまでに費やされた魔力と才能と時間はとんでもない規模と長さに渡っている。
まさに悠久の時を越えて、やっと完成した「神の模倣」こそが、この
今回の超過駆動たった一回に費やされた『魔石』だけでも、今の俺ですら集めるのに何度かの『時間停止』を必要とするほどの量。
だがそれを以ってこのデカブツが己が機能を果たした結果、俺の身に起こる現象。
それはリィンと同じく、肌が黒く染まる『黒化』である。
ただしこれは俺の意思によって制御され、リィンが自己犠牲――暴走させることによって初めて可能とする能力をすべて自在に操ることができる。
つまり――
『
それでも自分たちの勝利を疑うことなど無かったはずだ。
いかな『
どれだけデカかろうとも、そんなものは虚仮脅しに過ぎない。
なぜならば自分たちの力に抗することが可能なほどの
だが残念ながら、
なぜならば
暴走した『黒化』状態は、周囲のあらゆる魔力を喰らい尽くす。
本来であればそれが『魔法』であれ『武技』であれ、『
ただし今俺の身に起こっている『黒化モドキ』は、その加減を俺の意のままにできるが。
「そんなバカな……」
だからこそ、彼らにとっては刹那の時が過ぎ去った後、俺が平然とその場に立っていることを可能とする。
『禁呪』であれ、『絶技』であれ、それらはすべて『魔力』を基として成立している。
そして高位の魔法や武技になればなるほど、それらはほぼすべて魔力だけで行使されるのだ。
たとえ物理的な攻撃――例えば剣の振り降ろしや槍の突きを伴っていたとしても、魔力による威力増加を受けていないただの筋力によるそれが、レベルが100を超えた程度であるとはいえ俺のH.Pを抜けるわけもない。
結果、すべての攻撃が雲散霧消したようにしか見えないのだ。
いや自分のH.Pや魔力に影響を与えないように『黒化』を制御するのにものすごく苦労したんだけどな。
俺ではなく、俺に協力してくれた数多の才人たちが、ではあるが。
どうあれ彼らの「必殺技」すべてをその身に受けて、平然と立っている俺を見ればそんな台詞しか出て来ないのも無理はない。
だが驚愕だけではなく、エルフに犠牲を強いてこの数百年を凌いできた彼らだからこそ、今俺がなにをしているのかの予測くらいはつくだろう。
「まさか…………まさか『黒化』を完全に制御しているとでもいうのか!?」
信じたくはないだろうが、その通りである。
元の見た目がいいと、黒くなったらなったで別のカッコよさがあるよな?
そう思わないか、『六芒星』の色男リーダー。
俺も性格が随分悪い、泰然自若に構えていた色男が狼狽しているところを見るのは正直なかなかに胸がすく。
これがやっとできるようになったからこそ、俺は今回リィンに気持ちを伝えたし、貴方方『
眼前の男前だけではなく、残りの5人全員が一斉に動こうとしている。
だが今の俺から見ればそれは、亀の歩み寄りもなおトロくさい。
それでも即座に『転移』によって逃げる判断を下しているのは流石というべきかもしれないが。
ああ、無駄だよ。
こうなったら抵抗は諦めた方がいい。
この機能の効果範囲において、『魔力』を維持できているのは俺とクロだけだ。
つまり今あなた方は『黒化』こそしていないが、『魔力』を持たないただの人に堕している。
「どうだい、数百年ぶりにただの人に戻った気分は?」
こうやって煽りながらも、俺が内心ちょっと安心しているのは内緒である。
最悪魔力を奪い尽くすことによって、プレイヤーの仲間として与えられている恩恵まで失われ、不老すら解けて砂になられたらどうしようと思ってもいたのだ。
御無事でなにより。
ではここからは交渉という名の恫喝に入りましょうか。
先に実力行使を仕掛けてきたのはそっちだから、まさか文句はございますまい。
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