第050話 星墜
攻撃系魔法使い
黒魔導士の奥義となる『禁呪』、その最初のひとつ。
その攻撃対象は術者が「敵」だと認識しているすべてとなり、数的上限は存在しない。
派手な
すでに実験で何度も撃っているから、そこに間違いはない。
さすがに今はもうなれたが。
攻撃力は
格下には一掃手段として使え、格上にはM.Pとの兼ね合いで確実に削れるH.Pを計算できる攻撃手段という、使い方によっては最後まで腐らない便利な魔法と言える。
当然その『固定ダメージ』はかなりのものであり、俺が最初に殲滅した
それが俺の視界に表示されている
その
眼下にヴァルタイ丘陵を一望できる高度。
その位置に今俺は、『
俺がこの位置にいることを捕捉できているのは、今のところそう教えられている冒険者ギルド関係者たちのみであり、中でも『遠見』などの
だが今からは、ヴァルタイ丘陵を注視している者たちすべての目に俺――エメリア王国第三王女、ターニャ・エル・ヒルシュフルト・エメリアが使役する
まあ派手なんだよ、『禁呪ノ壱:
ちなみにエメリア王国に代々伝わる建国王が使役したという
めっちゃ瞳を輝かせたターニャさんが「こういうのはどうでしょう!?」と提案してきたのを、マスター・ハラルドとヤン老師が曰く言い難い表情で俺に丸投げした結果、「い、いいんじゃないでしょうか?」となった末に確定したものだ。
ターニャさん、あっちだったら間違いなく「たまにいるクッソ美人な厨二系オタク」になっていたと思われる。
コスプレも本気でやるタイプの。
というかそういう語彙ってどこで身につけるんだろうな。
もうすでに大部分を理解しているこの世界の歴史とは別に、また今度勉強してみるべきだろう。
まあまずは『大海嘯』を処理することだ。
この世界にとっては僅か5日、俺の体感時間では
俺の
その数、じつに1万とんで879体。
そのすべてを『禁呪ノ壱:
大魔法特有の長めの
だがそれでもかなり長い。
ターニャさんに頼んだら、それっぽい『呪文』を考えてくれそうだが、聞く者もいない今回は詠唱省略ということでいいだろう。
俺も初期のヴァ〇・ディールでは魔法に合わせた詠唱マクロを組んでいた口である、そういう設定を組み上げるのは吝かではないのだ。
ともかく
その後広大なヴァルタイ丘陵全域の地表に浮かび上がった魔方陣から膨大な魔力が吹きあがり、あいにくの曇天に覆われた空へと突き抜ける。
このあたりで振動が発生開始。
これは空から巨大質量が墜ちてきているために起こる、共振のようなものだ。
だがもう遅い。
星はもうそこまで墜ちてきている。
分厚く空を覆った雲が一瞬の螺旋を描いて、初めからそこにはなかったかのように俺の視界の端、地平線の彼方まで消し飛ばされる。
魔法によって天空から墜ち来る星が、そう成さしめたのだ。
え?
いやデカくない?
10,879体の
着弾。
広大な空間に表示されていた万を超える魔物たちのH.P表示が一瞬ですべて消し飛び、着弾した星が巻き起こす爆発が今度は天頂方向へ向かって突き抜ける。
その被害がヴァルタイ丘陵以外へ及ばないのは、最初に展開された魔方陣がそれを防いでいるからだ。
ああなるほど、術者がその効果範囲にいる場合は敵のみを消し飛ばすが、そうじゃない場合はその場も容赦なく消し飛ばすのね……
あとに残ったのは元ヴァルタイ丘陵であった巨大な穴。
それ自体が自然系の迷宮の如く、その底を俺の視力を以てしても確認することはできない。
……ま、まあ『大海嘯』を未然に防ぐことはできた。
地形を変えるのなんて、プレイヤーとしては夢のひとつだし良しとするべきか。
とはいえやはり楽しかったからって、俺の体感時間で一年以上も
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